715話 閑話 狐とガチョウ

 会談を終えたフォブス・ペルサキスは、屋敷に急いで戻ってきた。

 ゼウクシス・ガヴラスと側近たちが待っている会議室に直行する。

 扉を開け放って、全員がいることを確認する。


「ゼウクシス。

出陣前の最終確認をするぞ」


 ゼウクシスは静かにうなずいた。


「準備はすべて整っています」


 机の上には地図が開かれており、野盗の襲撃があった場所に日付と印がつけてあった。

 フォブスは側近たちを、軽く見渡す。


「まず言っておくぞ。

今回の相手は野盗だと思わないことだ。

とても有能な指揮官だと思ってくれ。

一般的な会戦での指揮能力はわからないが……。

神出鬼没の襲撃に関して、これ以上の指揮官を知らない」


 側近たちは一様に驚いた顔をする。

 野盗でなく、指揮官と表現したこともそうだが……。

 

 フォブスは滅多に、他者を高く評価しない。

 その評価基準はフォブス自身だからだ。

 高く評価したのはベルナルド・ガリンドただひとりだ。

 それだけにこの言葉は、とても重たいものだった。

 フォブスはせき払いして、地図上の印を指さす。


「まず襲撃する場所の選定が上手い。

器用に討伐軍を躱して襲撃している。

それだけじゃない。

走り回って疲れた討伐軍を待ち伏せて打ち負かしてすらいる。

僅かな手勢で、倍以上の討伐軍を何度もだ。

それでいて確実に勝てないと見るや……さっさと逃げている。

これほどの指揮官なのに、なぜ無名なのか不思議でならないよ」


 ゼウクシスが同意のうなずきをした。


「くわえて普通の野盗なら、奪った物資を持ち帰ろうとするでしょう。

ところが必要な分だけ持って帰り、それ以外は町に置いていくか焼き払っています。

そして降伏した兵士は決して殺しません。

さすがに手当までしませんが……。

近くの町に降伏した負傷兵の手当を頼む始末です。

野盗と呼ぶには紳士的すぎますね。

まるで騎士のような行儀良さです」


 フォブスは上機嫌でうなずく。

 強敵の話をするときは基本機嫌がいいからだ。


「討伐軍は野盗相手だと思うから、基本士気は高くない。

指揮官が討ち取られたら、さっさと降伏するだろう。

なにせ……」


 フォブスはゼウクシスにうなずく。

 ゼウクシスはメモをテーブルに広げた。

 それは戦った結果が克明に記されている。


「一般の兵士は降伏すれば、武装解除して解放しています。

武器を持ち去りそうなものですが、放置したまま。

魔法による探知を警戒しているかと。

なにより驚いたのが、討ち取る指揮官を選別しています。

兵士たちの人望がないか、横暴で庶民から恨まれている者に限られている。

全員、巨大なウォーハンマーらしきもので頭をかち割られていました。

それ以外なら……。

気絶させ、情報を追えないようにして放りだしています。

あとで町の住人に救助を頼む始末ですよ」


 側近のひとりが思わず唸る。


「これは民衆や兵士を敵に回さないように徹底していますね……。

兵士の士気は下がるでしょう。

真面目に殺し合うだけ死ぬ確率が上がりますから。

命懸けで戦う気も起きない。

民衆も敵視しないとは……。

たしかにペルサキス卿のおっしゃる通り、只者ではありませんね」


 フォブスは上機嫌でうなずく。

 それを見たゼウクシスは、わざとらしくせき払いした。

 フォブスは慌てて真顔に戻る。

 ゼウクシスは全員を見渡す。


「かなりこちらの内情を把握している証拠だと思います。

さらには町を訪れたときも、さっさと用件を済ませて立ち去っている。

揉め事ひとつ起こしていないのです。

普通の軍ですら揉め事なしは……滅多にありません。

完璧に部下を掌握している。

並の指揮官に出来ることではありません。

さらに驚くべきは……敵地に侵攻して、地の利を得ているのです」


 側近のひとりがいぶかしげな顔をする。


「敵が地の利を得ているですと?」


 ゼウクシスは真顔でうなずく。


「ええ。

地形をよく知り、民衆を敵に回さない。

山に潜んで活動しているのです。

これは地の利を得ている、というしかないでしょう。

むしろ我々が民衆の敵になりかかっています。

とんでもない相手ですので、決して侮らないでください。

そして民衆に害を与えては、ペルサキスさまの名声でも抑えきれません。

地の利を失うことに直結します」


 側近たちは一斉に、唾を飲み込む。

 沈黙が部屋を支配する中、側近でも最年少の若者が挙手した。


 フォブスの陣営では、発言は自由に行える。

 戦いが始まれば、当然指示に従う。

 事前の作戦会議上では、むしろ積極的な発言を推奨していた。

 自分の意見を持たない者は、フォブスから信頼されないからだ。


「敵は普段から町に出入りしているのでしょうか?

今もそうなら、足取りは追えると思います」


 フォブスは、小さく首をふった。


「襲撃が始まる前に、あらかた情報を集め終えただろう。

始まってからの出入りは聞いていない。

実に用心深いな。

もしくは余程巧妙に、庶民に溶け込んでいるかだ。

だからこそ今までの討伐は、すべて失敗していた。

野盗の討伐気分で討ち取れる相手じゃない」


 別の側近が嘆息する。


「これは捕捉するのが大変ですね……」


 フォブスは苦笑して、肩をすくめる。


「ここからは読み合いだな。

私が敵の動きを読み切って捕まえるか……。

敵が躱し続けるかだ。

狐とガチョウ鬼ごっこの始まりさ」


 別の側近が首をひねる。


「それだけ情報に精通しているなら……。

ペルサキス卿の出馬で、活動を停止しないでしょうか?

勝てる勝負だけを拾うなら、今回から勝つのは難しいかと」


「その可能性も捨てきれない。

だが私はそうしないと思っている。

ラヴェンナ軍の侵攻の際に、私を主力から切り離すつもりだと思うからだ。

つまり敵は、ラヴェンナの指揮官だと思っているよ」


 全員が息をのむ。

 最年長の側近が、眉をひそめる。


「よろしいのですか?

ラヴェンナと本格的にことを構えて。

今までは、リカイオス卿とラヴェンナの戦いです。

ペルサキス卿は一歩引いた立場にいたかと。

婚約は無効になっていないと聞きました。

だからこそ立場が不明瞭で、今までお呼びがかからなかったわけです。

もしラヴェンナ側が、ペルサキス卿に中立的立場を期待していたとしましょう。

これで完全に、ラヴェンナとの関係が切れるのではありませんか?

つまりリカイオス卿は安心して、ペルサキス卿を粛正する可能性すらあります。

今まで完全に切れていないので、ラヴェンナ側に走らせること恐れていたでしょう」


 フォブスはフンと鼻を鳴らす。


「そんな曖昧な立場を気にして、保身に走るヤツを誰が信じるんだ?

それに国内に手を突っ込んできて、中立を守れなんて馬鹿な話だ。

あの魔王は、そんな馬鹿なことを期待しない。

むしろ中立に固執したら失望するだろうさ。

なにより私の誇りが許さない。

諸君らとて、そんな男に命を預けたくないだろうし……。

実はそんな男に命を預けてきた、と思いたくもないだろう?

それにリカイオス卿だって馬鹿じゃないさ。

ここで私を粛正すれば、国内すべてが敵に回るだろう。

国内の反対派が黙っているのは、私がいるからだぞ」


 発言した側近は、頭を下げた。

 立場上、誰もが思っても言えないことを述べる損な役回りである。

 そもそも発言した本人が、フォブスはそんなことで日和ひよるとは思っていない。


「失礼いたしました」


 フォブスは笑って手をふる。

 側近の真意を理解しているので、機嫌を損ねたわけではないからだ。


「いいさ。

心配なのは理解している。

だが私たちはやるべきことをやるだけだ。

敵の襲撃を抑えないと、兵糧の輸送すら滞る。

ただでさえ臨時増税の噂で、経済活動が冷え込んでいるのだ。

輸送に支障を来せば、本当に臨時徴税に踏み切るだろう。

そうなっては、戦う前にこっちが自滅する。

内乱のお陰で、結構な武器が町や村に流れ込んでいるんだ。

反乱が起こったら、手がつけられないぞ」


 内乱の際に、村や町は自衛のために武器を集めていた。

 本来であれば認められない。

 だが安全を保証できない以上、黙認せざる得ない。

 終結時も武器があふれて、それが町や村に売り飛ばされたのは、公然の秘密である。

 民衆はこれで完全に平和になった、と思っていないからだ。


 そんな武装した町が焼き払われたのは、自国の軍隊に攻められるとは思っていなかっただけのこと。

 ふたつめの町も情報が広まる前だったので、準備すら出来ずにいた。

 それにただの脅しだ、と思っていたのもある。


 今は違う。

 完全に警戒を通り越して、敵視すらしている。

 だからこそ事態の収拾に、フォブスが動くしかなかった。

 フォブス・ペルサキスであればこそ、民衆から敵視されずに済むのだ。


 ゼウクシスが小さなため息をつく。


「物資の輸送を、一度にまとめて出来れば楽なのですがね。

現実問題としてそれは難しいでしょう」


 フォブスは苦笑して、頭をかく。


「そうだな。

まず集める作業が必要になる。

とても手間がかかるだろう。

しかも輸送距離が伸びる。

それだけ大量の馬車を一度に動かすと、道中の飼い葉が不足するな。

だからと飼い葉まで輸送するのはムリだ。

しかもこれから、雨がふってくる。

道は当然泥濘ぬかるむだろう。

そんなとき……ひとつの道に大量の馬車なんて、大事故が発生するのは見え見えだ。

ラヴェンナのように石で舗装されていれば違うがな。

まったくあの魔王は、道の大切さを知っているよ……」


 フォブスは、アルフレードを魔王呼ばわりして嫌がっている。

 嫌っているというよりは苦手にしているのが正しい。

 だがそれは高く評価する裏返しでもある。

 そうでなければフォブスは意識しないからだ。


 ゼウクシスも苦笑して、肩をすくめる。


「嘆いていても仕方ありません。

敵はどこを狙ってくると思いますか?」


「敵さんが私の動きを、どこまで読めるのか……。

そこからだな。

一部の輸送は捨てる。

大事な部分だけを守れる位置に布陣するとしよう。

敵は山に逃げ込む。

逃げられたら我々の騎馬では、絶対に追いつけないぞ。

だだっぴろい平地だけで輸送できれば楽なんだがなぁ。

生憎我々の国は山地だらけだ。

だからこそ仕掛けてきたのだろうさ」


                  ◆◇◆◇◆


 シケリア王国の山中。

 ヤン・ロンデックス一党が、静かに酒盛りをしていた。

 不必要な外部との接触を避けている。

 町に入るときは飲酒厳禁。

 揉め事を起こさないためだ。

 なので酒盛りなども、山中でひっそりとやっていた。

 酒類は町や村で調達している。

 こっそりだが定価で売ってくれるのだ。

 これも民衆を敵にしない強みである。

 いつもは酒盛りの中心にいるヤンは、珍しくぼんやりとそれを眺めている。


 そこにエミール・デレッダがやって来た。


 戦闘では役に立たないが、運用面では唯一無二の存在となっている。

 ヤン一党は、ゲリラ活動中の食事配分などは全員平等を貫いていた。

 それをしっかり実行するのが、エミールの役割だ。

 また医術の心得もあるので、怪我人の応急手当も担当している。


 不足しそうなものなどがあれば、エミールに頼む。

 どう見ても傭兵や野盗に見えない風体で、物腰も柔らか。

 行商人や教会関係者を装って、必要な物品の調達と情報収集も担っていた。

 それが危険であれば、ランゴバルド王国側に支援を要請する。

 元僧職なので、各領の役人と折衝するにはうってつけなのだ。

 粗野な傭兵には忌避感を示す彼らも、元僧職であれば自分たちに近い側と判断するからである。


 かくしてヤンへの支援は、アルフレードの権威とエミールの態度によって滞りなく進む。


 エミールが風邪をひけば、ヤン一党は飯が食えなくなる、と仲間内で言われていた。


「珍しいな。

この前のことを、気に病んでいるのか?」


 この前とは、町が焼き打ちされた件である。

 ヤンはボリボリと頭をかく。

 水浴びなどは滅多に出来ないので、フケが粉雪のように飛び散る。


「いや。

気に病んでねぇよ。

ただ……気の毒だとは思うがな。

ラヴェンナさまだったら絶対に、そんなことさせないだろ?

ただそれは珍しいのかもしれないってな。

こんな考えが異常なのかと思っちまっただけさ。

それに俺たちが暴れなければ、こんなことにはならなかったろう?」


 エミールはヤンの隣に座って、肩を叩く。


「建前では、ヤンの言っていることは正しいさ。

それと冷たいようだが、どんな結果を招くにしてもヤンが引き受けたことだ。

今更迷うなよ」


 ヤンは唾を、地面に吐きかける。


「建前かよ。

俺っちは馬鹿だから、そんなの良くわからねぇ。

それにわかっているさ。

役目はキッチリ果たして帰る。

待ってくれている人がいるからな」


 ヤンがスケベ親父のように相好を崩したので、エミールは苦笑する。


 ヤンの精神安定面においてもエミールは不可欠な存在であった。

 ヤンは底抜けに明るいように見えて、そう振る舞っているだけなのだ。

 情緒不安定になるときがたまにある。

 そんなときは、勝手知ったるエミールがフォローするのであった。


 なのでヤンは内心エミールにとても感謝している。

 だからアルフレードと契約する際も、自分の取り分を下げてでもエミールを自分と同額の報酬にするよう望んだのだ。


 エミールは、小さい頃から危なっかしいヤンが放っておけず、なにかと世話を焼いている。

 だがヤンは自分に依存しているのは危惧していた。

 そう知りつつも、距離を取ることが出来ない。

 自分が捨てられたと思ったとき、ヤンは二度と立ち上がれないほど傷つく、と知っているからだ。


 だが好機が訪れる。

 ゾエと結婚すれば自分の役目は終わるだろうと、一抹の寂しさを感じつつも喜んでいた。

 雛鳥の巣立ちを見守る親鳥の心境である。


「なら大丈夫か。

それでいよいよ、ペルサキス卿が出てくるぞ。

どうするつもりだ?」


 ヤンは鼻をほじろうとして、手を止めた。

 ゾエにたしなめられて以降、その癖を直そうとしている。

 仕方なく耳に小指を突っ込む。


「どうって……。

別にやることはかわらないぜ」


 エミールは苦笑して、肩をすくめた。

 粗野で礼儀知らずのヤンが、鼻をほじらなくなったのは大きな進展だ。

 女の力は偉大なのだなぁと思うエミールであった。


「今までの討伐隊とは、わけが違う。

こっちの動きを読んでくる可能性もあるぞ。

罠もより巧妙になる」


「だろうなぁ。

まあ俺たちが負けない限り、ラヴェンナさまの勝ちだ。

上手いことやるさ。

兵数が互角なら戦ってみたいけどなぁ」


 ヤン一党の作戦は、すべてヤンが決める。

 全員がそれに従うだけだ。

 気分次第で出撃する。

 散歩感覚で襲撃するのだから、相手はたまらない。


 数日後、ヤンは襲撃に出ると皆に宣言する。

 全員が準備を整えはじめた。


 ヤンは、いつも出撃前にやっている儀式に取りかかる。

 ひとりで山の奥に入ってすぐに戻ってきた。


 ところが……いつになく渋い顔で、首をひねっている。

 皆の視線に気がついたヤンは、照れ笑いをして頭をかいた。


「ああ、スマン。

今日は止めだ。

今度にしよう」


 一同が、顔を見合わせた。

 エミールは大きなため息をついた。


「おいおい。

今更になって、なにを言い出すんだ」


 ヤンは耳に小指を突っ込みながら、欠伸をする。


「だってクソが出ないんだ。

戦う前にはクソしておけって、オディロンさんが言っていたろ?

尻の穴が閉まっていてさぁ……。

出そうとしても出ねぇんだ。

そんなときは、なにもしないのがいいのさ。

明日になってクソが出たら出撃するぜ」


 ヤンは元冒険者なので、同じ元冒険者のオディロンに挨拶に行ったことがある。

 以降、それなりに付き合いがあるのだ。


 周囲は目が点になった。すぐに全員が笑いだす。

 結局、その日の襲撃は中止されたのである。


                  ◆◇◆◇◆


 ヤンが襲撃を中止した、丁度その日のこと。

 フォブスは何重にも罠を張っていた。

 敵が襲撃を仕掛けてきたとき、逃げられない態勢をつくったのだ。

 物資は多めに輸送する。

 襲撃には最適の道も選ぶ。

 挨拶代わりに誘いをかけたのだ。


 あまりに露骨だと罠にならない。

 それで警護に300人程度つけている。

 その程度までなら、過去に襲撃を仕掛けてきたことがあるからだ。


 だが何事も起こらずに、輸送は完了した。

 渋い顔のフォブスに、側近のひとりが苦笑する。


 ゼウクシスは後方支援がメインなので、戦場には出てこない。

 ただ本人の武勇は、フォブスに匹敵するほど秀でている。

 指揮官としての才能も申し分ない。

 それでも後方支援に徹するのは、安心して任せられる人材がいないからであった。


「ペルサキス卿が出てきたから、尻尾を巻いて逃げ出したのでしょうかね」


 フォブスはため息交じりに頭をかく。


「だとしたら、私の予想が外れたことになる。

そのほうが幸せなのかもしれないな。

だが……。

今結論を出すのは止めよう」


 フォブスの渋い顔は、翌日にはもっと渋くなる。

 別の輸送が襲撃されたとの知らせが入ったからだ。

 敢えて見捨てたルートを狙われた。


 被害の少なさから考えると、安堵あんどすべきことだが……。

 心理的な衝撃は、とても大きかった。


 高名なペルサキスが出馬しても、襲撃は止めない。

 そんなメッセージとして受け取れたからだ。


 フォブスの側近たちは、顔が青くなる。

 こと戦争で、フォブスは出し抜かれた経験がなかったのだ。


 フォブスは内心、敵を侮っていたのかと自問自答していた。

 側近たちは恐る恐る、フォブスの様子を窺っているが……。

 突然、フォブスは楽しそうに笑いだしたのだ。


 この狐とガチョウ鬼ごっこは楽しいことになりそうだ。

 ひとりフォブスは、高揚感を抑えきれずにいた。


 狐とガチョウ鬼ごっこの対戦相手と認識されたヤンと言えば……。

 食糧を燃やして、さっさと山に引き上げ済みだ。


 皆と、静かに酒盛りをしている。

 無意識に鼻をほじろうとしたが……。

 慌てて耳に小指を突っ込んで、鼻歌を歌う。


 かくしてイケメンコンビと凸凹デコボココンビの戦いは始まった。

 かたや上品でイケメン。

 理論と直感を併せ持つ。

 そして騎兵を使った速さに優れる。


 もう片方は下品で醜男と並の下。

 直感にオールイン。

 馬などいないが、山に隠れており神出鬼没。


 見た目は違うが、コンビの内容は似通っていた。

 そして部下の掌握は甲乙付け難い。


 最も大きな違いは、主君の器量だと思っているのは共通していた。

 これは知名度以上に大きな差なのだ。

 客観的に劣勢なフォブスは、この状況が楽しくてたまらないのである。

 かたや優勢なヤンは、悪戯小僧のように次はなにをしようか悪巧みに余念がない。


 ふたつのコンビが、最も似通っているのは補佐役の心労であった。

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