701話 評論と相談

 定期的に、ミルたちの先生に会うことにしている。

 今のところふたりだ。

 ダンスの師範イポリート・ウードン。

 儀礼の師範ソフィア・スカッリャ・ペザレジ。


 定期的に会っているのは、教育状況の確認が建前。

 本音は要望などを直接聞くためだ。

 言いにくいこともあるだろう。

 俺が直接出向けば、話もしやすいだろう。


 今回の集合場所は、ソフィアの屋敷だ。

 イポリートの屋敷は、優雅に装飾されていた。

 ソフィアの屋敷は、質素ながら細やかな気遣いに満ちている。


 俺が入室したとき、イポリートがソフィアと談笑していた。

 ふたりは立ち上がって一礼したので、こちらも礼を返す。


 お互いの挨拶が終わると、現状の確認と問題の聞き取りを行う。

 ダンスの基礎はほぼマスターしたらしい。

 応用編に入りつつあるので、俺を呼ぶかもしれないと言われた。

 礼儀に関しては、全員素直に聞いており、順調らしい。

 ふたりとも俺に報告すべき問題はないようだ。


 ただイポリートの表情が、わずかに優れない。


「イポリート師範。

なにか心配事でも?」


 イポリートは、小さく苦笑する。


「さすがラヴェンナ卿ねぇ。

わずかな表情の変化も見逃さないなんて。

役者にでもなれば良かったかしらね。

心配事はアタクシの、個人的なしがらみみたいなものよ。

だから気にしないで頂戴」


 個人的なしがらみか。

 アラン王国から救いを求める声が、イポリートに殺到しているのかな。

 ラヴェンナで保護してくれといったところだ。

 時期的にそれ以外ないだろう。

 それを断るのも大変だな。

 相手は必死にすがってくるからな。


 ラヴェンナの利益になる人物なら推薦するだろうが……。

 それがないとなれば、ろくな人物がいないのだろう。

 もしくは優秀でも、自分の常識を押しつけてくるタイプか。


 俺がそれを聞いてしまうと言わざる得ない。

 それが外に漏れれば、俺が受け入れに前向きだ、と誤解させてしまうな。

 勝手に来るヤツも現れるし、イポリートへのお手紙攻撃が激しくなる。


 聞かないのが、イポリートのためか。


「わかりました。

なにかあれば、遠慮なく言ってください。

イポリート師範の見識は、信頼に足ると思っていますからね」


 イポリートはしなを作ってウインクした。

 俺の意図が通じたらしい。


「あら、嬉しいわね。

そのときがあれば相談させてもらうわ。

それはそうと……。

アラン王国の惨状はアタクシにも届くのよ。

既存の芸術品の破壊が進んでいるようね。

文化的価値があるものは、盗んで売り飛ばすのが流行らしいわ」


 いやな流行だ。

 国としての体をなしていない。

 つまり……やったもの勝ちになる。

 そして益々治安が悪くなるだろう。


 自分以外を否定する世界人民共和国だからな。

 文化の破壊は、過去の否定の要素が大きい。

 後戻りできないと自覚させる意味もある。

 壊しているヤツは、組織への忠誠を示しているだろう。

 人のものを壊すだけで出世なんて楽だからな。


 それより盗んで金にしたがる者が増えるのは当然か。

 壊すくらいなら金にしたい、と考えるのは自然な流れだ。


「アラン王国のすべてを否定する人たちが、王都に居座っていますからね。

壊す対象が多すぎて、目が行き届かないでしょう」


 ソフィアは扇で口元を隠す。

 皮肉な笑みが浮かんでいそうだ。


「文化財を破却してもいいことなどないのですけどね。

儀礼も形はありませんが、ひとつの文化です。

それを捨てて、どうする気なのかわかりませんね」


 礼儀とは社会の潤滑油だからな。

 そして自分たちの常識が通じるかのバロメーターになる。

 トマたちは、確実にそれを破壊しにかかるだろう。


「新しいことをしようとするからこそですね。

過去につながるものは、すべて邪魔なのでしょう」


 ソフィアは意外そうに目を細めた。


「ラヴェンナ卿はしませんでしたよね?」


 俺は、過去との断絶をする気はない。

 多民族だからこそ、過去との連続は必要だと思っている。


「あくまで過去の積み重ねの上に立たないと、ラヴェンナの成立は困難ですからね。

大人に過去をすべて捨てさせる……なんて現実的ではありません。

今までのことは役に立たない、と言われて順応できますか?」


 イポリートは皮肉な笑みを浮かべる。


「それはそうね。

老人はお荷物になるってことよねぇ。

下手をすれば見捨てられるわね。

大人にしてもそう。

残された時間は少ないのに、子供と同じラインに立たされるのよねぇ。

誇れるのが年齢だけって、本人も納得できないわ。

より意固地になりそうね。

若い子なら、やり直して積み重ねる時間が長いから……。

受け入れられるかもしれないわね」


 やはりイポリートは明敏だ。

 本質を把握している。

 歴史の断絶は、多くの人から自信を奪う。

 今までの人生はムダだったと言われて、新しくやり直せる人なんて滅多にいない。

 人生経験がその人の自信を支えている。

 最初からはじめようとしても、子供と同じスタートラインで学べるのか?

 子供は自然と大人に質問を投げるだろう。

 それに、回答か出来ないとしたら?


 世界主義が、これを知らずにやっているとは思えない。

 つまり邪魔な大人は片っ端から消してしまうつもりだな。

 純粋に革命を盲信して順応できない人を殺すだろう。

 それをトマにやらせて、最後に切り捨てるのが無難なところか。


「それをムリにでも実現させたいなら……。

あそこでやっているような恐怖政治でないとムリでしょうね。

そんな社会だと、確実にすさみますけどね。

それも想定しているのでしょう」


 イポリートは意外そうな顔をする。


「あら? ラヴェンナ卿は、あの連中のこと評価しているの?

ちょっと意外だわ。

新しいことをはじめるのにやった方法が、あまりに違うもの。

ダメなやり方だと思っていないの?」


 否定的な言葉を期待していたか。


「新しい統治形態が、外部と関わるときに二通りありますね。

周囲を攻撃せずに、理解を求める方法。

これは私がやった方法。

彼らがやったのは、残りの方法。

敵を作って攻撃し続けること。

もしアラン王国で、私が同じことをしようとしたら失敗します。

だから攻撃し続けるしか方法がないと思っていますよ」


「そうなの?

結構上手く立ち回ると思うけど」


 どうも俺は、皆から買いかぶられているな。

 敵と戦うときは、それを有効に使っている。

 過大評価も甘んじて受け入れるしかないか。


「条件が違いますから。

ラヴェンナは辺境で、地続きの領地はない。

だから遠くの変化として受け入れられます」


「ああ。

言われてみればそうね。

隣の家に変人が住み着いたら、不安になるものね。

住み着いたのが、離れた島なら……そこまで不安にならないわねぇ」


 変人であることは否定しないがね。


「国をひとつの家として考えましょう。

違う慣習の人が広間に現れて、自分のルールを主張するようなものです。

そして一切の妥協を拒否します。

これで成功したければ、戦って認めさせるしかないでしょう。

ラヴェンナが成功しているのは、誰も使っていない物置に住み着いたようなものですから。

他とは違うが押しつけないし、協力もすると言えば放置してもいいか、となるでしょう」


 ソフィアはお茶を飲みながら、俺の話を聞いている。

 小さく笑って、カップをテーブルに置いた。

 

「その変わった人は腕っ節も強くて、泥棒が入ってきたとき率先して撃退してくれましたね。

それどころか家に入るときは、その家のルールに従っていますから。

文句はなかなか言えないですね。

しかも大家の許可はもらっているのですから。

その立場から戦って自分のルールを押し通す人は、どうお考えなのですか?」


 内心でアレはないと思っている。

 口にするかどうかは別問題だ。

 俺個人の影響度を考えるとな。

 用いる言葉の選択を、間違えるわけにはいかない。


「好き嫌いで言えば嫌いです。

他所の統治を、良し悪しでは判断しないことにしていますよ」


 イポリートは不思議そうに、首を傾げた。


「政治って良し悪しじゃないのかしら?

芸術はつきつめると、好き嫌いで終わっちゃうけどね」


 自分の打ち込んでいる踊りを、好き嫌いと表現できるところまでたどり着いたか。

 それだけ自信があるのだろうな。

 政治についての判断も的確だ。

 だが俺の立場上、そう簡単に良し悪しを口に出来ない。


「統治される側の評価なら、良し悪しでいいです。

他所の統治を、私が軽々に評論して口にするのは好ましくありません。

あまりに特殊すぎる統治方法ですからね。

似た統治なら、評論のハードルはぐっと下がりますけど」


 イポリートは首をひねる。

 俺の言葉の真意をつかみかねたか。

 話が飛びすぎたようだ。


「評論を口にしないの?

つまり……あの連中とも、折り合いをつけるってことかしらね?」


 もうちょっとかみ砕いて説明する必要があるな。

 だいたいのことは、省略しても通じる。

 だが俺たちは、別の人格だ。

 立場も違うからな。


「状況次第ではそうなります。

余程のことがなければ、そうならないでしょうが。

彼らを評論してもいいのですが……。

では他の領地はどうなのかってことです。

他所の統治を気軽に評論するようになると危険なのですよ。

それこそ傲慢ごうまんな態度になっても困ります。

不要な摩擦を生みかねません。

腰の低い評論家なんていないでしょう?」


 イポリートは声をあげて笑いだした。


「評論ばかりするヤツは……だいたいろくなのがいないわ。

一度はじめると、どんどん対象を広げていくわねぇ。

そうすると変な取り巻きが出来て、どんどん独善的になっていたわ。

その点は政治の世界でも一緒ってことね」


 アラン王国は芸術の国だ。

 評論も活発だろう。

 それがないと芸術は成り立たない。

 評論が純粋な芸術的見地からされたものならば、聞くべき点はある。

 だがそうではないだろうな。


 実行者より評論家が偉い社会。

 その評論も、貸し借りや相手への好き嫌いで変化する。

 因縁やコネなどが、複雑に絡み合う。

 明確な基準がないから、そのような恣意しい的な運用になるのだろう。


 イポリートは評論家が嫌いなようだ。

 アラン王国をでたのは、そのあたりも大きいだろうな。

 俺とウマが合うのは、評論家が嫌いという点の一致が大きいと思っている。


「ええ。

評論はわかりやすく、インパクトのある表現になりがちです。

そこに至る経緯も考慮しないでしょう。

舌鋒ぜっぽう鋭くと言えば、聞こえはいいですが……。

ただ激しい言葉で欠点ばかりをあげつらう人が、権威をもってしまいます。

なにせ評論の大多数は、ストレス発散の道具ですからね。

改善につながる評論は、希だと思いますよ。

それが統治階級に広がっては危険なのです。

感情に流されて誤った選択をせざる得なくなりますからね」


 ソフィアが、楽しそうにほほ笑む。

 ソフィアにも伝わったようだ。


「たしかにラヴェンナ卿が評論をはじめたら、皆さんがそれに倣いますね。

評論が流行ると、足を引っ張る者たちが増えるでしょう。

それを防止するためというわけですか」


 トップの態度は、すぐに下に伝わってしまうからな。

 

「ええ。

評論は必要ですが、過度にあってはいけません。

香辛料のようなものですからね。

大量に香辛料ばかり使う料理は、香辛料の味しかしませんよ。

そして素材の味がわからなくなります」


 ソフィアは意味ありげに笑った。


「どんなに新鮮で美味しい食材でも、香辛料を使いすぎたらわからないですね。

逆に腐りかかった素材でも食べられるわけですか。

その後でお腹を壊すでしょうけど。

そして刺激の強い香辛料が好まれると。

味覚音痴と聞きましたけど、料理の知識はおもちなのですね」


 余計なお世話だよ。

 この例えは失敗だったか……。


「否定はしません。

評論が流行すると、かなり危険なことになります。

事なかれ主義で失点しないことが、最優先になりますからね。

状況次第で、リスクを伴う判断を迫られることがあります。

その足をムダに引っ張ることになりますよ。

結果として、火事になってからしか火を消せなくなります。

評論家の評論家たるゆえんですが……。

そんな人は過去の記憶を都合よく失って、なぜ防火対策を十分にしなかったのか、というでしょうね」


「ラヴェンナ卿は評論家がお嫌いなようですね。

それだと評論が出来ない空気になりませんか?」


 俺は苦笑して肩をすくめる。


「評論は人間社会では必ず現れるものです。

感情の産物ですから。

陰に隠れるか表にでるかです。

評論するのは構いません。

無条件に平伏しないだけのことです。

評論のための評論を聞くのは、時間のムダですから。

ですが根拠のある評論なら歓迎しますよ」


                   ◆◇◆◇◆


 執務室に戻って決裁をするが……。

 予想外の来客が現れた。


 はじめてだろう。

 執務室に自由に出入りしていいマノラがやってきた。

 なにか相談したいことがあるような顔だ。

 今まで遠慮してこなかったのだろう。

 マノラ本人にとって、それだけ重たい話だろうな。


「応接室で話しましょうか」


 マノラは驚いた顔になる。


「ええっ! いいの?」


 やはり、皆の前では話しにくいか。

 個人的な相談を、大勢の前でするのは難しいだろう。


「ええ。

話しやすいほうがいいでしょう」


 ミルに目で合図をして、後を任せる。

 マノラを連れて応接室に移動した。

 お茶を出してくれた補佐官が退出すると、ふたりきりになる。


「わざわざ来てくれたんです。

なにか私に相談したいことがあるのですか?」


 マノラがティーカップをもちながら、下を向いている。


「う、うん……」


 なかなか話しださないが、かすべきではない。

 きっと頭の中で、一生懸命言いたいことをまとめているのだろう。


「思ったことを、そのまま教えてくれればいいですよ」


 ようやく話はじめてくれた。

 俺は話を切らずに相槌をうつだけだ。


 思っていることを、すべて言葉にすることが大事だろう。

 相談された問題の解決も大事だが、マノラ本人が納得しないと意味がない。

 ここで俺は先が見えているからと、結論を急ぐのはダメだ。

 話を切って結論を出しては傷つくだろう。


 大人びているが子供だ。

 父親がいなくて甘えることは少ない、と聞いている。

 俺が父親代わり、といえばおこがましい。

 それでも少しは肩代わりが出来ればいい、と思っている。


 話が飛ぶことも多いが、本人の思うままにさせた。


 どうやら卒業が近いので、卒業後の学校が心配らしい。

 今、自分がいるから平気だけど、いなくなったら問題が起こるのではないかと。

 ボスみたいな存在だったからなぁ。

 誰かに自分の役目を任せたほうがいいのか。

 でもそれだと迷惑にならないかと。

 そこで悩んでいるようだ。

 俺が色々頼んだから張り切ってしまったか。

 

 ようやく話を終えて、マノラは一息ついたようだ。

 もう俺が話しても大丈夫だろう。

 ちょっと心配そうな顔をしているな。


 俺が忙しいのは知っているだろう。

 それに時間を取らせてしまった、と心配なのかもしれない。

 まずは安心させてあげよう。


「なるほど。

マノラが、なにを心配しているのか、よくわかりました。

よく話してくれましたね」


 マノラは、少し安心したような……疑うような複雑な顔をしている。


「領主さま、わかってくれたの?」


 ここで間違えると、適当に話を聞いていたと思われる。


「ええ。

後輩たちが心配なのでしょう?

喧嘩になってこじれたりしないかね」


 マノラは、パッと笑顔になる。


「うんうん。

そうなんだよ。

大人たちだとそんなことで衝突しないでしょ。

子供は違うのよ。

色々な子が集まっているから、小さな言い合いとかしょっちゅうよ」


 大人だから衝突しない。

 そんなわけないのだがなぁ。

 大人に幻想を抱いているのかもしれないな。


 思った以上に苦労させていたのかもしれない。

 内心子供大臣にしていたが……。

 多民族だけに大変だったのかもしれない。


「随分マノラには、苦労をかけましたね」


 マノラは突然顔を赤くして、頰を膨らませる。


「べ、別に苦労したわけじゃないよ!」


 子供特有の強がりか。

 それを指摘する必要はない。


「苦労していなくても、私はマノラに感謝していますよ。

それでマノラの話を聞いて、色々思うところがあります。

私の考えを言ってもいいですか?」


 マノラは気持ち身を乗り出してきた。

 最も俺から聞きたかったことだろう。


「うん」


「皆はマノラが頑張るから、頼りにしたと思います。

マノラの心配通り、誰かがマノラの役目を任せられても難しいと思いますよ」


 マノラは大袈裟にため息をつく。


「やっぱりかぁ……」


 なまじ面倒を見切れたからなぁ。

 卒業したら終わりとはいかないのだろう。

 でも自分だから出来た、という自信もあるはずだ。


「そこは任せて見たらどうでしょう。

皆も学校に慣れてきたと思います。

先生方や後輩にも、問題を解決するチャンスをあげてくれませんか?」


 マノラは心配そうな顔でため息をつく。


「大丈夫かなぁ……」


「保証は出来ません。

でも問題が起こったら、自分たちの力で解決する。

それでいいと思いますよ」


「それはわかるんだけどね……」


 もう一つ大事な視点を忘れているな。

 それを指摘してあげるか。


「それにマノラが卒業すると、親衛隊の事務をやりますよね。

学校の問題に関わっている暇はありませんよ」


 マノラは目を丸くした。

 お試しという形でやっているが、正式な職員ではない。

 頼む仕事はジュールがかなり加減している。

 自信をつけてもらうためでもあるのだが……。

 そこは想像できなかったか。


「そんなに大変なの?」


「ええ。

きっと大変だと思いますよ」


 俺が大変だというと、本当にそうだと知っている。

 マノラは目に見えて慌てだした。

 学校卒業後の心配どころではないと思ったようだ。


「どうしよう……」


 性分から完全に、後輩の問題を知らんぷりは出来ないだろう。

 だが自分から首を突っ込むのはお勧めしない。


 確実に、マノラの処理能力を超えるだろう。

 周囲は処理しきれないことに、不満をもつ。

 その結果マノラは頑張っているのにと、不満に思ってしまう。

 誰も幸せにならない。

 善意がもたらす不幸だな。


「基本受け身ですよ。

言い出せずに迷っているなら、話を聞いてあげるべきですね。

相談に乗ってあげるくらいにするのがいいですよ」


「相談かぁ……。

それって解決したらダメなんだよね」


 出来る人にとって、最も困難なのは見守ることだ。

 マノラにとっては難事だろうな。

 だがマノラのためにも、そうするべきだと思う。


「ええ。

解決するのはあくまで本人ですよ」


 マノラはしばし考えて、突然上目遣いになる。


「相談だけ聞くって、経験ないなぁ。

ラヴェンナで最高の相談の達人に、心得を聞こうかなぁ」


 思わず窓の外を眺めてしまう。


「ああ……。

ライサさんですか」


 マノラは、白い目で俺を見ている。


「領主さま……。

現実を見ようよ。

ライサお姉さんは、急上昇中だけど夜だけだし。

領主さまが今のところトップだよ。

だからどうすればいいか教えて」


 なんでこうなった。

 ともあれ話を聞いたのだ。

 俺が意識していることを話そう。


 終わった後で、マノラはスッキリした顔をしていた。

 話を聞いた甲斐はあったな。

 ラヴェンナが立ち上がりのとき、色々頑張ってくれたのだ。

 それにマノラの母に見守ると約束したからな。

 公私混同気味だが……この位はいいだろう。

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