354話 閑話 ニキアス・ユウ・ラリス 喪失編

 意気揚々とドラゴン退治に向かうことにした。

 大まかな場所は聞いている。


 いちいち、馬車で移動は面倒だ。

 そう思うと、過去の知識が浮かび上がる。

 

 前任者たちの編み出した技術の数々が蓄積されているらしい。

 空飛ぶ馬車を創り出す。

 

 馬車は用意されていたので、あとは馬か。

 白馬を用意させて、僕の使い魔にする。

 そうすれば、空を飛ぶトリガーにできる。

 

 そうして、皆で出発。

 御者は僕にしかできない。

 普通なら1ヶ月はかかる行程を、一気に1週間かけずに移動できる。

 ちょっとした旅行気分。


 最近無性に米の飯が食いたくなる。

 戻ってから、拠点作りを始めよう。

 そこで米が収穫できるようにするのだ。

 味噌、醤油、マヨネーズ、色々あるな。

 ちょっとお腹がすく。


 こっちの世界の飯はマズい。

 日本人だった魂が、米とうまい飯を望むのだ。

 この世界の飯は、一切受け入れなくてもよい。

 僕がこの世界の食事に革命を起こしてやろう。

 

 それにオフェリー似のSSRは食いしん坊だったはずだ。


 これでイチコロだろう。

 ツンデレ属性も加わっていたのかもしれない。

 ハーレムのキャラもかぶっていないし完璧だ。


 野営では結界を張る。

 魔物が寄って来ることはない。

 熟睡もできる。

 豪華なテントも無限収納で格納できる。

 

 3人の嫁と一緒に寝るが、新しいシチュエーションで、ついつい張り切ってしまった。

 3人同時ってのも悪くはない。


 そして噂のあった町に到着した。

 町では大げさな歓待をされたが、いつものことなので大して驚かない。

 マリーがもっぱら、ドラゴンの情報を聞いていた。


 どうやら、この近くの山に、ドラゴンの目撃情報があったらしい。

 放置してから、実害が出ても困る。

 山のほうに鉱脈があると噂が出たが、調査もままならない。


 まあ、調査はどうでも良いが。

 ドラゴンには興味がある。

 どんなお宝をため込んでいるのか。


 豚に真珠だ。

 その財宝は、僕の拠点作りに役立てよう。

 拠点だけじゃない。

 目立つ城が欲しい。

 ノイシュヴァンシュタイン城のような奇麗なヤツだ。

 エレベーター、エスカレーターも完備だ。

 前任者にまけない、派手で豪華な拠点が良いな。


 翌日に、ドラゴンがいるとされる山に向けて、索敵魔法を使う。

 いるな、でかい反応が。

 空飛ぶ馬車で、ドラゴンの巣穴に向かう。

 マリーたちは緊張しているが、その必要はない。

 僕は無敵だからな。


「大丈夫、皆には傷一つつけさせないよ」


 3人を引き連れて、奥に向かう。

 だんだん反応が近づいてくる。


 そしてドラゴンを見つめた。

 赤龍か。

 

 突如、体内から声がした。


『人の子らよ、なぜここにきた?』


 愚問だな。

 魔物は退治するモノと決まっている。


「お前がそれを知る必要はない。

だが…冥土の土産に、一つ教えてやる。

男ってのは強い敵と戦いたいモノなのさ」


 そう言って、魔法をお見舞いする。

 勿論超手加減してある。

 簡単にブロックされた。


 そうでないとつまらない。

 僕の攻撃に、マリーたちが続く。

 ヒーラーのマリー。

 物理アタッカーのノエミ。

 魔法アタッカーのアンゼルマ。


 見事な連携だ。

 真の仲間として、お互いの意図は話さなくても伝わる。

 

 適当になぶって楽しんでいたが、そろそろ飽きてきた。

 一通り魔法の確認と、皆の能力アップも把握できた。

 油断した一瞬、ノエミが尻尾の攻撃を食らって吹き飛んだ。

 その瞬間に、頭が沸騰した。


「俺の嫁に、手をだすなぁぁぁぁぁ!」


 フルパワーで、魔法攻撃を放つ。

 瞬時にドラゴンが蒸発して、後ろの山も奇麗に消し飛んでいた。

 ついムキになってしまった。


 ノエミを見ると、マリーが守ってくれたようだ。

 そこまで、大きな怪我でない。

 ほっと、胸をなで下ろす。

 マリーはドラゴンとの戦いで、魔力が減っていた。

 僕が、代わりに、ノエミを治す。


 一瞬効きが遅くて焦ったが、すぐに回復した。


 気がついたノエミが、僕に、頭を下げた。


「ユウさま、申し訳ありません。

足を引っ張ってしまいました」


「いや、そんなことはない。

僕が守り切れなかったからだ。

それに、この勝利は皆の力で勝ち取ったモノだ。

皆が時間を稼いでくれたからこそ、あの一撃が打てたのさ」


 そう、皆の勝利だ。

 とっさに言った言葉だが、とても満足した。

 財宝は勿論、僕が回収して教皇庁に戻る。

 オフェリーが気に入りそうな財宝もあった。

 これでハーレムコンプリートか。

 僕は、とても上機嫌だった。



 だが、教皇庁に戻ると、とんでもないことをオフェリーから切り出された。

 ドラゴン退治をねぎらいもせずに、辺境への赴任の挨拶だけにきたのだ。

 そのあとオフェリーに言われたことは、頭に入ってこなかった。


 ひどい裏切りじゃないか!

 ハーレムに入ることがどれだけ素晴らしいことか知らないのか!?

 マリーの姉だからって調子に乗っているのか?


 そんな時にマリーが代わりに、オフェリーの頰をたたいてくれた。

 やっぱりマリーは、僕の天使だ。


 それでもオフェリーは、その意思を変えることなく出て行った。


 いいさ、そんなヤツSSRでもナーフされるようなキャラだ。

 惜しくも、なんともない。

 当たったら外れ枠。

 運営が儲けるためだけのわなとしてのSSRだ。


 もっと良いSSRを探せば良いんだ。

 いくらでも見つかるはずだ。

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