353話 閑話 ニキアス・ユウ・ラリス 真の仲間編
オフェリーはすぐに観客席からとび降りてきて、騎士団の治療を手伝い始めた。
降りるときに、スカートがめくれても、気にしていないようだ。
そんな下品だと、僕の嫁としてはダメだぞ。
下着を見せて良いのは僕にだけだ。
しかし2メートルの壁を降りて無事なのか?
足首をくじいた様子も無い。
ブーツを履いていたのか。
そのまま慣れた様子で、騎士たちの治療を始めた。
意外と活動的なのか。
SSRキャラにそんな所も似ている。
ますます欲しくなる。
このままだと、僕だけが悪者だ。
広範囲に感覚を広げて、一気に回復魔法を発動。
瞬時に騎士たちの怪我が治る。
オフェリーは既にけが人がいないことを確認して、俺に一礼して無言のまま出て行った。
マリーは僕の隣に寄ってきて、頭を下げた。
「ユウさま、申し訳ありません。
姉がユウさまのお心も気がつかずに…」
不機嫌だけど、マリーに八つ当たりはできない。
「いいよ、まだ…機会はあるからね」
ノエミも僕の所にかけよってきた。
「ユウさま、さすがの実力です。
これでも相当手を抜いていたのですよね?」
そうだな、嫁たちは僕の味方だ。
「ああ、勿論。
死なないように手加減したし、あとで治療するまで考えていたよ」
そんな気も知らずに、オフェリーのヤツは。
ささくれだった僕の心を、癒やしてくれたのは、他に観覧にきていたハーレム予備軍だった。
みんな、口々に僕の強さを褒めてくれる。
それは聞き慣れている。
そんな中…魔族でアルビノの子の言葉は特別にうれしかった。
「治すことまで考えての訓練はご立派です!」
直感した。
この子も、僕の理解者だと。
アンゼルマと名乗った子も、僕のハーレムに入れた。
巨乳ではないけど、貧乳でもない。
たまには薄味も良いモノさ。
そのあと、なんとかオフェリーの好感度を上げようと教会の陳情を聞くことにする。
勿論、オフェリーも立ち会わせる。
マリーが事前に調整して、陳情内容も教わっている。
適切な回答を、嫁3人と相談している。
われながら良い仕事ぶりだ。
陳情の席でのオフェリーは、何の表情も示さない。
ステータスには好感度が見えない。
ひどいクソゲーだ。
でもこの治癒術のスキルは、大したモノだ。
僕の100分の1程度だが、人間の身分でなら相当なモノだ。
そんな陳情で、ちょっとしたトラブルが起こる。
枢機卿2人と、司祭2人の陳情だ。
僕は、鷹揚にうなずく。
「君たちの陳情を聞こうか。
教会の改革に役立てるなら、僕にとっても喜ばしい。
勿論、僕への直言や、改善の提案も大歓迎だ」
いかにも堅物といった小男たち。
たしか陳情内容は、予算の分配だったな。
ところがいきなり、ルール違反をしてきた。
「使徒さまは最近、マリー=アンジュさまの操り人形になっているように見受けられます。
自分をしっかり持ってください。
使徒さまは特別なのです」
目の前が暗くなった。
つい怒りの、余りに立ち上がる。
「僕がただの操り人形だって!?
言い掛かりにも程があるぞ! それは、お前たちの判断か!」
4人の一人が震えながらも、生意気に僕を見返す。
「いえ、そのような声が広がっております…」
「そんな話を、僕にするのは嫉妬で誹謗中傷をしてる、そんなヤツらと同レベルなんだぞ! 僕はそんな話は聞きたくない!」
腰砕けになりながらも、もう一人が僕を見返す。
「そのように嫉妬などで切り捨ててしまうのは、いかがなモノでしょうか…」
「僕に嫉妬するのは当然だからだ! 僕の何が分かるって言うんだ!
僕が自分を持っていないって言いたいのか。
勝手に使徒にしておいて、さらに僕に理想を押しつけるんだな!」
本当に腹が立つ。
そんな僕を見て、マリーが冷たい目で4人を一瞥した。
「ユウさまに対して、失礼なだけでなく、ひどい誹謗中傷ですわ。
ユウさまは突然与えられた使徒という重みと、日々戦っておられるのです。
私たちはそんなユウさまを支えなくてはいけないのです。
非礼を働いた罪は、後日裁かれるでしょう。
下がりなさい」
衛兵に引きずられていった4人を見えて、少し気が晴れた。
爆発したのが、格好悪いので、オフェリーにフォローをしなくては…。
「済まないね、つい頭にきてね。
僕も未熟だから、いろいろと変わっていかないといけないな」
そんな会話にもオフェリーの表情は変化がなかった。
「そうですね」
この一言はショックだった。
ここは、普通は僕をいたわるだろ!
マリーたちならそうしてくれる。
そこまで、好感度が下がったのか!?
ショックでその日から、陳情を受けることは止めた。
困惑するマリーに、僕は力なくほほ笑む。
「良いんだ、どうせ未熟な僕が、大人たちと関わっても迷惑しか掛けない…」
そのあとで、オフェリーがマリーに連れられて謝罪にきた。
でも…どうせ仕方なくだろ。
どうしても憂鬱な気分は晴れなかった。
そんな僕を見かねて、嫁の一人アンゼルマが後ろから抱きついてきた。
マリーとは違って、ストレートで積極的だ。
「ユウさま、気晴らしにドラゴン退治なんてどうですか?
地元の住民が困っているそうです。
誰にも文句のつけられない功績ですよ」
その言葉は、僕の心に光をもたらした。
「そうだね、4人だし…パーティーを組んでいこう!」
その言葉に、3人がうれしそうにうなずいた。
すると表示しているステータスに、変化が現れる。
真の仲間だと?
よく見ると、皆のステータスが大幅に上がっている。
人としてはほぼ最強だろう。
スキルにも付属効果がついている。
使徒の加護?
僕と同じ目的に進むモノの能力を上げるのか。
そして僕の知識を、無意識下に分け与えることができるか。
拠点を作るときに、一人では大変だと思ったが…。
この加護を与えれば良いのか。
僕の視線に、3人が顔を見合わせた。
マリーが首をかしげた。
「ユウさま、何か自分の体の感覚が変なのです」
ノエミが自分の両手を見ている。
「ええ、何時もと感覚が違います」
アンゼルマも、目をつむっている。
「体内を巡る魔力が上がっている気がします」
僕3人にほほ笑みかける。
さっきまでの、暗い気持ちは吹き飛んでいた。
「それは3人が、僕の…真の仲間になったから与えられた加護だよ」
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