352話 閑話 ニキアス・ユウ・ラリス 欲望編

 教皇の交代が発表されても、オフェリーに変化がない。

 もしかして、最初に選ばなかったから、好感度が下がってしまったのか。

 上昇イベントをこなす必要がある。


 こんなときには、マリーに相談する。

 マリーがかわいらしく、眉をひそめる。


「ユウさまが使徒にふさわしいと示すのはどうでしょうか」


「オフェリーを連れて魔物退治かい? 手頃なやつがいるかなぁ」


「騎士団の訓練と称して、大勢の騎士相手に訓練を施しても良いのですよ。

後は度量の広さを見せて安心させる…でしょうか。

それこそ、姉はユウさまにとって、不要だと思い込んでいる可能性もありますから」


「騎士団は確かに弱かったからなぁ。

一度強敵相手に鍛錬するのもアリかな。

度量の広さって、何をアピールすれば良いのだろう」


 マリーは意味ありげにほほ笑んだ。


「ユウさまのハーレムを増やしてはいかがでしょう。

2人目だと姉も、私のお情けだと勘違いしてためらうのかもしれません。

数人ユウさまのご寵愛を受けられれば、安心するのではないでしょうか」


「その…マリーは良いのかい?」


 マリーは、色っぽい仕草で笑った。


「私一人では、ユウさまに飽きられてしまいますわ」


「そんな馬鹿なことはないよ!」


 マリーは悲しそうにうつむいた。

 しまった、傷つけてしまったのか。


「ごめんなさい、ちょっとだけ不安になって…からかってしまいましたの」


 そんなことなら安心だ…。


「そんなことはないさ。

絶対にね。

でも…新しくハーレムに入れるにしても、マリーとうまくやれる人じゃないと…」


「でも、ユウさまの好みが最優先ですわ。

私からその人に合わせるようにします」


 このけなげさには胸が熱くなる。


「ありがとう、でも…。

ハーレム要員を出せなんて、格好悪いよ」


「大丈夫ですわ。

ユウさまの好みに合う方がいましたら、私が対応します。

ユウさまは大きく構えていたください」


「あ…ああ、ありがとう」


 マリーが僕の好みを見分けてくれるのか。

 マリーなら大丈夫だ。

 これだけ、僕のことを優先してくれるんだ。



 翌日に、使徒騎士団の本部に向かう。

 呼びつけても良かったが、マリーに言われたのだ。


「呼びつけた場合、好みの方が漏れるかもしれません。

ここは本部を、御覧になった方が良いと思いますわ」


 確かにそうだ。

 やっぱりマリーは、僕を助けてくれる。


 騎士団には女性も、ちらほらいる。

 見た目もSR止まりだなぁ。

 こうピンとくるものがない。


 無駄足かぁと思って、内心落胆していた。

 そんな都合よくSSRはいないものだ。

 マリーに連れられて、最後に訓練場に向かう。

 それが済んだら、後日の模擬戦の話をしよう。

 オフェリーをゲットするのが優先だからな。

 

 訓練場で、大柄の騎士たちを、巧みに避けて倒している小柄な騎士がいた。

 ステータスをとっさに確認。

 人間にしては…なかなかのものだな。

 しかも女か。


 でも見た目がRだと困るなぁ。

 眺めていると、訓練が終わって、その騎士が兜を脱いだ。

 奇麗な黒髪が舞った。

 SSRキタコレ!

 

 でも、値踏みしたようでいやだ。

 マリーを連れて、打ち合わせに行こう。

 そうすると、マリーが僕の袖をそっとつかんだ。


「どうしたんだい?」


「あの女騎士はどうでしょう。

ユウさまの好みに合うと良いのですが…」


 ええっ! なんで分かったのか…。

 何か恥ずかしくなってしまう。


「ああ、いや別に良いよ…。

何か女捜しをしているようで格好悪い」


 マリーはニッコリほほ笑んだ。


「実は、ユウさまの好みとか思って、ここにご案内したのですわ」


 マジか。

 そこまでお膳立てされると…断るのも悪いな。


「でも、本当に良いのかい? それに、本人もどう思っているのか…」


「使徒さまは複数の女性を幸せにするものですわ。

それに内々に、話はしていますの。

彼女は男嫌いですけど、ユウさまだけは別と言っていましたわ」


 つい口元がゆるんでしまう。


「じゃ、じゃあ、そういうことで…」


 マリーはニッコリほほ笑んだ。


「お名前は本人から伺ってくださいね。

ユウさまはシャイですから、まず名前を聞くことから、会話に入ると良いと思いますの」


 おお…マリーは、僕の天使だ。

 打ち合わせは上の空で、数日後に模擬戦をすると決まった。

 僕の頭の中は、さっきの女騎士のことで占められていた。



 その日の夜に、女騎士ノエミ・メリーニが、僕の部屋を訪ねてきた。

 マリーと違って、言葉使いがお堅いのと基本的に男嫌い。

 でも僕は別。

 なにより、マリーとの夜の生活は、マリーにリードされていることが多い。

 それは悪くはないけど、ノエミはその方面に無知なのだ。

 だから僕が優しくリードしてあげる。

 これも悪くない。

 柔らかいマリーとは違って、引き締まっていて要所は柔らかい体に夢中になった。


 

 その日以降、マリーとノエミが僕の後ろに付き従うようになった。

 ノエミはマリーの意向を尊重している。

 そして、マリーは僕の意思が最優先。

 マリーさまさまだよ。

 これなら数人増えても大丈夫かな。

 オフェリーが変な意地を張らなければ良いけど。



 数日後に、オフェリーを呼んで、騎士団との模擬戦を行うことになった。

 そのほかにも、ハーレム志望者が見学に来ている。

 彼女たちは、安全な観戦席にいる。

 実はちょっと、気になる子がいた。

 魔族だがアルビノ。

 アニメ映えしそうな美少女。

 ハーレムにも多様性がないと、僕が飽きてしまう。



 僕の嫁たちは、後ろに控えている。

 嫁だけの特等席さ。


 格好良いところを見せないとな。

 

 訓練と言っても、1対1では話にならない。

 100人切りで良いな。

 それでも僕の力には、遠く及ばない。

 

 手を抜く側だからね、こっちの安全は確保しないと。

 とはいえ1万人かき集めても、僕には絶対勝てない。

 無双ゲームのように、1000人斬りをやりたかったけど、そこまで騎士を集めると、他の地域の安全が脅かされると断られた。

 仕方ないな。


 

 訓練は3分かからずに終わった。

 殺さない程度に、手を抜いたが戦闘不能にしないと面倒だ。

 それに後で治せば問題ない。


 全てが、スローモーションに見える世界での無双ゲーム。

 BGMが欲しくなるなぁ…。

 そう考える余裕があった。


 突如…頰に一撃かすめた。

 格好良く避けようとして引っ張り過ぎた。


 とっさに頭に血がのぼって、力を入れてその騎士を吹っ飛ばす。

 僕に一撃を入れたご褒美だよ。

 

 そして、あっさりと模擬戦は終わった。

 どうよ…振り向くと皆あっけにとられていた。

 マリーはさっき吹き飛ばした騎士のところに駆け寄って、治癒をしていた。


 ちょっとやり過ぎたか。

 体が変な風に曲がったからなぁ…。

 でも、僕は悪くないぞ。


「あれ、僕…何かまずいことやっちゃった? 訓練だから、手抜きしたらダメだろ?」


 一番肝心のオフェリーが見たことのない、冷たい目で僕を見ていた。

 あれ、会話の選択肢を間違ったのか?

 くそっ…神様に、正解の選択肢を選べる能力か、攻略wikiを見る能力をもらえば良かった…。

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