348話 閑話 ニキアス・ユウ・ラリス 転生編

 くだらない日常。

 現実ではさえない俺。

 でも給料のほとんどを課金している、ソシャゲではランカー。

 好みのSSRキャラをそろえているが、強さ重視ではない。


 「愛だ」


 人権キャラでなくても気に入れば活用して、ランキング上位に入る。

 他のヤツらとは違う。

 トップになれないのは不満だが仕方ない。


 そしてお気に入りの子の新バージョンが実装される日。

 メンテ延長になって、俺は仕事が手につかなかった。


 そんなときに、トラブル対応で忙しくなる。

 出遅れるじゃないか。

 早く、ガチャ回してツイートしないと!


 幸い、メンテがさらに延長になった。

 未定なのは助かる。

 この仕事が終わる頃に、ちょうどメンテが終われば良い。


 トラブル対応を、やっと片付けて慌ただしく退社する。

 ズルズル残っていたら、別の余計な仕事を回されかねない。

 小さな会社で、余り良い職場ではない。

 残業代はでるが定額だ。

 月20時間分。

 どんなにやっても、20時間しかでない。

 そして実際の残業時間は、月50-60時間だ。

 トイレも汚くて臭いので、個室に籠もってスマホもいじれない。

 世の中腐ってやがる。


 そりより…ガチャだ! ガチャ! 

 歩きながら、スマホのリロード連打。

 会社をでたときに、ちょうどメンテ終了。


「やった! ツイてるぜ!」


 つい独り言がでたが、パッチのダウンロードが待ち遠しくて、気にならない。

 やっとゲームスタート。

 事前に10万ほど課金していたので、必死にガチャを回す。


 そして、9万分ほど回して焦りだした。

 この運営、売れているからって天井設定しないクソだった。

 ピックアップなんてサギだろ! でなければ回すと思いやがって…。

 悔しいが課金追加か…。



 そう思った瞬間だ。



 キターーーー!



 狙った子が!!!

 

 突然、周囲から叫び声が聞こえた。

 周囲を見渡すと俺は、横断歩道の真ん中。

 信号は赤。

 夢中で、気がつかなかったらしい。

 そしてトラックに、体当たりを食らった…。

 スローモーションのように時間が流れた。

 トラックの運ちゃんも、スマホを片手に持って、がくぜんとしていた。


 衝撃と共に意識が薄れる。


 もしかして同じゲームしていたのか? それなら俺のSSR返せよ!

 

 

 そして気がつくと、俺は知らない部屋の中にいた。

 床は畳だが、壁は無い。

 空に浮いている。


 そしてこたつがあって、目の前には、黒縁メガネの老人。

 これは、もしかして異世界転生!?

 アニメで見たな! この光景!


 今後の展開は、勿論アレだよな。

 期待に胸を躍らせつつ、正面の老人を上目遣いに見上げる。

 老人は俺に、頭を下げた。


「すまんな、お前さんは死んでしまったのだよ」


 うおおおお! キター!!!!!!


「もしかして手違いってヤツです?」


「うむ…申し訳ない」


「じゃあ…わび転生でチート持ちっすか?」


 多分神様だろう。


「うむ、ワシは神なので、その程度のおわびはできるんじゃ」


 ソシャゲのランカーも楽しかったが、つまらない仕事がついてきた。

 それなら奇麗さっぱり忘れて、こっちでチートハーレムを楽しめば良いか!


 もしかしたら、お気に入りの子のそっくりさんがいるかもしれない!


「なら、どんなチート能力をくれるんですか?」


「魔力無尽蔵、威力は神レベル。

身体能力も世界最強でどうかの」


「そうですね。

あ…あと来世は、イケメンでお願いします」


「ああ、それは勿論だとも」


 話が早くて助かる。

 こんな手違いならウエルカムだ。

 待てよ…他にも似たヤツがいたら嫌だな…。


「ちなみに、既にもう転生したヤツがいるんですか?」


 神様は俺に頭を下げた。


「頼みがあるのだ。

ソイツを討伐してほしいのだ!」


 相手が同じだったら勝てるか分からないだろ!


「相手が強かったら、どうするんだよ!」


「いや、頼む手前…君の能力はソイツの倍以上ある。

負けることは無い。

でも現地の民たちでは、勝ち目が無いのだよ」


 倍以上か…それなら余裕だな。


「討伐ってことは…ソイツは悪者なんですよね」


「ああ、能力を皆のために使って平和な世の中を作ると約束したのに…。

裏切られたのだよ」


「どうせ、チート能力をもらってイキってるだけでしょ。

分かったよ、ついでに退治しますよ。

ソイツの名前は、何て言うのですか?」


「実は分からないのだ…。

ただ、大貴族の息子に転生させたから、すぐ分かると思う」


「じゃあ、ついでに軽く倒してやりますよ。

悪者なら遠慮はいらないですからね。

あ…そうだ」


 神様はいぶかしげな顔をする。


「どうしたのかね」


「ちなみに…来世は一夫多妻ですか?」


「ああ、勿論だとも」


 やったぜ! SSRわび転生をした俺の最強生活始まります!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る