141話 子供を守ろう

 翌日に代表者たちを招集。

 マガリ性悪婆を交えて、話し合いを持つことになった。

 マガリ性悪婆が、小さく笑っていた。


「ほう……連日でお誘いかい。

新妻に嫉妬されなきゃいいんだけどね」


 あ、そうだこいつ喪女シルヴァーナに似ているんだ。

 ベクトルがだが。


 俺の懸念を話すと、全員が深刻な顔になった。

 マガリ性悪婆が、真面目な顔をしている。


「なるほどねぇ、確かにやろうとすれば可能だねぇ」


「ここでの1番の問題は、子供たちの安全なのです」


 脳筋代表のトウコが、身を乗り出した。

 予想通りの物理担当。


「問題が起こる前に、猫人をたたけばいいだろう」


 チャールズは渋い顔で腕組みをする。


「相手がそれを待っている所に突っ込むと、被害がシャレにならないですなぁ」


 簡単な未来予想図を出して、皆が猫人を意識しすぎるのを避けるか。


「この移住をしのげば、猫人はほぼ終わります」


 新しいオモチャで遊ぶように、マガリ性悪婆が面白そうに笑った。


「どんな仕掛けをするんだね」


「別に何も」


「何もしなくても終わるのかね?」


「私は何もしませんよ。


 オラシオが理解不能といった顔になる。


「ご領主、一体どんなことが起こるんだ?」


 俺は、ちょっと悪戯っぽい笑みになった。


「簡単な話です。

プランケットさんの集団がこっちに移住する。

その放棄耕作地がイノシシの繁殖源になりますよ」


 一同はイノシシの大群を想像して、天を仰いだ。

 ジラルドが苦笑する。


「夢にイノシシが出そうですな」


 マガリ性悪婆が苦笑した。


「本当に悪辣だね。

さっさと白旗上げて正解だったよ」


 だから今は、全力で事前の危機を凌ぐだけで良い。


「それはさておき、子供たちの安全をどう確保するかです。

加えてプランケットさんの一団が、不安を感じないようにする必要があります」


 デルフィーヌが挙手をする。


「ええと……ですね、子供たちにはできるだけ固まってもらいます。

今子供は3グループに分かれていますよね。

仕事の手伝いをしている子供。

勉強している子供。

小さくてまだ、外に出られない子供。

固まっている子供たちには、護衛をつけてください。

家にいる子供は、必ず親と一緒にいるように。

今は自分たちで帰っていましたが、保護者に出迎えてもらうようにします。

これなら最低限の安全は保障できます」


 妥当な所だな。

 窓口経験より、世話好きの性格から来ているのかな。

 ミルは、ちょっと不安そうな顔で首をかしげている。


「プランケットさんの一団が来たときに、いきなり変わったら怪しまれない?」


 一同が考え込んでしまった。

 そんな、難しく考えることはないのさ。


「到着前から始めればいいでしょう」


 キアラが納得したような顔をした。


「それなら、疑われませんね」


 この話題は一段落した。


                  ◆◇◆◇◆


 俺はせきばらいして、話題の変更を示唆した。


「それと以前から示唆していた……ラヴェンナの法を決めたいと思います。

法の制定には時間がかかりますが、法を制定する旨を公表します」


 チャールズが肩をすくめた。


「で……ご主君、法の原案はありますかね。

どうせそこから、先は我々で考えろとおっしゃるでしょうし」


 俺が一度深く息を吸う。

 法律を制定する際に起点となる話をしないといけない。


「まず法律を決める範囲です。

これは殺人、傷害、詐欺など、どこまでの行為を犯罪とするのか。

そして犯罪への量刑となります。

ただし法律といったものは、後々に複雑になるので最初は簡素にします」


 一同は黙っている。

 次の論点を提示しないといけないな。


「そして法律の制定は、後法優先の原則とします。

理由は前法優先だと、役人が力を持ちすぎるからです」


 日本なんて前法優先だから、官僚が強くなりすぎていた。

 政治家が決めようとしても、役人が先例を好きに持ち出して妨害できる。

 俺は再び一同を見渡す。

 これだけではダメなのだ。


「それと関連して決めないといけない事項があります。

警察の設立です。

そして法律を運用する眼目となる罪人を裁く裁判制度の制定。

以上です」


 一同は俺をガン見

 またとんでもないことを言い出した

 その目は、全員そう言っていた。

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