転生したけどチート能力を使わないで生きてみる

第75話 町の象徴

　人形師からの仕掛けを待っていたが、その前に代表者会議で一つの議題が上がった

　オニーシム・アレンスキー、ドワーフの代表者だ。

　彼からの要望がでた。

「ウオッカが欲しい、ここの酒は水のようだ。

作る許可と輸入を進めてくれ」

　ルードヴィゴも、強くうなずいた。

「ドワーフたちの士気を上げるためにも、私からもぜひ」

　この世界のドワーフだが、北の寒い大地で誕生したそうだ。

　寒さに耐えるために、穴を掘ったりして生活をすることから始まった。

　穴掘りが高じて、鉱山関係のエキスパートとなったらしい。

　小柄なのも暮らすのに、必要とする労力が少なくなる。

　自然に進化した結果のようだ。

　また、建築技術も高い種族である。

　酒も濃度が高いものを好むのはアルコールを入れないと、寒い地方では腹が凍るからとのこと。

　おそロシア。

「わかりました、そのように手配しましょう」

　ミルがオニーシムに確認事項があるようで視線を向ける。

「エルフはワイン造りなら得意なのだけどね。

ここで作るにしても、ウオッカ造りを出来る人はいる？」

　オニーシムが重々しく、うなずいた。

「われわれの中に、マイスターがいる。

ぜひ頼む」

　つまり達人がいるのか。

　断る理由もないしな。

　禁酒すると暴動が起きかねない。

「酒造部門でも作りますか」

　先生が満面の笑みを浮かべる。

「良いね！　賛成！　賛成！」

　本当に酒好きだな。

　やる気がでるなら良いだろう。

　それとは別件でそろそろ着手が必要なことを指示しよう。

「そろそろこの会議場も手狭になってきています、専用の行政庁舎を作りましょう」

　即座にキアラに止められた。

「お兄さま、ストップ。

そこから先は私たちが」

　俺は、キアラを手で制する

「ちょっと、補足させてください。

今は各業務の担当官が1～2名ですが、作業量が増えて処理が厳しくなっているでしょう」

　全員神妙な顔でうなずいた。

「担当官は大臣として代表であることは変わりありません。

そこに数名のスタッフを入れた省庁にしたいのです。

最後にもう1点だけ。

庁舎の前に像を造って、この町の象徴としたいのです」

　ミルが俺の意図を計りかねたようだ。

「象徴？」

「ええ。

象徴があればイメージしやすいし、結束も高まるでしょうからね」

　く〇もんとかのようなマスコットというかイメージキャラだな。

　あってもいいと思う。

　チャールズは、俺にどうせ案があるのだろうと言った顔をしている。

「で……ご主君にその原案はあるのですかな」

「そうですね……少女あたりを、原案で何か作ってもらえばいいと思います」

　おっさんとかより少女の方が、万人受けするだろ。

　そこに、突然精神クラスター爆弾を投下する先生。

「坊主の初恋の人でもイメージしたいのか？」

　爆弾が爆発して、会場は一転して不穏な空気に包まれる。

　ミルとキアラの視線が強烈だ。

「いえ……ここに、美女と美少女が2人いるのですから。

ミルとキアラとベースに、何か彫刻家に頼んで作ってもらおうかと」

　そもそもいないし。

　強いて言えばミルが初恋か。

　だが……これを放置していては、俺の命にかかわる。

　即座に賛成が得られる話に切り返す。

　キアラは、その言葉に満足げだ。

「それでしたら…」

　ミルも初恋のワードが気になっているようだが、この話には異論はないようだ。

「異論はないわ」

　会議を牛耳る2人の賛成が得られた。

　キアラが、突如して立ち上がる。

「では、世界最高峰の彫刻家を探して作ってもらいましょう！　最優先で！！！！」

　さも当然のように、キアラが職権乱用し始めた。

　ミルも全面同意して立ち上がる。

「ええ、良いわね」

　あ、駄目だ。

　もう止まらんわ…これ。

「ともかく……庁舎と省庁と人員については、各自でリストアップしてください」

　珍しく、ジュールが挙手した。

「私からも一つ良いでしょうか」

　俺はうなずいて続きを促す。

「そろそろ私一人では、警護が間に合わない事態も起こっています。

親衛隊の創設をお願いしたいのです」

　そろそろその話がくると思っていた。

　オラシオがそれに関して、疑問があるようだ。

　珍しく身を乗り出してきた。

「それは騎士でないと駄目なのか？」

　騎士を俺の護衛だけに貼り付けるのはもったいない。

　俺は首を振る。

「別に騎士にこだわらなくても良いかと」

　考えなしに答えると、チャールズがのんきに笑った。

「志望者がとんでもない数になりそうですな。

ご主君は人気がありますからな」

　人気？　皆のおもちゃの間違いだろ……。