死にたい魔法少女と異世界転移

彩乃 凜

序章〜Prolog〜

 魔法少女。それは、凶悪な魔物から人間を守る、国家直属の英雄のこと。

 魔法少女には、国が行う試験に受かった16歳の少女しかなれない。

 美山 零(みやま れい)は、その中のひとりとして、短剣(ショートソード)を使い多くの魔物を屠り、人々を救ってきた。

 彼女には、幼い頃からの親友がいる。

 名は麻木 三葉(あさき みつは)。

 三葉もまた、零と同じ魔法少女として共に戦っていた。



 その日、零は、戦いながら違和感を覚えていた。

(おかしい。普段だったら敵はもっと多いはず。数が少なすぎる)

 まあ、少ないなら悪いことはないけど。そう思いながら、彼女は短剣を振る。

 最後の敵も倒し、零は短剣をしまった。

 すると。

 ぐしゃっ。

 え?

 自らの腹部に、槍が刺さっている。

 零はおそるおそる振り向く。

 三葉が零の腹に槍を突き刺して、笑っていた。

 痛みに意識が薄れていく。

 しかし、三葉が最後に何と零に言ったかは、聞き取れた。

 "うふふっ、やっと世界を滅ぼせるわ"

 どうして。零は涙を流しながら、意識を失った。



 零が目を醒ますと、世界は死んでいた。

 灰の雨が降り注ぎ、空は紅蓮に染まっていた。

 三葉は、もともと魔物を創った一族の末裔だったらしい。しかし、その事実を隠蔽し魔法少女になったそうだ。

 零と幼い頃親友になったのも、共に魔法少女を目指したのも、零の才能を見抜き、その才能を利用する為だった。

 零を心から信頼させ、油断した隙に刺し意識を失わせる。意識のないうちに、魔法少女の力を奪い魔物に与え、世界を滅ぼす。魔物は、僅かだけ魔法少女と戦わせ、その他は世界を滅ぼすための準備をさせておく。

 良く練られた、おぞましく完璧な計画。

 しかし、これを零が知る由もなかった。



 零が分かったこと。それは、大切だったはずの親友が世界の、自分の敵だったということ。

 零の心には、深く傷が刻まれた。

 もう…馬鹿らしくなってしまった。

 世界は滅んだ。親友には裏切られた。

 自分が今、生きている意味は無い。

「さよなら」

 短剣を構え、喉へと近づけるーー。

 しかし、短剣が喉を突き刺す前に、零の身体は光に包まれ、世界から消えた。

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