軽妙洒脱なスパイ小説 《UWTB》


2007年12月11日 レビュアー UWTB



この作品の一番の見どころはファスダのマネージャーであるケイリのスパイさながらの大冒険でしょう。ファスダの心強い相棒であり気の置けない親友でもあるケイリ。彼女が夭折した天才脚本家の遺稿を手入れるために大活躍する第三部は、それだけでも独立した作品として成立するほどの面白さです!


ケイリ、ケイリ、ケイリ!


サバイバル技術と格闘技を極めた彼女の前半生は、たぶん軍属か政府の諜報部員だと思われます。冴えわたる語学力と世慣れた余裕。さらに色気もたっぷり。ファスダとは違ったタイプのミステリアスな存在感。どことなくR&B歌手アリーヤ(彼女は作中の脚本家と同じく22歳で亡くなっています。死亡原因も同じ――偶然?)を彷彿とさせる風貌。何もかも大好き!


彼女が単身ギアロに乗り込んで、脚本家の別荘の地下室から『笑わない花嫁』の原稿を手に入れるシークエンスは本当に好き。冷徹な観察力で敵の罠を出し抜いたり、持ち前のユーモアで悪党たちを煙に巻いたり……とうとう見つけましたよ。文句なく理想の女性です。


ただひたすらケイリ愛を叫んでしまいましたが、後悔していません。ケイリのためならワートに巣食う凶悪なバイカーギャングにだって立ち向かえます。


この小説は出会った読者は第三部まで必ず読み進めてください。保証します。あなたのすべてが報われるはず!

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