君の生きる世界が優しい世界でありますように

夜月

第1話残酷な世界で

君の匂いが少しだけしたんだ。

それは気のせいかもしれない。

あるいは紙一重かもしれない。

そこに差はない。君もいない。

でも、確かに君はいたんだ。


君がいない世界。僕がいる世界。

君がいた世界。 僕だけがいる世界。

仕方無しに始まざるおえない 今日も明日も。

身勝手で、残酷で。優しさなんてあるわけないのに。

君を忘れたこの世界を愛せるかな。

君を忘れたこの世界を愛せたときは

会いに行くよ。


思えば君はよく笑っていた。なんでそんなに笑えるんだろうと不思議に思っていたくらい、よく笑っていた。意味があるんだろうか。誰かが救われるわけじゃないのに。君さえ救われてないのに。どうして君の笑顔はそんなに美しいんだ。

そうか。君は君のために笑っているんじゃないんだ。なんのため?誰のため?分からない。分かりたくもない。君の存在を知るのは僕だけでよかったのに。

君の泣いているところを 一度だけ。人生で一度だけ見たことがある。そしてそれが最後だったのも知っている。それがどんな意味か。僕はまだ、知らずにいた。そして君は言わずにいた。


僕はこの世界が嫌いだった。君と出会う前から。いや、生まれてきた時からかもしれない

嫌いな理由は明確ではない。ただ、この世界が嫌いで、憎くて、愛せなかった。何がそんなに許せないのか。何をそんなに拒んでいるのか。答えも分からずに嫌っていた。嫌っていたというよりはこの世界で生きていたくなかったのかもしれない。ただそれだけだ。

僕は人と関わることが苦手だった。怖かった。友達、先生、親、その他。人が嫌いだった。学校でも友達を作らなかった。先生にも心を開かなかった。開く理由が見つからなかった。心を開いて何が変わるのかが分からなかった。変化が怖かった。僕が僕でなくなるような気がした。閉じこもっていた。自分という名の殻に。開こうとせず、開かせようとせず。避けて、逃げて、隠る。弱い人間だ僕は。

嫌なことから逃げていただけなんだ。でも、それが僕だ。変わる気は全くない。誰も信じない。誰も受け入れない。誰も好きにならない。心もない僕だ。

そもそもおかしな話だ。何故仲良くしなくてはいけない。メリットは?何が生まれる。友情?青春?思い出?友情なんてすぐ消える。青春なんて元々ない。思い出なんてただのゴミだ。それを作って語り合うなんてゴミみたいだ。そもそも思い出はさよならがないと思い出にはならない。忘れるから思い出なんだ。忘れない限り思い出とは言わない。かと言ってそれをなんて呼ぶのかは知らない。僕はそれ等がくだらなくて仕方がない。エゴの押しつけだ。ひねくれてる?そうさせたのはこの世界だ。なんて、なんでも世界のせいにするんだ。僕はそうするよ。

君との出会いを描くと長くなるのかな。描ききれるかな。思い出そうと頑張るけど どれも嘘みたいでさ。僕と君の出会いに名前をつけたね。

「ありがとう」

って。

それだけだった。でも、それだけで良かった

奇跡と呼ぶにはあまりにも不格好で運命と呼ぶにはあまりにも脆い僕と君。この世界で、君のいるこの世界で僕と君は出会い 別れる。

意味があるのかな。君のいないこの世界には

意味があるのかな。僕だけがいるこの世界には。

愛せるかな。君のいないこの世界にを。

愛せるかな。君を忘れたこの世界を。


いいよ。美しくもがくよ。この世界で


だからさ


君を忘れたこの世界を。愛せた時にはさ。会いに行くよ。それでいいだろう。それがいいだろう。

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君の生きる世界が優しい世界でありますように 夜月 @Yotsuki1014

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