藍色の夢(七)

 彼女の思いが、私の内を駆けめぐる。それに加え、見えたものは……


 ──一一五七年 保元の乱

 源為義・・・、処刑──


 ……源の、お祖父様……!?


 ──一一五九年 平治の乱

 十二月九日。信頼は源義朝・・・と結託し〝反信西派〟として兵を上げた──


 父上……!!


 ──十二月二十六日。信西の首は獲ったが、圧倒的な勢力を誇る清盛によって〝反信西派〟は滅ぼされた──


 なんと……っ!

 息が詰まり、体が震えた。


 ──義朝・・の子・義平・・朝長・・も、ともに討伐され──


 私の、家族が──っ!!


 とっさに、目を開けてしまった。両手は、無意識に胸元を握り締めていた。


「……はっ……はっ……」


 荒い息を繰り返すことしかできぬ私の体を、神使の方が支えてくださった。


「……申し、訳、ござい、ません……」

「いいのよ。大人でも嫌な気分になる事柄だもの。ましてや、あなたのように家族を大切にする子ならなおさら。正気を保っているだけでも、すごいことよ」

「……私は……源氏の、次期長の、嫡男で、ございます……常に、〝気〟を張って、おかねば……」


 息が整わず強張る私の体を解きほぐすように、大きな御手が温めてくださった。


「あなたのお祖父様が心配しているのは、そういうところよ」


 私の心をも解きほぐすように、ことさらやさしく諭してくださる。


「その歳で、自分の立場を理解しているのは立派よ。でも……あなたはたぶん、ひとりで背負い過ぎてる」

「……されど……」


 私が負わねばならぬものは、かつて源のお祖父様や父上が背負ってこられたものだ。私ばかりが、それを違えるわけにはいかぬ。


「心意気も立派よ。ただ、周りの人たちは、もっとあなたに甘えて欲しいんじゃないかしら」

「甘え……」


 そのようなことが、私に許されると……?

 私の眼差しから何かを読み取られた神使の方は、やわらかく苦笑なさった。


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