※ 熱田のお祖父様(六)
『──よく、覚えておくがよい──』
家族のすすり泣きに混じって、耳の奥で、かつてのお祖父様の声がこだまする。
お祖父様は教えてくださった。『自我を据える』ことと、『我を張る』ことの違いを。
『自我を据える』とは、自分が何者であるかを理解し心に留めおくことであり、自分の立ち位置を客観的に見ることでもある。
『我を張る』とは、自分の意見をただ押し通そうとすることであり、自分の立ち位置を主観的にしか見ていないことでもある、と。また、こうも仰っていた。
『──高い霊力を保つには、根底にしっかりと自我を据えておかねばならぬ。自我が揺らげば、霊力に振り回されてしまうゆえ。また強すぎる
自らがしたいことを思うばかりでは視野が狭くなり、聞く耳も持たなくなる。
お祖父様が教えてくださった数多のことは、私の宝だ。さらに、神使の方が藍色の夢で、お祖父様に似ていると仰ってくださったことも、私の宝だ。
偉大なお祖父様に似ていると言われたからには。
場の空気を読み、おとなしく座っている弟妹たちを守れるようにならねば。
父上に支えられた細い肩を震わせ、静かに涙される母上を守れるようにならねば。
涙でにじむ光景を目に焼きつけ、私は改めて心に誓った。
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