※ 熱田のお祖父様(二)
『……人は皆、いつか迎えることだ……』
『お祖父様……』
『……生も死も受け入れる……それが、人として、この世に在ることの定め……』
『しかし、お祖父様はお若いではありませんか。末永く、私たちとともに──』
『受け入れよ』
ご指南の時のような、あたたかくも厳しいお言葉。
『……そなたは賢い子だ。もう、わかっているだろう。……私の、自慢の孫ゆえ……』
そのように仰られたら、何も言えぬ。
手に爪がくいこむ痛みよりも、お祖父様を見つめることしかできぬ歯がゆさのほうが強かった。その奥には、次第に枯渇していく神力を懸命に注がれる神使の方。
無心を装う表情に見え隠れする、悲痛な……それは、いっそう実情を伝えてくるものだった。
私はどこかで、お祖父様は、いつまでもともにいてくださると思っていたのだ。見舞いに訪れるたび、痩せ細っていかれるのを目の当たりにしていたにもかかわらず。喪うことへの恐れが、死というものを考えることを無意識に放棄していたのだと気づかされた。
覚悟が決まっていなかったのは母上ではない。
私のほうだ。
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