※ 熱田のお祖父様(一)
十一月下旬。
熱田のお祖父様の容態が急変した。
毎日見舞いに訪れる私たちの目の前で、喘鳴とともに日に日に痩せ衰えていかれるお祖父様。
幼い頃から私を圧倒し、導いてくださっていた神懸った霊力は、今は細々と残されているのみ。それは間もなく死を迎える命であることを、私たちに実感させているようだった。
不安げに震える母上の肩を、父上は力強く抱きしめていらっしゃる。
……このような姿を、ただ見ていろと? 私の霊力を注いでさし上げたら──
『……止めよ……』
お祖父様が念話で伝えてこられた。目を閉じたまま、喘鳴を繰り返しながらも、私が一線を越えぬようにと気を配ってくださる。
『しかし、今、言霊を唱えれば、お祖父様のご容態は安定するやも──』
『わからぬか……』
私の念話を遮られたお祖父様。
『……すでにあれが注いでおる。だが、この有様だ……』
今もなお、神使の方が神力を注いでいらっしゃる。神の眷属の力を持ってしても、これ以上の快復は見込めぬ──仰りたいことを理解してしまった私は、唇を噛みしめた。
何のための霊力なのだ。
私は、何のために精進して参ったのだ。
己の手を見つめ、きつく握りしめたとて、この場では何の役にもたたぬ。お祖父様を助けたい、ただそれだけのことが叶わぬとは……
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