のどかなる牛車(一)
乾対にて、玄斎師にご教授いただいた。
穏やかな気質の師は、
本日は、
予定どおりに学問を終えると、師とともに乾対を後にして中門をくぐった。いつものように、私の牛車でお送りするためだ。
嫡男ゆえか、元服前だが専用のをひとつ頂戴している。官位を賜っておらぬため、一般的な八葉紋の車だ。
私も同乗したところで、ゆるやかに牛車が動き始めた。
「木々も華やぐ、良い陽気ですな」
「はい。まことに」
やわらかく暖かな陽射しに包まれて。
のんびり進む牛車に揺られ、師のお住まいまで和やかに会話をさせていただいた。
師をお送りした後。従者たちの計らいで、通りに沿って少しだけ景色を見物した。
物見 (小窓)を開けて目に映す、四季のうつろい。
邸の外に出ることが少ないため、こうして直に見ることができるのを嬉しく思う。
我が家付近の治安は比較的良いそうだが、少し外れた辻界隈では
私に関しては、嫡男の庇護目的か、稚児拐いが好みそうな顔立ちへの懸念か、はたまた非力さへの危惧か……まぁ、すべてだろうな。
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