愛好家の会なるものがあるらしい(一)

 波多野の方々への挨拶のため、私は御簾の前で立ち止まった。


「立ち姿も、お美しいわ……!」

御仏みほとけの生まれ変わりかしら」

「あら。それなら、お釈迦様でなくて? 光の君のまことのお生まれが、お釈迦様と同じ日ですわよ」


 彼女たちの控えめだが弾む声は、前世の少女たちに通ずるものが……最後の言は、先ほどの警察犬の者か?


「なぜ、そなたが存じているのだ?」


 私は御簾越しに問いかけた。


「……っ……光の君……」


 鼻高々に申していた者と同一人物とは思えぬほどの、消え入りそうな声。


「咎めているわけではないゆえ、案ずるな。呪術に使おうなどと、そなたは思わぬだろう?」

「そ、そのような恐ろしいこと、致しませんわ……!」

「ならばよい。なぜ存じているか、問うてもよいか?」

「……わ、わたくし、『光の君愛好家の会』に、入っておりますの……」

「私の?」


 そのような会があるのか。知らなかったな。対象が異母兄上方ならばわかるが。


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