第14話 グレーなクリスマス

「おはよう、お兄ちゃん🎵 」

 なんとか一緒に寝るのを阻止したと思いきや、目が覚めると、唯花は目の前でにっこりと微笑んでいた。

「おはよう……」

「もぅ~お兄ちゃんったら、こんなにカワイイ妹が起こしてあげてるのに、そんな反応で良いの?」

「何入ってんだよ」

 大学生と中学生が同じ布団で寝てても良いのだろうか。いや、良いわけがない。

「そんなお兄ちゃんには、あえて、ほっぺたの落ちちゃうような、おいし~い朝ごはん食べさせてあげる🎵」

「作ってくれたのか、ありがとな」

「どういたしまして🎵」


 唯花の作ってくれた朝ごはんはフレンチトーストだった。家庭派のまい、オシャレな唯花。比べること自体、問題ありだが。

「いただきます」

「お兄ちゃん、今日どこ行く?」

「どこって?」

「だから、クリスマスデートじゃん!電話で言ったでしょ!」

 言ってたな。今は彼女がいるとも言ったが。

「まさか、せっかく来た妹を一人にして、まいさんと行くつもり!?」

 普通はそうなるはずなんだが、そんなに非常識か?

「あんな貧乳のどこが良いんだか……」

 お願いします、それは忘れて。


 兄だから、彼氏だからわかる。お互い退きそうにないということを。

「今日は遅いね、まいさん」

「そうだな……」

 僕も薄々感じていた。いつも朝早くから欠かさず来てくれるまいが、今日は昼前になっても来ない。夜に会うから、まぁ構わないんだが。そもそも毎日顔を合わせるカップルって実際そんなにいるとも思えない。まいの存在感を再確認し、改めて考える。

 唯花のこと、どうしようか。

 言い聞かせて一人で過ごしてもらうしかないのだが、いかんせん重度のブラコンだからな。説得するには時間がかかる。

「あのさぁ、唯花。やっぱりお兄ちゃん、まいとクリスマスを過ごしたいんだ。彼女ってのももちろんあるし、それに初めてのクリスマスなんだ。唯花にもプレゼント買ってやるから、頼む」

 善は急げ、そして、願い事は率直に。哀しげな表情をみせるが、聞き分けてくれたようだ。

「いいよ、その代わり、カワイイぬいぐるみ買ってきてよね」

「ありがとう。ごめんな、唯花」

「いいよ、本来は顔すら見れなかったはずだもん。一緒に話せただけで十分だよ」



 そんな時だった。最低最悪のクリスマスプレゼントが届いたのは。



 まいが交通事故にあったのだ。


 

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