第13話 ブラコン妹は何よりも怠惰を愛する
田舎から新幹線で来る唯花を迎えに、僕は早朝に駅へと向かう。
「なにもこんな早くに来なくても……」
「ホントですよ、直樹くんと二人っきりの時間が減っちゃいます」
なぜかまい までついてきている。
「お義姉さんか……🎵」
僕の思い浮かべるお姉さんとは違ったように聞こえたが、それを問うのは野暮だ。
「久しぶりお兄ちゃん!会いたかったよ!!」
「あぁ、久しぶりだな」
「はじめまして、唯花ちゃん。中野まいです。気軽にお義姉ちゃんって呼んでね?」
「お兄ちゃん、この人が彼女?」
「あ、あぁ、そうだ」
「はじめまして、お兄ちゃんとずぅーっと、一緒に過ごしてきた、須藤唯花です」
なんだかピリピリしてません?お二人とも。
「私だってずぅーっと、一緒にいますもん!」
「そんな事言ったって、唯花の方が長いに決まってんじゃん!」
「愛は長さじゃないよーだ!」
「なにを~!」
楽観視していたようだ。ピリピリどころではなく、激辛だ。
「まあまあ二人とも、朝から喧嘩はよしてくれよ……」
「別に喧嘩じゃないもん!」
「あれれ~?おっかしいぞ~?」
坊主は引っ込んでろ(毛利)
「な、何がおかしいんですか!?」
「だってぇ~お兄ちゃんがやめてって言ったのに、まだ口答えしてるって、それってホントに彼女のすることなんですかぁ~?」
「そ、それは、その……」
「うぇ~ん💦直樹く~ん💦」
この先思いやられるな……
勝ち誇った唯花と涙目で悔しがるまいを連れて家へと戻る。
いつからか唯花は僕を、兄妹愛・家族愛を越え、恋愛対象としてみていた。
背は低いが、性格はもちろん、顔立ちも良く、おまけに胸も……
「もぅ~お兄ちゃんったらやっぱり満足出来てないんじゃん🎵」
しまった、視線が!?
「直樹くん???」
THE・ヤンデレみたいな顔で見ないで…
「ちょっと悔しいです」
いやいや、まい、女は胸じゃないぞ。
「いつもより、直樹くんが楽しそうで」
あ~そっちね。うん、わかってたよ~。
「もっと頑張らなくちゃ!」
「唯花お姉ちゃんって呼んでも良いんですよ」
「絶対呼ばないもん!」
完全に唯花のペースだ。
改めて気づく、まるで数ヶ月前に自殺しようとしていたようには見えないということに。そういう意味では良い方向へと進んでるのだろう。
まいだってそうだ。睡眠薬を常用し、不可解なところで一目惚れしてしまう愛の欠乏者。
絶大な愛を享受するために、その人の前から消える。迎えに来てくれるのを、ただ待つ事しか出来なかったあの頃。
ブラコンとなった唯花も、もしかすると何かあったのかもしれない。男性不信に近い現状を生み出した忌まわしき出来事が。
そう思うと、もう少し甘えさせても良いのかな。
「今日はお兄ちゃんと寝るんだ🎵」
前言撤回。甘やかしすぎると、彼女に刺されます。たぶん。
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