ミッドナイト

綿麻きぬ

午前0時

 眠いけど寝たくない、そんな午前0時。


 やりたいことがありながらも、怠惰に別にやらなくてもいいことをする、そんな僕の夜の話だ。


 明日に用事がないのなら、夜更かししたっていい。けど、明日は普通の平日が待っている。朝だって起きなきゃいけない。


 今日だっていつもの平日で身体には疲労が溜まっていて、寝ることでその疲労を取り除かなきゃいけなくて。


 寝なきゃいけないのは頭では分かっている。身体も分かっている。だけど寝たくない。なんて不思議なことなんだ。


 そんな時間でまだやりたいことをしているならいいじゃないか。しかし僕は生産性のないことをしている。


 ポツポツと光が消えていく中で、僕はこんなことを考えていた。


 何故だろうか? そんなことを考えていると世界が僕に少しだけ愛を与えてくれている気がするんだ。


 こんな夜に少しの愛しかくれない世界に忙殺されながら、僕はその愛に飢えている。


 その愛は無償の愛だ。母が子に与えるような無償の愛だ。


 そう思い込みながら生きている。でもきっと本当は有償の愛なんだ。


 無償の愛なんてない、いや、あった。過去の話だ。今の僕には有償のものしかない。


 きっと頑張って疲れて考えられなくなって、それで世界は少し愛をくれるのだろう。


 もっともっと愛が欲しかったら、もっともっと頑張って疲れて考えられなくならないといけないのですか?


 分からない。誰か、僕を愛してよ!


 夜中に心は叫ぶ。でも、もう僕は愛の渡し方を、素直な受け取り方を知らない。


 あぁ、なんて悲しい人生なんだ。


 過去の愛なんてもう色褪せてしまって、どこかに消えてしまった。


 結局、僕はひねくれてしまったのだろう。愛が与えられているというのにまだ欲しがる。


 そんな風に愛に飢えながら、人生に疲れた僕は明日には自分が消えていることを祈りながら目を閉じる。

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ミッドナイト 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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