王子が婚約破棄するようですwww

@asashinjam

王子が婚約破棄するようですwww

―誕生―


ヨシモト王国、 宮廷占い師曰く王子が生まれた時にこんな言葉を言われたらしい


「この子は歴史上最も多くの人々に笑いを齎すお方になるでしょう」


国王サンマは笑いを意味するファニーと命名したのだった。



―婚約破棄―


「ナキ!! お前とは婚約破棄をする!!」


学院の卒業パーティにてファニー王子が

ショウフク大公家の一人娘ナキにそう宣言した。


「理由をお聞かせ願いますか? 殿下」

「ああ!! 私はこのパイと真実の愛を見つけたのだ!!」


ピンクブロンドのパイと言う少女を傍に侍らせるファニー。

俯くナキ。


「更にお前はパイに嫌がらせをしていると言う事も分かっている!!

何か弁明があるなら言って見ろ!!」


俯いて震えるナキ。


「何か言って見ろ!!」

「殿下、 殿下」


ファニーの取り巻きのクスリ侯爵家の嫡男ザワがファニーの肩を掴む。


「なんだ?」

「す、 すみませんけど静かにして下さい」


変な顔で何かを耐えるザワ。


「何だ? 如何した?」

「何の騒ぎですかな? これは?」


学園の長で有る、 モンティ学園長がやって来た。


「学園長、 私は今ナキに婚約破棄をしているのです!!」

「ほう・・・このめでたい卒業パーティの席でそんな事を・・・

何か理由は有るのですかな?」

「勿論!! 私はパイと真実の愛を見つけたのです!!」

「ぷっ」


噴き出すモンティ。


「真実の・・・愛?」

「そう!! 真実の愛です!!」

「ぷっ・・・」「くすす・・・」


周囲を見ていた観衆から吹き出す音が聞こえる。


「何だ? 何が可笑しい?」

「くっ・・・ははははははははは!!!」


モンティが爆笑し始める、 つられて周囲の観衆も笑い始めるナキも笑顔である。


「ナキ・・・お前、 そんな顔出来たのか・・・」

「真実の!! 真実の愛ってwww 真実の愛www」

「な!? な、 何が可笑しい!?」

「殿下くっふふふ・・・真実の愛は幾ら何でもふざけすぎですよwww」


ザワも大笑いする。


「真実の愛の何が可笑しい!!」


爆笑する観衆達。


「笑うなー!!」


尚も笑い続ける観衆達。

その後、 卒業パーティが中止になったが笑い過ぎてそれ所では無かったと言う。


―翌日―


婚約破棄の騒動は翌日新聞で国民達に知らされた。


「王子が婚約破棄!?」

「真実の愛!? あははははははははは!!」


民達はこの真実の愛と言う単語に対して爆笑した。

貴族達も


「殿下が真実の愛!! これは滑稽だ!! はははははは!!」

「ほほほほほほほほほほ!!」


満面の笑みを浮かべた。

芸人達もこの言葉を大層面白がり


「この真実の愛と言うのは本当に面白い単語だ!!

次の舞台の脚本にしよう!!」


世界最大の名喜劇【真実の愛】が生まれた瞬間である。


―謁見―


国王サンマに呼び出されるファニーとパイ。

サンマは椅子に座り謁見室で二人を見下ろす。


「ファニー・・・真実の愛wwwって本当に言ったのか?」


サンマは笑いながらファニーに尋ねた。


「はい、 確かに言いました、 それよりも」

「言って貰えるか?」

「はい?」

「真実の愛を見つけたってwww」

「・・・・・父上、 私は真剣なんです、 真剣にパイと真実の愛を見つけたのです!!」


どっと噴き出すサンマ。


「あーひゃっはははっははっはっは!! 」


パンパンと膝を叩くサンマ。


「最高に笑えるな!! 本当にギャグセンス有るよお前!!」

「何で笑うんですか!! 真実の愛の何が可笑しいんですか!!」

「やめろwww笑い死ぬwww」


只管笑い続けるサンマ。


「一体何が可笑しいって言うんだ・・・兎に角私はパイと結婚しますからね!!」

「あー・・・それは・・・まぁ大公との交渉次第だなwww」


肩で息をしながら言うサンマだった。


―慰謝料―


婚約破棄の慰謝料を払う事になったファニー。


「何でこっちが慰謝料を払うんだ!! パイをいじめていたのは向うだろ!!」

「いや、 これじゃあ立件は難しいですね・・・

そちらのパイ令嬢の証言のみでは・・・貴方の正気も疑われていますし・・・」

「私は正気だ!!」


離婚弁護士に対して怒鳴るファニー。


「婚約破棄の時に仰った・・・くく・・・失礼・・・あの言葉はちょっと・・・」

「お前も真実の愛で笑うのか!!」

「笑わない人間は居ませんよ・・・ぷぷ・・・兎も角慰謝料は支払わないと

泥沼化していきますし、 スパッと支払うのが良いかと・・・」

「ぐぬぬ・・・」


結果としてはファニーは慰謝料を支払いパイと結ばれたのだった。


―結婚式―


ファニーとパイは結婚式を行った。

式には多くの貴族達が参列していた。

皆とても良い笑顔だ。


「あっはははははははははははは!!」

「ふはははははっははははっはっは!!」

「くはははははははははははははは!!」

「真実の愛wwおめでとうございますwww!!」

「おめでとうぷっくく!!」


笑顔で祝福しているのでは無く笑われているとファニーは思った。



―婚約破棄された令嬢が隣国で幸せになる―



「殿下!! 大変です!!」


執務室で仕事をしているファニーの元にザワがやって来た。


「何だ、 騒々しい」

「ナキ令嬢が隣国のショウチク帝国の皇位継承第一位のタケシ殿下の婚約者になるそうです!!」

「な、 なんだと!?」


タケシといえば気難しい事で有名な男だ。


「なんでナキの様な陰気な女と結婚するんだ!?」

「それがナキ令嬢はあの婚約破棄の一件以降、 とても良い笑顔をなさる様になったそうです」

「笑顔・・・」


確かに婚約破棄の会場で見た笑顔は素晴らしかった。


「しかし笑顔だけでは仕方ないだろう」

「会話の話題も殿下の婚約破棄の・・・ぷ」

「笑うな!!」

「す、 すみませんぷくく」


イライラするファニー。



―婚約破棄で皆が幸せに―


「しかし殿下の婚約破棄のし、 真実のwww」

「黙れ」


ザワに剣を向けるファニー。


「す、 すみません・・・しかしあの婚約破棄以来

何と言うか国中が笑顔です」

「何・・・? どういう意味だ?」

「婚約破棄の会場に居合わせた貴族達の家では笑いが絶えず

ギスギスしていた家庭環境の家も今では仲良くなり

病床に臥せっていた家族も明るい話題で幸せになり

民達も劇になった婚約破棄の劇を見て大いに笑い

共通の話題が出来た事で結婚ラッシュも起こっているみたいです

俺も婚約破棄の時の出来事を公演しています」

「公演だと? 何を言っているんだ?」

「そりゃあ・・・・・分かるでしょう?」


後にザワが婚約破棄の真実の愛を面白おかしく語っていると知ったファニーは

ザワと絶縁した。


ザワのその後、 家は継げなかったが国で一番面白い話が出来る噺家として有名になった。



―勅命―


婚約破棄から三十年が経ったある日。

未だに婚約破棄を騙った喜劇【真実の愛】は連日満員になり

ザワも公演を続けて行った。


ファニーも良い歳になったのでサンマから王位を譲られるのだった。


「・・・・・・・」


ファニーは執務室で有る勅命を記載していた。

その勅命は

【真実の愛を笑い話として認識した者を殺害せよ】と言う腸捻転物の命令だった。


その勅命を受け取って見た大臣は笑い死んだ。

後任の大臣も笑い死んだ。

勅命を直接騎士団に通達した、 騎士団の団員全てが笑い死んだ。

隣国のコメディ共和国が攻めて来た。


軍隊に向かって【真実の愛を笑い話として認識した者を殺害せよ】と宣言した。

軍隊は壊滅した。



―晩年―


爆笑王として称えられたファニーも百歳を超えると体が弱り病床に臥せっていた。

妃のパイはずっと前に病没した。


「・・・・・・・」


ファニーは王を引退してからずっと一人で隠遁していた。

何故なら真実の愛で未だに笑われるからだ。

それを笑うなと言っても笑われる。

彼は人嫌いになっていた。


「・・・・・」


そしてファニーは逝った。

大往生だった。



―死後―


死後の裁判所で判決を読み上げられるファニー。


「被告、 ファニーは人々を笑顔にして来た

よって被告を天国に迎える事にする」

「天国・・・」

「そこには貴方の妻や貴方が笑顔にして来た人が大勢居る」

「もう笑われるのは沢山だ!!」


ファニーは叫んだ。


「私を地獄に送ってくれ!!」

「・・・まぁ本人が望むのなら・・・」


ファニーは地獄に送られた。

ファニーは地獄の苦役の中で働いていた。


「おい!! あの人はファニー国王じゃないか!!」


地獄の同僚達に取り囲まれるファニー。


「アンタ何で地獄に!?」

「何だって良いだろう」

「良くねぇよ!! アンタの婚約破棄の時の台詞www」

「笑うな!!」

「本当に面白くてwww」

「笑うんじゃねぇ!!」

「心の支えになっているんだwww

こんな地獄でも笑えるのはアンタのお陰だよwww

本当にありがとうwwwそんなアンタが地獄だなんておかしいだろwww」

「私は!! 笑われるのが嫌いなんだ!!」


暫くの沈黙の内、 地獄に大爆笑が奔った、 囚人も地獄の獄卒も皆笑顔。

地獄に囚われている魔王も地獄に来てから始めて笑ったのだと言う。


ファニーは宮廷占い師の占いの通りに歴史上最も多くの人々に笑いを齎す男になったのだった。

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