第4話

そんな気がしてきた。


一度頭に浮かんだ思いは、どんどん強くなって洪水のように高田の全身を包み込んだ。


なにかいるような気がしていたのが、気がするではなく確実になにかいると感じ始めた。


そしてその何かが高田に向かってきているような気がした。


それが確信に変わるまでに、そう時間はかからなかった。


「ひいいいいいっ!」


高田は後ずさりをし、ついには窓を開けてベランダに出てしまった。


それでもその見えない何かは、どんどん近づいてくる。


高田にはそう思えた。


「いやああああああああっ」


高田は大きく後方に下がった。


するとベランダに強く腰を打ち、バランスを崩してしまった。


高田はそのまま八階のベランダから下に落ちた。


中谷はベッドに入った。


今日はもう寝るだけだ。


しかしふとあることが脳裏を横切った。


――もしかしたら……。


警察に聞いたことを頭の中で反すうしてみた。


――やっぱり。


少し前に802号室の住人に、その部屋で殺人事件があったと伝えたが、殺人事件があったのは802号室ではなくて、なんなら引っ越しますかと勧めた801号室のほうだった。


警察の話で動揺していたとはいえ、なんでこんな勘違いをしてしまったのか。


――あちゃー、間違えた。でも今日はもう遅い。明日802号室の住人に伝えよう。しかしこんな間違いをするなんて。ただでさえ801号室が事故物件になってしまったのに、自分の勘違いで802号室まで事故物件にしてしまったら、いくらなんでもまずいだろうし。


中谷はそう思った。



       終

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伝えられなかった真実 ツヨシ @kunkunkonkon

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