エピローグ「これからのこと」

 「……次」


 「……次」 


 「剣次!」


 はっとして目を見開く。


 横には白髪の少女が座っており、俺の手を握っていた。


 「剣次、意識が戻ったんだね」


 「ユニここはどこなんだ、俺は確かカラス男と戦って………」


 「倒れてアタシがここまで運んだ、ここはカフェ秘密基地」


 俺とユニが会話をしていると、部屋の扉が開き、一人の女性が現れる。


 短く切ら揃えられた黒髪、見た目から推測するに十代後半から二十代前半に見える見た目、その表情は不敵な笑みを浮かべ少年のような印象を与える。


 「桜坂さくらざか千花せんか、無事だったのか」


 「名前を覚えてたんだ、あの程度じゃあたしは死なないよ」


 桜坂千花は俺がさっきまで寝ていたベッドに腰を掛ける。


 「さてお二人さんお別れは終わったかい?」


 「お別れ………」


 そうだ俺はユニをここに預けるためにここまで来たんだった。


 良かったこれで彼女は救われる………そうだ。


 彼女は幸せになる、俺は日常に戻る、間違いなく最善策だ。


 だが………


 やめろ、これ以上深入りしたら今度こそ命を落とすかもしれない、それに彼女の幸せはここで保護されることなんだから


 「剣次……ユニのわがまま聞いてくれる」


 「………おう」


 「ユニはパパとママに会いたい!、なによりユニ……剣次と離れたくない!」


 ……………せっかく人が自分を納得させようとしていたのに


 もう建前はいらない、俺は俺自身がやりたいようにやろう。


 その言葉が俺は一番聞きたかった、その言葉一つで俺は何度でも立ち上がれる。 


 たとえ今日のようなことになっても、たとえ目の前の剣士と今戦うことになっても。


 「おう! 一緒に戦おうユニ」


 「アタシらと戦おうってか、きっと勝てないぜ」


 不敵な笑みを讃えた女性は指を擦らせパチンと音を立てる。


 次の瞬間に獣のような耳を生やした女性が立っていた。 


 あの女性は桜坂千花の幻想銃だろう。


 「悪いことは言わんやめておけ」


 二人の放つ殺気はレイブンと同格、恐怖で足が痙攣でもしたのか小刻み震える。


 だが逃げはしない、彼女と共に歩むために。



 「ぷっ……あっはっははは、青臭ぇ!」 



 さっきまで殺意全開だった不敵な笑みの女性、今は笑みどころか大爆笑している。


 全く状況が理解できない。


 「千花よ、お主妾より性格が悪いぞ、これではどちらが女狐がわからんではないか」


 「ごめん、ごめん、試すような真似して、でも仕方ないよね、幻想銃を持つこと銃士マスケティアになるには君の勇気を見ないと行けなかったから」


 「もしかして今の演技?」


 「そうだな、半分は演技もう半分はマジだったよ」


 えっーと俺は試されていたのか?


 「さて剣次くんも銃士マスケティアになってくれるよね」


 「ふぇ?」 


 「さて剣次くんも銃士マスケティアになってくれるよね」


 「ふぇ?」


 「よし決定だね、ご両親にこれ渡しておいてね」


 そう言って封筒を一つ俺に渡すと桜坂千花は部屋を後にした。


 ーーーーー


 「ごめんね剣次、ユニのわがままに付き合わせて」


 俺の横に座る白髪の少女が消えそうな声でしゃべる。


 その表情はとても暗かった。


 「どうしたのユニ、そんなに落ち込んじゃって」


 「ユニは剣次を戦いに巻き込んだ、ユニは剣次の未来を奪っちゃった」 


 「未来を奪ったってそんな大層なことじゃないさ、俺からすれば就職先が決まってラッキーって思ってるんだぜ、それにさっき言ったろ、『ユニと離れたくない』って」 


 さっきの封筒の中を少し目を通した。


 中にはプリントが二枚程入っていて、内容を回摘かいつまむと、『高校卒業後にカフェ秘密基地に就職する』、『卒業するまではバイトとで働いてもらう』と言った内容だった。


 流石におおっぴらに銃士隊マスケティアーズになるとは書いていなかった。


 「だって………うっ………」


 「泣くなよ、それともやっぱ俺は嫌?」


 彼女の震える肩を抱き寄せる。


 ……やべぇ行きおいで行動してるが何やってんだ俺!


 しかしここでビビるわけにはいかねぇ、頑張れ俺。


 「嫌なわけ……ないじゃん」


 ユニも俺の背中に手を回ししっかりと掴む。


 「それにねもう一つ剣次に話しておかないといけないことがあるの」


 「もうどんな秘密を暴露されても平気だよ」


 「ユニねユニコーンの子供なの、劣化ユニコーンなの」


 「あのカラス男も同じこと言ってたよな、どう言うことなんだ?」


 「うん、えっとねユニ、アネモネは幻想銃ユニコーンの子供なの、それではユニはママの能力の一部しか受け継いでないの、だがらユニは劣化幻想銃なの」


 「これからもよろしくな、相棒」


 「ちょっと、剣次ユニの話し聞いてた?、ユニは劣化幻想銃なんだよ?」


 「別に構わない、俺は凄い力が欲しいわけじゃないし、大切なのはユニ一緒にいることだしな」


 「よろしくね、ユニの大切な人」


 彼女は再度俺の体に手を回す、トクン、トクン彼女の小さな鼓動とぽかぽかと温かい体温が心地良い。


 こうして俺は銃士マスケティアになった、頑張らないとな。


 「ユニをお父さんとお母さんに必ず会わせてみせるから」


「剣次は本当に優しいね」




 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ユニコーンキッドと二刀のマスケティア 六月(ろくがつ) @6a6b6c

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ