第四章・ニ「銀の剣と不屈の精神」

『剣次、右に飛んで、そこから突きだよ!』


 ユニの指示に従い突きを繰り出す剣次。


 剣次は今までの人生で本物の剣を持ったことなど一度もない、せいぜい子供の頃木の

枝でチャンバラごっこをしたくらいだ。


 その剣次がレイブンと互角に戦える理由それは……


 『剣次バッグ、大きく振り下ろして』


 「了解!」


 ユニが指示し、それに従い剣次が戦う、二人三脚で戦っていたからだ。


 『剣次、怪我は大丈夫、あっ攻撃が来る右に飛んで!』


 剣次は右に飛び、剣を振るうもレイブンには当たらない。


 「傷は痛むさ、だからこそ早く決着をつけよう」


 「『影の檻シャドープリズン』」


 剣次とユニを影の球体が包み込む、しかし剣次の放つ一太刀で真っ二つにし脱出。


 「なかなかに厄介なことになって来たね、影の檻はおとり、『黒の槍雨シャドーレイ』」


 影の檻から脱出した二人、だが危機はまだ去っていなかった。


 二人の前に立つレイブンその影が肥大化し、その形は黒い槍となり中を舞い剣次達を襲う。


 「なんて数だ、ユニどうしたらいい、教えてくれ」


 『とにかく走って、全力で!』


 影の空間を走り周り槍の雨から逃げる。


 剣次が走った後には槍が刺さり剣山のようになっていた。


 「おいおいおい、ヤバいぞ!」


 「槍に気を取られ過ぎだ、剣次君」


 剣次が走った先にはレイブンが待ち構えていた。


 数秒後、二つの剣が火花を散らしぶつかり合う。


 「そう言や、なんでユニを狙うのさ、教えやがれカラス野郎」


 「何故狙うか?、それは簡単、彼女は唯一の人と幻想銃の子だからさ」


 「人と幻想銃の子、てか幻想銃って子供産めるのか」


 「彼女がここにいるそれが一番の証拠だろ」


 レイブンは剣に力を入れ剣次を弾き飛ばし無数の影で追撃。


 数個は叩き落としたが残りの影が剣次を襲う。


 「それに私は彼女の本当の名を知っている、彼女が両親からもらった名をね」


 「それどう言うことだよ! 教えやがれ」


 「構わないよ、私に勝つことごできたらね」


 「それを聞いちゃ尚更負けられねぇ!」


 剣次は地を蹴り、いっきにレイブンに接近。


 そのまま斬り下ろすかと思わせ、横に飛び、一刀を叩き込む。


 刀がレイブンに当たると、その体を吹き飛ばし地面を転がる。


 『凄いよ剣次、自分の判断でフェイントをするなんて』


 「とっさだったからな………やべぇ傷が痛てぇ」


 ユニとの契約前に受けた傷が痛む剣次。


 膝を着こうととしたがそんな暇はなかった、目の前にはレイブンが立っていた。


 「今の一撃悪くなかった、それじゃこれはどうかな」


 レイブンの体が影の様に揺らめきだす、幻想銃『デュラハン』の能力だ。


 「お次は魔術攻撃といこう、残念だがユニコーン・セカンドその子には魔力を放つのが関の山だ、デュラハンのような特別な力はない」


 剣次の周りを漂う黒い影、その中からに鈍い銀色の刀身が飛び出し斬りつけられる。


 ブッン!、迫る剣を受け止めようと剣次も構える、しかし剣はすり抜け意味をなさない。


 剣次は咄嗟に横に飛び攻撃を回避する。


 「ユニこっちの攻撃が通らなくなってるけど、これって一体」


 先程まで剣次達の攻撃はデュラハンに効果があったが今は違っていた。


 『レイブンの影化が強すぎるんだよ、例えるなら家をまるごと包み込む炎をコップ一杯の水じゃ消せないでしょ、それと同じこと』


 「それならこっちも力も引き上げる、そうすればまた干渉できるってことか?」


 『当たりだよ剣次、でもそうなると剣次からの魔力供給の量を増やさないといけないの』


 「やってくれ! ここで出し惜しみして死ぬのはごめんだ」


 『わかった………行くよ剣次、うぉぉぉぉ!』


 ユニは剣次から更に魔力を吸収。


 その体を輝かせる、剣次は白銀の魔力をまとう。


 『剣次、少ししんどいかもしれないけど耐えてね』


 「全然……平気、そんじゃ反撃と行こうぜ!」


 剣次の剣が影に触れるとその刃は影化したレイブンを確かに捉える。


 「しっかり当ってる、ユニ行けそうだな」


 『次背後から来るよ、振り返って反撃』


 ユニの指示に従い剣次が動く、二人は再度せめぎ合う。


 「ユニコーンの指示があるとは言えここまでやるとはね、素直に称賛するよ」


 「だったらユニの本当の名前教えてとっとと帰れ!」


 剣次の体を限界を迎えていた。


 戦闘による恐怖、魔力の急激な減少、契約前に受けた傷、立っていることが既に奇跡のレベルだ。


 「不味いねデュラハンは私の魔力も底を尽きそうだ、あれで決めようか?」


 『了解しました、では失礼させて頂きます』


 デュラハンはレイブンから更に魔力を吸引する、黒い魔力を体から放出させる、幻想銃の奥義を放つつもりだ。


 「おいおいおい、ユニなんかアイツヤバそうだぞ、黒いオーラ放ってるし!」


 『不味いね、『奥義』を使う気だよ、あれをもらったらこの空間ごと消されちゃうよ』


 「奥義ってなによ、必殺技てきな物なのか」


 『必殺技‥‥確かにそうだね当ってる、こっちも使うよ、奥義には奥義を持って対抗する、今はそれが最善策だね』


 レイブンは地に突き立て魔力を影へと変えていく。


 影は無数の触手の様に伸びていく。


 数十本や数百本などでは数え切れない、ざっと見て数千、数万はある。


 「『暗夜の影剣ナイトメアナイト』」


 無数の影の触手が剣次達に向かって放たれる。


 「剣次走って、痛いかもしれないけど真っ直ぐ走って、レイブンの正面から奥義を放つよ」


 レイブンに正面から挑む剣次。


 放たれる影の触手、ユニの指示を受け、回避、迎撃を繰り返す。


 しかし全ての触手を打ち落とせるわけではない。


 仕留めそこなった影の触手が剣次の体をえぐる。


 目の前に迫る触手を斬り伏せ前へ進む。


 足元をすくおうとする触手をジャンプで回避、そして遂にレイブンの目の前まで来る。


 『行くよ剣次!これがユニの………いやユニと剣次の奥義』


 「『輝け白銀の一角シルビーユニコルノ』」


 銀色の魔力を帯びた剣から放たれる、その一撃はユニコーンの一撃を彷彿とさせる。


 「『いけぇぇぇぇ!!!!』」


 二人は影をくぐり抜けレイブンに奥義を叩き込む。


 レイブンの体に剣が触れた瞬間銀色の魔力が誘爆。


 当たりが光に包まれる。


 「やった……のか?」


 今にも飛びそうな意識を必死に繋ぎ止めユニに問いかける剣次。


 しかし現実は残酷だった。


 「危なかった全ての影を防御にを割かなかったら致命傷は避けられなかった」


 影で構築した盾が消えそこからレイブンが現れた。


 構える剣次を目に悠長にしゃべ。


 様子から底知れなない力量に改めて実感し剣次は絶望する。


 「そう身構えるなよ、今日の所は君達の勝ちで構わない、私の目的は達成されたからね」


 影の様に揺らめき消えようとするレイブンを剣次は呼び止める。


 「待てよユニの本当の名前を教えろ」


 剣次の言葉にはっとし、デュラハンの影化を解除する。


 「そうだ約束だったね、彼女の名前は『アネモネ』、彼女の両親が付けた名だ、アネモネの花のように髪が白いからだからだとさ」


 「ユニの本当の名前アネモネか、ねぇレイブンあなたはユニの両親のこと知ってるの?」


 「知っているとも、でも今回のサービスはここまで、それじゃ退散させてもらうよ」


 今度こそレイブンは影化し、剣次達の目の前から消える。


 レイブンがいなくなり真っ暗だった空間が消え去り、本来の町並みが見える。


 「やっと終わった、さて秘密………」


 バタン、精魂ともに力尽きた剣次は地面に倒れる。


 しかし剣次当人は自分が倒れていることに気がつかなかった。


 


 





 

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