春日瑠海が女優である意味
女優からアイドルへと転身した、春日瑠海。
たしかに、ありのままの春日瑠海……いや、真奈海を表現することには成功している。それは僕にだって、ちゃんと伝わっていた。
でも……どうして真奈海は、そこまでありのままの姿に拘ったのだろう?
女優春日瑠海は、本当に真奈海が目指した姿ではなかったのだろうか?
そもそもなぜ真奈海は、女優を休業する必要があったのだろうか?
茜みたいに、女優とアイドルの両方を続ければよかったんじゃないのか?
だって今の真奈美を見てたら、そんな疑問しか湧いてこないんだ……
「そんなの、ユーイチのせいに決まってるじゃん!」
「は!??」
が、真奈海から返ってきた回答は、あまりにも素っ頓狂で斜め上を行く、そんな回答だった。
「ユーイチが全部悪いんだから!!」
「ちょっと待て。なんでそれが僕のせいになるんだ!?」
「そんなの……少しは自分で考えなさいよ?」
「おい待てって。そんな投げやりにされても僕には一ミリもわかんねーよ!!」
あまりにも無茶苦茶な話だ。真奈海は自分の人生、いや、日本全国から注目されている女優の人生を、どうして僕なんかに委ねられなければならないのだろう。真奈海は僕をからかっているのだろうか? それにしたってその冗談は、正直あまりにもきつすぎる……。
「じゃ~ユーイチは、わたしの演技と茜の演技、どっちがいいと思ってるの?」
真奈海はきっと僕を睨みつけると、そんな質問を投げてくる。
「そんなの、真奈海の演技の方に決まってるじゃないか!」
「でもユーイチは、茜が主演のあのドラマ、毎週楽しそうに観てるじゃん!」
「いや待てって。そんなの……それとこれとは関係ないだろ?」
あのドラマというのは、恐らく先程観た映画のテレビドラマ版のこと。元々はそちらも真奈海が主演という話だったらしいが、真奈海の女優休業宣言があったせいで、代役として主演は茜が演じている。
確かに茜の演技力もなかなかのものだ。共演しているベテラン役者と比較しても、全く見劣りすることなく、堂々とした演技を魅せている。『ポスト春日瑠海』と呼ばれる所以も、十分納得できるほどには。
ただし、そこはあくまで『ポスト春日瑠海』であって、現在進行形でいうと春日瑠海の代役としては不十分と言わざるを得ない。それはどちらかというと、茜のせいでないこともなんとなくわかっていた。正しくは、女優春日瑠海が何もかもを超越しすぎているということ。
春日瑠海の本当の意味での代役は、数年は出てこないかもしれない。
蓼科茜がなんだというのだろう。
『ポスト春日瑠海』ってどういう意味だ?
だって春日瑠海は、誰にも超えることのできない、たった一人の女優じゃないか。
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