第70話 パーティーなの。

 城塞都市セットに着いたレイニィ達を待っていたのは、領主による歓迎会であった。

 一旦部屋に案内され、そこに荷物を置いたレイニィはホールに案内された。

 そこには立食によるパーティーの用意がされていた。


「ようこそ城塞都市セットに、我が領主のヘイズ キャッスル セットだ。僅かばかりではあるが、ゆっくり楽しんでくれ」


 ヘイズはガタイのいい大男であった。


「わざわざ、こんな豪華な歓迎会で出迎えていただき感謝申し上げます。国主の娘のサニィ キャピタル シャインですわ」

「港町ライズのレイニィ ポート ライズなの。歓迎に感謝なの」


「サニィ嬢にレイニィ嬢、失礼だがおいくつかな?」

「私は八歳になりますわ」

「あたしは六歳になったの」


「そうか。我の娘も今年五歳になってな。よかったら仲良くしてもらえるとありがたい。あーと。あそこにいるのが娘だ。ウォーミィ。ちょっと来てくれ」


 呼ばれてやって来たのは、少し肌の浅黒い母娘であった。


「あなた、大声で人を呼ぶなんて、こんな会場ではみっともないですよ」

「お前は呼んでないんだがな。まあいい。妻のリリスだ。それで、こっちが娘のウォーミィだ」


「リリスです。主人がガサツ者ですみませんね。ほら、ウォーミィ自己紹介なさい」

「ウォーミィです」

「サニィですわ」

「レイニィなの」


「ガサツ者は酷いではないか。まあでもそうだな。後は子供達同士で仲良くしてくれ。ガサツ者は引っ込むとしよう。お前もいくぞ」

「それでは、サニィさん。レイニィさん。ウォーミィのことよろしくね」

「え!お父さま、お母さま」


 子供達三人を残して、大人の二人は他の人の所に行ってしまった。


「ウォーミィもリリス様も肌が黒いのね?」

「健康的で魅力的なの」

「ありがとうございます。お母さまは砂漠の民だったんです。砂漠の民は肌が浅黒いんですよ」


「あれ、砂漠の民とは敵対しているのではないの?」

「砂漠の民といっても、一つではないんです。様々な部族がいて、友好的な部族もいれば、敵対的な部族もいるんです。お母さまは友好的な部族の族長の娘で、交渉に来たお父さまが一目惚れしたそうです」

「なるほど、砂漠の民にも色々いるなんて知らなかったの」


「ウォーミィは五歳になったところのなのよね。職(ジョブ)はもう授かったのかしら?

 私はね。将来、女王様になりたいの。レイニィは大魔術師だって。あなたは何になりたいの?」

「私はお父さまの様な、守護者(ガーディアン)になりたいです」


「そうなの。守護者か。ならウォーミィを護衛として私が雇ってあげる。臣下第二号よ。私のことはサニィお姉様と呼んでいいわよ」

「臣下? サニィお姉様?」


「わたしが臣下第一号なの」

「レイニィお姉様が?」


「わたしは別にお姉様と付けなくていいの」

「そうですか?」


「ところでウォーミィ、ライチョウの巣ってどこにあるかしら?」

「ライチョウの巣ですか。ライチョウでしたら北の絶壁の上にいるらしいですから、巣もそこにあると思いますが――」


「そこへ行けるかしら?」

「それは無理です。あの絶壁は大人でも登るのは難しいですから」


「そうなの……」


 サニィはそのまま考え込んでしまった。


「サニィお姉様はライチョウの巣が見たいの?」

「ええ、まあ――」


「だったら、私たち三人でパーティーを組んで行くのがいいの」

「パーティー? 三人でパーティーをするの?」


「今やっているパーティーではなくて、一緒に冒険する仲間のことをパーティーと呼ぶの」

「冒険をする仲間ですか?」


「相変わらずレイニィは博識ね」

「それで、私たち三人でパーティーを組めば、剣を習っているサニィお姉様が前衛の攻撃役。守護者のウォーミィさんが守りの盾役。そして、わたしが魔法を使った遠距離攻撃と支援役で、丁度バランスがいいの」


「なるほど、それはいいわね。それで冒険に行くのね!」

「守りの盾役ですか……」


 今度はウォーミィが考え込んでしまった。


「それでは明日、このパーティーでライチョウの巣を見つけに行きましょう」

「でも、絶壁を登るのは無理だと思いますよ」

「それについては、わたしに考えがあるの」


 レイニィは不敵な笑みを浮かべるのであった。


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