第71話 絶壁を登るの。
城塞都市セットに着いた翌日、レイニィは、サニィとウォーミィとの三人でパーティーを組み、ライチョウが棲むという絶壁に向かって森の中を進んでいた。
勿論、パーティーとしては三人だが、密かに護衛が四人、影からいつでも守れる態勢にいた。
そのことをレイニィは探索魔法で知っていたが、あえて二人に知らせることはなかった。
森の中では、道案内であることからも、盾役のウォーミィが先頭。続いて、攻撃役のサニィ。その後ろに支援役のレイニィという順で移動していた。
「二人とも気を付けて、右前方からイノシシが来るの」
「右前方ですか!」
「よし来るなら来なさい!」
レイニィの指示に、二人が身構える。
「先ずは支援攻撃、いくの!」
レイニィが土魔法で、石礫をイノシシに向け打ち出した。
高速で射出した石礫はイノシシの眉間を貫いた。
「命中したの。行ってみるの」
「ちょっと待ちなさい。さっきからそればっかりじゃない!」
「え?」
「え、じゃありませんわよ。さっきからずっと、私たちより後ろにいるレイニィが獲物を先に見つけ、私たちが対峙する前に、全部一撃で仕留めているではないですか。私たちの出番がありませんわ」
「でも、わたしの役割は後方からの支援なの」
「支援が強すぎですわ」
「レイニィさんは本当にお強いのですね。その上、倒した獲物も全部収納してしまうなんて。大人でもそうはいきませんよ」
サニィは、ご機嫌斜め。ウォーミィは、ただただ感心していた。
その後はレイニィも空気を読んで、手加減して攻撃した。一撃で倒すことはせず、急所は避けて攻撃し、それでいて相手を無力化していった。
ある意味、一撃で倒すよりも難しかった。
でも、その甲斐あって、サニィの機嫌も戻ってきた。
サニィの機嫌が完全に戻った頃、レイニィ達は絶壁の下に辿り着いた。
「凄いわね。今にもこちらに倒れてきそうですわ。これは流石に登れそうにないですわ」
サニィは絶壁を見上げながら感嘆の声をあげた。
「レイニィさん。それで、どうやってここを登るのですか?」
「これを使うの!」
レイニィは神の封筒から熱気球を取り出した。
「これは! これが、皆さんが乗ってきた熱気球というものですか?」
「そうなの!」
「そうね。これを使えばどんな絶壁でも問題ないわね」
これを見て焦ったのは、密かに着いてきていたアイス達護衛である。
熱気球で飛ばれてしまっては、後を追いようがない。
アイス達でもあの絶壁を登るのは至難の技だ。
慌てて飛び出してレイニィに声をかける。
「お待ち下さい、お嬢様!」
「あら、アイス、偶然なの。あなた達も狩りに来てたの?」
レイニィはアイスに目配せする。
「え? ああー。そうです! 狩りに来てたのですが、たまたま、近くにいたようですね。気球が見えたので声を掛けたんです。もし気球に乗るようなら私たちも同乗させてください。こちらの二人が是非とも乗って見たいそうです。な。そうだろう」
アイスはウォーミィ付きの護衛の二人に話を振る。
「別に俺は――、あいて!」
「そうなんです。是非乗ってみたいんです。ご同乗させてください」
護衛の一人が空気を読めないようだ。もう一人の護衛から脇腹に拳を入れられている。
サニィ付の護衛が苦笑いを浮かべている。
「構わないの。ね、サニィお姉様」
「ええ、構いませんわ」
「皆んなで絶壁の上まで行くの!」
レイニィ達七人は、熱気球で絶壁の上へ飛んで行ったのだった。
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