第21話 魔法の練習をするの。
翌日から魔法の練習が始まった。
小さな的を沢山並べ、狙った的に魔法を当てる訓練だ。
丁度、射的の様な感じだ。
魔力が強過ぎたり、集束が上手くいかないと他の的まで壊してしまい、狙った的だけに当てるのはなかなか難しい。
魔力制御を鍛えるためには良い訓練だ。
そんな訓練も三日も続ければ、殆ど狙った的だけに当てられるようになり、その後は、段々と的との距離を離していった。一週間後には百メートル離れた場所から拳大の的を射抜けるようになった。
その正確さにエルダも舌を巻いていた。
次の週には四属性魔法の勉強に入った。実技の前にまずは理論を習う。
「魔力というものは何処にでもあるもので、魔術が使えない人にも、この何もないような空間にも魔力はある。
ただ、その魔力を引き出せるかは、その人の能力によって違ってくる。
レイニィはその魔力を引き出す能力は非常に優れている。
後は、それを上手く利用するだけだ。
今までの訓練で、魔力の制御はかなり上達した。
次に目指すのは、魔力による自然界への干渉だ。
魔力を使って、火を起こしたり、水を出したり、風を吹かしたり、土を動かしたりする。
この四つは全て違う事に感じるかもしれないが、その本質は全て同じだ。
魔力によって物を動かしているだけだ。
火を起こすのに物を動かすというのはイメージしづらいかもしれないが、火を起こすとき、物を擦り合わせるだろう。あれのイメージだ。
水を出すのもイメージしづらいな。これはこの辺にある湿り気を集めるイメージだ。
風を吹かすのは空気を動かす事だ。空気というとなにもない様に感じるかもしれないが、何もないわけではないのだ、空気があるのだ。空気というものがあるイメージが大事だ。
土魔法は動かすものがイメージしやすいが、重いだけに、動かすのが大変だ。
そもそも、魔力で物が動くとイメージを持つことが難しい。
まあ、用は、魔術というのはイメージ次第という事だ」
「あ、やっぱりイメージ次第なの」
レイニィは前世の記憶にあった事を思い出す。
「そうだぞ。魔術はイメージが大切だ」
「呪文とかないの」
「呪文か。呪文を唱えた方がイメージしやすい場合もある。その辺は人それぞれだな」
「魔法陣とかはどうなの」
「それは魔道具に使われている。それを研究して、魔道具で魔法を使うのが魔道士だな。
魔道具は魔石から魔力を引き出して使用する。
魔石は、魔力を蓄える性質があり。蓄えられた魔力は、魔法陣などを使って引き出すことができる。
こらが魔石だ」
エルダは魔石をいくつか取り出す。
「化物になった獣の体の中や、特定の地層、あー。土の中のことだ」
「先生、地層ならわかるから大丈夫なの」
「そうか。まあ、そういった場所から採れる。
地層から採れた物は魔鉱石ともいう。
そういえば、クィーンアントにも魔石があっただろ。どうした」
「お父さまが、記念に取って置くって金庫にしまってたの」
「クィーンアントの魔石は透明だっただろ」
「うん。身体も透明だったし、魔石も透明だったの」
「それは少し違うな。アントの身体が透明だったのと、魔石が透明だったのは別問題だ。
この様に透明な魔石は魔力が沢山詰まっている。逆にこっちの黒いのは魔力が空っぽだ。
魔石は、放って置くと近くにある魔力を吸収して貯めていく。
この黒い魔石が透明になるまでには、普通なら一年以上かかる。
だが、この様に透明な魔石とくっ付けると、こうなる」
黒い魔石がいくらか透明になった。代わりに、透明な魔石がいくらか燻んでしまった。
「おお、色が変わったの。魔力が移ったの?」
「その通り。最終的には魔力の量が同じになり、両方燻んだ魔石となる。
そして、魔力が扱える魔術師なら、魔石に魔力を強制的に注ぎ込むことが出来る。
こんな感じだ」
エルダは魔石を手に持つと、魔石に魔力を流し込む。黒い魔石はみるみる透明になっていく。
「レイニィもやってみろ」
エルダはレイニィにも黒い魔石を渡す。
「はい。やってみるの!」
レイニィもエルダを見倣って魔石に魔力を込める。
パリン! サラサラサラ。
レイニィの持っていた魔石が砕けて、光の砂粒となる。
「あ、馬鹿。魔力の込め過ぎだ!」
「すみませんなの」
「まあいい。これはこれで利用価値がある」
エルダは散らばった光の砂粒を丁寧に集めて袋に入れていく。
「はい、もう一度。今度は力加減を間違えるなよ」
「はい、気を付けるの」
レイニィは再び魔石を受け取ると、慎重に魔力を込めた。
「そおっと、そおっと……。できたの」
「よし。いい感じだ。今度は逆に魔力を引き出してみよう」
「はい。引き出すの」
「やり過ぎて黒い砂粒にするなよ」
エルダはレイニィに注意したが、時既に遅かった。
「先生。やる前に注意して欲しいの」
魔石は黒い砂粒になっていた。
エルダは黙って、黒い砂粒を集めて、先程とは別の袋に入れた。
エルダは教える気を挫かれ、その日の魔術の勉強はそこで終わりとなった。
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