第6話 封筒の中身なの。
「それではこれで終わります。ご家族のところに戻って結構ですよ」
牧師に言われて、レイニィは神から授かった封筒を持ち、家族のところに戻る。
先ほどの便箋と紙の綴りは、不思議なことに、ちゃんと封筒に収まった。
封筒も不思議であるが、便箋に書かれた文字も不思議である。
こちらの世界の文字を習っていないレイニィでも読むことができた。
これは前世の記憶が戻ったからという訳ではなく、勿論、日本語でもない。
牧師によると誰でも読めるらしい。
神の文字だと言っていた。
この封筒も神の封筒なのだろう。
本当にファンタジーな世界である。
前世の記憶が戻ったレイニィは、つくづく実感していたのであった。
「ゲイル様、少しよろしいですか」
レイニィと入れ違いに、牧師は領主で父親のゲイルを呼んだ。
先ほどの神の祝福について話すのだろう。
レイニィが家族の元に戻ると、待ち構えていた母親のウインディから、神の祝福について質問攻めだ。
レイニィが光り輝いていたのだ。
家族たちのいた場所からも何かあったことは一目瞭然だった。
レイニィはウインディの質問を、のらりくらりとかわしていく。
突然目覚めた前世の記憶が、レイニィに慎重な行動をとらせる結果となっていた。
暫くすると父親のゲイルが戻って来た。
それでやっとウインディの質問攻撃が止んだ。
これで一息つけるとレイニィが思っていると、ゲイルが尋ねてきた。
「ところで、結局どんなジョブをもらったのかな。希望のものがもらえたのかい?」
「うーん。希望のものとは違ったの。でも、これから頑張れば、希望のジョブをもらえるかもしれないんだよね?」
「そうだな。レイニィの頑張り次第だな」
「うん、がんばるの!」
レイニィは、喋り方が子供っぽくなるように、注意しながら受け答えを行なっていた。
「それで、どんなジョブだったんだい?」
「うーん。これ」
レイニィは、封筒から一枚目の便箋を取り出し、ゲイルに差し出した。
口で話すより見せてしまった方が手っ取り早いだろう。
差し出された便箋をゲイルが受け取り確認する。
名前:レイニィ ポート ライズ
職(ジョブ):大魔術師(仮)
賞罰:なし
「『魔術師』。いや、『大魔術師』か。――え? 『大魔術師』?!」
ゲイルが便箋を何度も見て確かめている。
(あれ、大魔術師は不味かっただろうか。加護のことばかり気にしていて、こっちまで気が回らなかった)
「あなた、『大魔術師』といったら上級職じゃない。仮職(プレジョブ)でも上級職が授かることがあるの?」
「いや、聞いたことがない――」
(あー。やらかしてしまったかも。でもこれは、加護と違って、いつまでも秘密にはできないよね?)
便箋の一枚目は身分証明書だ。いつまでも隠し続けるのは不可能だ。
「レイニィ。試練はどんな内容だった?」
ゲイルの問いかけに、既に諦めたレイニィは、紙の綴りを封筒から取り出してゲイルに渡した。
「これなの!」
「これ全部か――」
「……」
そのまま、そこにいた者達全員が固まってしまった。
最初に我に返ったのは侍女のスノウィだった。
「レイニィお嬢様、私がお手伝いしますから大丈夫です! 必ず試練を達成しましょう」
続いて両親も意識を取り戻す。
「そうだな、家族全員でレイニィを助けよう」
「そうよ。だから負けちゃ駄目よ。でも、無理はしないでね」
ウインディはレイニィを抱き寄せた。
前世の記憶が戻ったレイニィには、少し恥ずかしかった。
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