第11話 リーン・フォン・カグヤ「後編」

私がなぜここ、魔法都市オリオンに引越しして、立花学園へ入学したか……。それは、私の故郷のブールニア王国の抱えてる問題を除去したかったから。


「……。ここで勝ち上がって優勝しても、次は本戦がある。道のりは長いなぁ」


と、一人202号室でため息を吐いていた。その抱えてる問題というのは、現在ブールニア王国はとある組織に支配されている形をとっているのだ。そのおかげか、経済やいろんなところで発展途上国になりつつある。しかし、それと反転して、発展途上国になるために莫大な国家資産を費やしたため、そのせいであらゆる事業が行えなくなったり、会社が新しく出来なくなったり、商売が難しくなってしまうなどが挙げられる。


そう、つまり私の願いは国家資産の回復と、組織からの支配の解放。この二つだ。1回の魔法大戦で一人ひとつしか願いを叶えられないため、願わくば次の魔法大戦の、1対1の真剣勝負であるというのに参加しなければならない。


「あと2年で上手くいけるかな……」


すると、同じく3回戦へ進出したルームメイトの山野くんが帰ってきた。


「ただいまぁ……」


「お、おかえり」


私はこの場を借りて、一番気になっていたことを聞く。


「ねぇ、山野くんは、どうして勝ちたいの?どんな願いがあるの?」


山野くんは驚いた表情をしていたが、すぐに表情を戻して。


「うーん。理由、か……。小さい頃に疎遠になり、ついには俺を家に置いていった両親を探すことかな。成長した自分を見て欲しいというか……」


「じゃあ、ウィリアムには参加しないの?」


「まあな」


山野くんの理由が意外だった。両親と別れ離れになっていたというのがホントなら、私はとんでもないことを聞いてしまった。


「あ、ご、ごめんね……。嫌なこと聞いて」


「いつものカグヤさんじゃないな。頭でもぶったか?」


「な……。ぶってません!」


「ならいいけどな」


たしかに、なんか付き合い初めて間もないカップルのような会話になっていたかもしれない。私は、彼に気を寄せているのかもしれない……。


「じゃあ、俺はBブロック3回戦の試合があるから、もう行くわ。応援に来てくれてもいいんだぜ」


「い、行くわけないじゃない!?」


しかし、私は彼の戦い方に興味を持っていたので、観戦してみることにする。


「やっと、行ったかな……」


私がどうして、魔力を持ってるのか気づいたというと、ここに来る前、ブールニア王国にて、奇怪な事件が起きた。それは、謎の大量殺人である。


死因が至って不明の、突如にして数千人の死者が出た。一度にだ。これは稀に見るウイルス、ハンスの大量発生によるものらしい。ハンスというのは、日本で言うところのインフルエンザの上位互換である。これにかかった人は、呆気なく二時間足らずで死んで行く。この対策方法は、魔法を使った治癒。ただ、それだけ。


そして、ハンスの耐性を持つ者がいる。そう、私のような魔力を持った魔法使いだ。魔法使いはハンスにかかっても、体に入ってきたハンスをオートで除去することができるらしい。それを応用したのが薬の代用である治癒魔法だ。


「その時、私は陽性だった……。ハンスにかかった。でも、二時間経っても私は死ななかった。その時に、私は魔法使いだと気づいた……」


自分の過去を振り返っているうちにその心情を零す。


「はぁ……。どうして、私は死ななかったの……」


私は自分の机にうつ伏せになり、深い眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る