第8話 剛猛な騎士

一回戦は明日の正午。それまでになんとか魔剣をもっと使いこなせるようにしないと。


そう考えた俺は、一人近くの木々に囲まれたところで剣を振っていた。


「剛猛な騎士の戦闘能力は並以上。俺よりも強い。だからこそ、鍛えないといけない。明日までに無事に完成するといいが」


「なーに、一人でブツブツ言ってんのよ」


後ろから突然話しかけられたので思わず魔剣を落としてしまった。


「いきなり話かけてくる……な。!?」


俺はその話しかけてきた子をみて驚いた。その子はここ、オリオンに来る前に日本で喧嘩をして別れた人物だった。別に付き合っていたわけでもなく、普通に仲違いしただけである。


「ちっ。なんでお前がここに」


「あなたに会いに来たのよ。今日から本格的な試合が始まるっていうから」


「ったく。誰から聞いたんだよ……」


彼女の突然の登場のせいで修行を取りやめることにした。


「そういうことだから。明日の試合、楽しみにしてるからね」


「おう」


今日はAブロックの一回戦がスタートしている。俺のブロックはBブロック。明日一回戦がはじまる。


学内トーナメントはAブロック、Bブロック、Cブロック、Dブロック、Eブロックの五つのブロックに別れて1位を競うトーナメントだ。代表5名を決めるのに効率がいいやり方なのである。



「ふぅ……。やっとどっか行ったか。さてと、続きをやりますか。山野流奥義、鶴の舞!」


鶴の舞とは、魔剣を踊るように振り、敵を華蓮に斬り刻む六連撃だ。そこに魔剣の特徴を生かした更なる工夫をしようとも考えている。


「武装解除っと」


修行を終え、魔剣をイメージの力で隠す。このシステムは、武器やら防具やらを装備していると、一般の人の目に移るからという理由で作られたらしい。魔装展開で武具を出現させ、(俺の場合は魔剣展開)武装解除で消す。


「Aブロックの試合、Bブロックに関係あるわけじゃないし、今日はこの辺にして明日に備えて休むとしよう」



俺は202号室に戻り、ぐうたら過ごした。


そして、いよいよBブロックの一回戦となった。どの試合も白熱な戦いだった。俺の番にようやくなり、俺は試合会場の控え室へと行く。


「頑張りなさいよ」


「カグヤさん、勝利おめでとうございます。俺も負けてられませんから。カグヤと同じ土俵にたつために」


「そうね、楽しみにしてる」


カグヤさんとブロックが別れてしまった俺は、同じ土俵にたつという目標にシフトした。


「ではいよいよ!一回戦で最も注目されているこの試合!2年のCランクながら、学園祭内83位!剛猛な騎士の肩書きを持つジョン・アレス選手ー!そして対するは、1年の学年ランキング2位、さらに一年生ながらBランクという異常な強さを誇り、立花学園唯一の魔剣使い!山野大知選手ー!」


「この試合、ほんとにすごい試合になりそうですね」


「解説者は今日もクゥウウル!試合があと5分ではじまります!」


「いよいよか。こんな熱い会場の中、試合をまともにできるだろうか……。心配だけど、緊張してる暇はない。やつを、倒す」


「あいつに負けるわけにはいかねぇ。先輩という立場が無くなってしまうからな。ここで勝って、モチベの糧とさせてもらおう」


「あと10秒!試合、スタート!」


「前日は固い握手を交わしたが、今日は俺が勝ち、良い試合だったという握手にしておきたい」


「それは、こっちのセリフだ!こっちからいかせてもらおう!魔剣展開!」


「きたー!あれが噂の火の魔剣!」


「すごいですねー」


「俺も行くぞ。魔装展開」


なるほど、騎士と言われる理由が理解できた。やつの魔装が、頑丈そうな鎧に、コテ、ブーツ、兜、そして機械馬というまさに騎士の装備だからか。


「全力で行くぞぉぉ!」


「なーんと!先に仕掛けたのはジョン・アレス選手ー!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る