第2話 特訓授業①

「えっと……。カグヤさん?まだ怒ってます?」


「起こってません」


「絶対怒ってるって」


俺にカグヤさんが下着姿を見られたことをまだ根に持ってるらしい。このあと、ここに入学して初めての授業が行われる。


授業は全て特訓形式らしい。これは授業といえるのだろうか……。


俺のクラスは1―Aだ。そして彼女も同じクラスらしいので、一緒に行こうと勇気を振り絞って誘おうと試みるが、何度も断られる始末だ。まあ、この状況は一緒に向かってるのと代わりはないのだが。


この状況というのは、俺がカグヤさんの後ろのあとをつけて歩いているのだ。カグヤさんが逃げるように早歩きで行くので、歩を合わせるのがキツイ。


「もう!いい加減にしなさい!これ以上やめないと言うのであれば、私と勝負なさい」


カグヤさんは後ろにいる俺にいきなり振り向いたと思ったらビシッと指を指してそう言ってきた。その一言があまりにも過激だったのか、周りにいた移動中の生徒たちがザワザワしはじめる。


「いや、あんまり揉め事は起こしたくないんだけどなぁ……。わかりました。一緒に行くのはやめます」


「ふん。素直でよろしい。同じクラスだからついてくるのは仕方ないわ。けど、一緒に行くのは嫌」


「う、うい〜す」


適当な返事をしとく。これ以上揉め事を起こすわけにはいかない。自分のためにも。


「お、全員いるわねぇ〜。珍しいこともあるものね。ここにくる1年生は毎年一人、二人はサボるものなんだよねぇ〜。では、これより特訓授業を開始します」


「ついにはじまるのかぁ。沙耶さや先生の授業が。あの人の授業、一度は受けてみたくてここへ入学したんだよな」


「そんなに有名な人なのか?沙耶先生」


隣の席の内田に尋ねる。実際、俺はこの女の先生の噂を聞いたことはない。すると内田は、とんでもないと言わんばかりの表情をする。


「お前、沙耶先生を知らないのか!?めっちゃ強いって評判なんだぜ。なんにせよ、沙耶先生の教え子の中から一人は必ず、魔法大戦マジックグランプリで結構勝ち続けるんだぜ」


「その、マジックグランプリってのはなんだ?」


内田に教えてもらおうとしたが、話の対象にされていた沙耶先生から止められる。


「はいはい、静に〜。じゃ、知らない人もいるみたいだから自己紹介の前に、マジックグランプリについて説明してくよー」


全員賛成の意を込めて「はーい」と返事をする。まるで小学校だ。普通、「はい」じゃないのか。それはどうでもいいのだが、耳を傾けておく。


「マジックグランプリというのは、この魔法都市にある六つの学園、『ジャリオス学園』『ウーノ学園』『ザ・ガーネロイド学園』『三星学園』『サバムス学園』そして、我が校『立花学園』です。この六つの学園がもっとも強き5人を代表として選出し、戦わせ、勝ち抜いた代表5名の願いを叶えてあげるのがこの、マジックグランプリです。ちなみに、一人でも負けたとしても、残りの代表が勝ち残ったら全員叶えて貰えます。わかりましたかぁ〜?」


俺は、願いを叶えるというところに注目している。では、ここで代表5名のうちに入り、マジックグランプリに出場して五つの学園を打ち倒せば、両親を見つけ出せるということなのか。


「先生〜。マジックグランプリに出る5人って、どうやって決めるんすか〜?」


眼鏡っ娘が先生に尋ねる。偏見で申し訳ないが、弱そうだなと思ってしまった。


「そうですねぇ。この学園内で、魔法を使ったバトルをしてもらいます。その中で一度も負けずに勝ち残った5名が代表の座につけます。もし、1回でも敗れればチャンスはないと、思ってくださいねぇ」


「ありがとうございます」


なるほど、勝ち抜きバトルってわけか。俺は負ける自信などはなからないさ。邪魔するやつは全員俺の日本刀で斬りつける。まてよ?先生さっき、魔法を使うって言ってなかったか?だとしたら……。


「先生。俺からも質問いいですか?返事を待たずにすみません。俺が使うのは魔法の概念がない日本刀のみしかありません。魔装なんて持ってないです。ってことは、俺は出場出来ないんですか?」


すると、沙耶先生は笑顔で答えてくれた。


「素晴らしい質問ありがとねぇ。そうねぇ。あなたに、特別なってわけでもないけど。魔装と類は同じ武器を渡すねぇ。あとで、生徒会室に来てちょうだい〜」


「了解しました」


周りからはやはり、「あいつ、騒動をもっと荒くしたくせに強いのもらおうとしてんじゃね」とか、「あいつだけずりぃ」などと、批判の声をコソコソするやつらがいた。


「どーでもいいでしょ。どんなやつが、どんな武器を持ったって。私たちは、私たちの全力を尽くすだけよ。努力してるだろうけど、君たちみたいにコソコソ相手の陰口を言うやつは、陰口の対象には敵わないわよ」


カグヤさんがフォローしてくれた。なぜかはわからないけど。おそらく、ルームメイトの悪い噂が広まるのがごめんだったのだろう。


席的には、カグヤさんとは7人ぐらい離れてる。だから、ありがとうをこの場では言えないため、黙っておくことにする。それが一番いいと思ったのだ。


「そろそろいい〜?それじゃ、武道館へレッツゴー」


みんな一斉に席から立って、武道館へダッシュする。そんなに戦いたかったのかと、思わせる程に。俺は日本刀での訓練はまずいのではと思ったので、先生に聞いてみる。


「あの、その武器って今でもいいですか?」


「ええ。もちろんいいわよぉ」


そして、カグヤさんはそんなに急いでなかったらしく、まだこの場にいたため、カグヤさんの席へ向かい、カグヤさんへ頭を下げる。


「あの、先程はありがとうございました。俺では解決できないことだったので、ほんとに助かりました。俺に語彙力がないだけなんですけどね。部屋に戻ったら言おうとしたんだけど、今しかないと思いまして」


すると、カグヤさんは頬を赤くしてこう言った。


「べ、別にあんたのためじゃないわよ。ただ、ルームメイトの悪い噂が広まるのが私にとって不都合だっただけのことよ」


「そ、そうか」


可愛いなぁとこのときおもった。内田とも別れて、俺は先生と一緒に武器を取りに行った。

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