第5話 なみだせん
それはこんな風に読めた。
涙線管理局
「知らない方にはよく間違われるんですがね、一応、断わっておきますと、最初の二文字は、「なみだせん」と読むんです。「るいせん」じゃなくって「なみだせん」ね。それから漢字も間違っちゃいません。ええ、私は学校の成績はいつも良かった方で、漢字の試験はいつも満点だった」
「先生がね、よく私の頭をなでてほめてくれたもんだ。「あなたは将来、国文学者になるのかしら」ってね。それが今はしがないウェイターをやっている。ちょっと、すみません」
そう言うとウェイターは、ポケットから大きなハンカチを取り出し大きな音をたてて鼻をかんだ。
「この年になると涙もろくなっていけません。何の話をしてたんでしたっけ? そうそう、管理局の話でした。世の中にはね、一般の方が気づかない
「管理局はそれに目を光らせているんだ。
「そうするともういけない。そいつは涙が止まらなくなる。涙が涸れることはないのかって?
「支線はすべてそこから分岐してるんだ。幹線の元を探ると、世界各地の「るいせん」や「るいこ」に辿り着く。あっ、「るいせん」は涙の泉と書いて涙泉、「るいこ」は涙の湖と書いて涙湖ね。ややこしっくってしかたがない」
「名は体を表すってね。涙泉からは涙がこんこんと湧き出ていて、涙湖は涙を満々とたたえている。どうしてそうなるかって? さあて、私は下っ端だったから、それ以上はちょっと分からないね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます