第4話:帰路

船の展望デッキに出てみると、天気は良くないが潮風が顔にあたる。船酔いになった今の僕にはちょうどいい。




「本船は間もなく東京港に到着致します。準備がお済みの方は、ロビーにお集まり下さい。」




船内アナウンスが聞こえてくると、いよいよこの旅にも終わりが近づいてきたことを実感する。


ふと今回の旅を振り返ってみる。天候には恵まれなかったが、道中で見かけた桜は綺麗だったし、宿の温泉も気持ちよかった。そして何より、大事な人を無事に送り届けることが出来たので、僕にしては出来過ぎなくらいだ。東京に帰り着けば、またお金の工面や仕事探し、よく分からんウイルスに翻弄される日々が戻ってくる。ただ、失いたくないものがある分、頑張らなくちゃいけない。お先真っ暗かもしれないけれど、今回の旅で少し吹っ切れたような気がする。36時間寝かせたバイクに跨りエンジンをかける、時刻は朝の5時。最後まで曇り空なのが何となく僕らしい。




多分僕は、バイクの免許を取ったことを後悔しないだろう。


少なくとも、今はそう思ってる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ツーリスト 卑屈な人 @kimoinomoino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る