5ページ目 焦燥

 政府基準の体温が出てからは2週間、風邪薬を飲まないと息が苦しい状態と咳が出始めて1週間ほど経過した。いまだに自分自身が流行病ではないという自信はないが、とりあえず人に移さずに生活を行わなければなるまいと思う。僕が苦しむ分には一向に自業自得であろうと思うし、風邪薬に生かされている哀れな人間の状態でも仕方がないであろう。しかし、ほかの人に移して、感染の拡大させては大問題であるから引きこもり続けている。僕が苦しむのは自業自得でも、ほかの人に移して、誰かが移ったことで亡くなったりでもしたら、僕は殺人者になるのではないかと恐怖で震えている。自分が誰かに移すと誰かを殺す可能性があるというこの状況が本当に怖い。治らないと殺人者になる恐怖が常に付きまとうことが本当に自分にとっては重い。重い十字架を背負い、罰を受けるときを待機している犯罪者のような、そういった面持ちで1週間過ごし続けていた。

 大変申し訳ないことに、買い出しだけは1週間に一度コンビニで1週間分の食料を購入しに行っている。マスクを着用して店員さんとは最低限の会話しかせず、コンビニではせき込まないようにしているものの、それでも感染拡大につながらないかという恐怖で足が震えるのだ。僕自身、流行病の患者であるのか否かはわからない。けれど、せき込みが1週間も続き、平熱の1度ほど体温が高い日々を過ごし、風邪薬を飲まなければ息を吸うのもやっと。買い出しに行くときに、5分しか歩いていないのにも関わらず、肺がひゅーひゅーしてくるなんて、正直に異常でしかない。これが流行病じゃなくて、たまたま流行病と同じような病気に感染してしまっただけの状態であると、専門医に言われているからそうであると思わないといけないのもなんだか本当に怖いのである。自分自身、これが単なる風邪であると思えないのだ。

 流行病に感染すると差別を受けること自体は、本当に世界や国内の文章を読んでいると良くわかるのだ。それ自体も本当に恐怖で、僕がこれで本当は流行病に感染していた場合、(表で出すことはないのであるが)差別対象になってしまうことが本当に理解できて、それがたまらなく怖い。だからこそ、SNSのような広く人々の見ていて、かつ攻撃性の高まっている媒体では絶対に風邪をひいている事実を書くことができないのである。攻撃をしなければ自分を落ち着かせることができない人が多いのかもしれない。ただ、誰もがこうした流行病に感染する可能性が高い中で、どうして自分は感染しないと高をくくって、誰かを攻撃しようなど思えるのであろうか。

 こうして感染したのか、感染していないのか宙ぶらりんな状態で気づいたことがある。感染した人間、もしくは感染した可能性のある人間が何をすればいいのかを誰も明示していないのである。 #Stayhomeというけれど、確かに家にいることは大切だし、僕はかれこれ3週間近く自宅で待機している。しかし、この息苦しい状態を1週間も繰り返しているのに、病院へ行くこともできないし、そもそもこうしたときに陰性なのか陽性なのかもわからないまま待機し続けているのは体力がそれだけで落ちていくのである。本当に精神的に参るのである。

 話を変えてみる。報道によると出勤者が平常時点の7割に減ったという記事を確認したが、まだ7割も出勤している状態であるのが本当に恐怖である。これからさらに感染者数が増えていく見込みであろうが、このご時世にまだ通勤をさせようとする状態であるのが本当に世紀末一歩手前なのではないかと思えて仕方がない。しかし、この意見は僕の素人意見であり、かつ主観的な情報の捉え方であるため、的を射ていない可能性は高いのであるが。どうすればこのような差別の起きる状態や、差別の起きる状態であるのにもかかわらず出勤しないといけない現状を解決することができるのであろうか。そして、何故か起きている、テレワークをしている人間は上級国民であるから通勤している人間の気持ちなどわかるまいというムーブメント。難しい。


追伸。

 ボッカッチョ著、デカメロンを読んだ。デカメロンはペストの時代に生きた人の書いた小説であるが、前書き部分にペストの時代の凄惨な状況が事細かく書いていた。患者へのお世話や遺体を遺棄したり、患者の持っていたものを触れれば移ってしまう。黒死病というくらいであるから、遺体は黒くなっている。それ以外にも太ももが腫れて死ぬ。そして治療法が確立されていない、恐ろしい病だと書いてあるのであった。これは本当に当時パンデミックが起きていた際に本当に怖かった出来事なのではないかと思えるし、自分がその当時に生きていたら、すぐ死んでいたのではないかと思えるくらい恐怖の病であった。

 歴史は学べることがおおい。今こうして、自宅から出られない状況であるからこそこうした歴史の勉強もかねて、歴史的な小説を読むことはとてもよいことであると思えた。

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