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 SNSには絶対に書けないことを書こうと思う。これはあえて自分の記録だからこそ、ここで記すしかない。僕は気持ちを誰かに吐露することが、正直今一番怖いのである。だからこそ、このノートに示すしかない。正直だれかに助けてほしい。誰かに助けてほしいのは全人類だろう。だめだ、これ宗教臭いな。今世界の人々が全員不安であるから、自分が不安なのは当たり前の感情でしかないため、それを表で表現してはいけないだろう。


独白。


 最近は僕自身、新型ウイルスに感染しているのではないかと疑惑が生まれている。それこそ専門医からのお墨付きをもらっていたしただの風邪だと信じていたが、昨日の夜から疑惑を持ち始めている。しかし、それは医者や保健所の人から明確にそうではないと明確に否定されている手前、そう認めてはその人たちの専門性の否定になることと、もう一つは素人判断でそんなことを言えるはずもないと考えているため、これは表立って書くことができないのである。これは親にすら相談することができない。

 なぜなら、新型ウイルスに感染してしまうと、今の情勢では先日の記述通りであるが「国賊」と思われてしまう傾向にある。ネット上には公開していないが、知り合いには相談しているし、きちんと話し合ったし、適切な対処はとった。今は行動を自粛している。SNSで町に出かけている人を見ていると命を粗末にしてはいけないと悲しい気持ちになる。


 熱は全くといっていいほどないのだ。基準より1度は最低でも低い。咳も毎日毎時間出るわけではない。味覚も嗅覚も異常なし。なので、新型ウイルスに感染している条件は大体当てはまっていないのである。だからこそ、専門家も保健所の方も感染しているわけではないとおっしゃっている。実際そうなのだろうと思うが、本当にそうであると認めることもできない。いつもの体調と比べて明らかにおかしい。ただでさえ弱い肺が常に痛いし、気は抜くといつも遠くなりそうになる。これを伝えても心の問題だと認められるだろうし、実際そうなのだろうと思う。国民調査で伝えたが、見てくれるわけでもないと思う。見たとしても認められるものではないだろう。しかし、最近痛みが激しい。息をするのがどんどん苦しくなってきた。

 正直言えば今の僕は今咳をしてしまうと死ぬのではないかというくらい苦しくなりつつあるし、関節痛と頭痛は一週間以上治る見込みがない。昨日せき込んだとき、一瞬走馬灯が見えた。今は咳をすることを耐えているため、症状としてはすごく楽なんだけれど、せき込みたくてたまらない。しかし、一瞬でもせき込めばおそらく気絶することも目に見えている。咳をしそうになったとき、ぎりぎり耐えても視界が一瞬ホワイトアウトする。のどが痛い。ただ、今病院へ行くことは、流行病に移る可能性も高いだろうし、一番は僕がこれを訴えればお医者様にご迷惑をおかけすることになるのである。一番苦しいタイミングで自分のような存在のためにわざわざ苦労を掛けては申し訳ないのである。


 しかも病院で陽性と認められたとしても、陽性の人間ができることは待機しかないようである。薬すら有効ではない。現在世界でパンデミックの起きている流行病の特徴の一つは、解決策が今は見つかっていないところだろう。


 最近では常に内臓が痛いのである。専門家にオンラインで相談したら「風邪薬を飲めば治る」とおっしゃっていたため、風邪薬を飲んでいるが一向に良くなる気配を感じない。そろそろ死ぬ覚悟を持たなければならないのではないかと思えるくらい体調が著しく悪化している。これはもちろん、新型ウイルスに以外でもこうした症状に見舞われるケースがあるだろう。

 この全体的な不調は精神が敏感ゆえに身体が痛い可能性も否定できないため、オンラインで仕事をこなしてさえいれば(人と会わないようにさえすれば)、それでよいのだろうと思う。なので、しばらくはオンラインで通勤して、生き延びること考えていこうと思う。正直僕の恵まれているところは、16時までは内臓の痛みが弱いところである。夜になるとえぐい痛みが全身をかけていく。誰かに助けを求めたくても、今は誰にも助けを求められない。後一週間は耐え忍ぶつもりだ。


…しかし、多分もう命が尽きる。尽きる気がする。

 息がつらい。もともと僕は肺が弱いのだ。父親がヘビースモーカーだった。幼いころから弟とともに肺が弱いことはわかっていたし、内科医から喘息といわれていた。肺が弱い人間が肺の病になるこの病気にかかると、死ぬと思っているから、もしこれが本当に今の流行病であれば、おそらく僕は死ぬ。色んな人に恵まれてよい人生だったのに、これから時代の代わりを見ていきたいと思っていたのに、それができなくなるおそれがあるのが本当に怖い。でも、それが自分の運命であったらそれは受け入れないといけないだろう。運が良かった人生なのに、ここにきてやらかすなんてさ。僕らしいよね。

 助けてほしいが、誰に助けを求めればよいのであろう。公共機関に訴えても熱がないから聞いてもらえることはない。そろそろ、僕は………


 もしここで死んだときのために未来では参考になるだろうことをこれをお伝えしておこう。症状自体は僕の妄念でしかないのかもしれないが、この症状ははっきりとつらい。なのに、今の日本は平日は満員列車に乗ることを辞めないのである。それにより感染経路不明の状態で患者が爆発的に増加している。一刻も早く2か月近く閉鎖したほうが良いのではないか。ただ、この一般市民の考えは未来の人からすれば頓珍漢な発言でしかないかもしれない。事実、苦しいからこそ、こうしてわめいているだけに過ぎない。

 この手記を読んだ未来の方に政治家の方がいれば、一つ言えるのは休日だけ家に閉じこもらせる政策では流行病の対策として成果を出すことはできない。平日も引きこもらせないと患者が爆発的に増加するだろう。僕は苦しいと思うから自宅で待機してみる。37.5を超えれば患者という基準で、肺が恐ろしく苦しいタイミングでは36.2~36.7を推移しているため、僕が流行病であるなんて誰が信じようか。しかし、この息苦しさ、内臓の暴れるような痛み、えぐい肺の状態は報道通りの症状に感じるものである。


では、また次の機会に書いていこう。生き延びていれば。


____________________


 手記を書き終わったと同時に息苦しさでベッドにダイブする。ほとんど息ができない。ただ、気を抜くと生命すべてを持っていかれるだろう。今病院へ向かうことはできない。しかし、肺はどんどんと重症になってきているようなえぐい痛みを抱え続けている。暖房をつけているのに激しい寒さが自分に襲い掛かってきては、気が遠くなって負けそうになる。


「生き延びなければ、この先に出てくる面白くなってくるであろう世界情勢を見ることはできないのではないか」


ぼやいても誰かが聞いているわけではなく、息を全力で吸おうとする僕だけにしか聞こえなかった。これは寒くて、苦しい春の夜のことであった。自己責任というが、どこから感染しているのか、本当は感染していないのか、しているのかまるで分らない自分は果たして………もしこれで感染者だったら、間接的に人を殺す可能性が高いと自分の肺の苦しさから思わざるを得ない状況であった。

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