ウォーキング・プア

乃木希生

こんな裏側だったら嫌だ。。。

とある国を起点として発生した原因不明のウイルスによる世界的な感染パニック。

あらゆる国のトップが次々と生活の安心を国民に与えるべく、リーダーシップを発揮する中、なぜか国民から後手後手だと非難ばかりされる政府があった。

私は、その一人に直撃インタビューをすると、想像を超えた答えが返って来た。


「政府や議会に参加している人たちのモットーは、『自分の今と未来に対する安全・安心を確保し続けること』だ。

『国民の為に何かをやる組織ではないのかって?』

なんで、バカな国民のために私たちが本気で動かなければならないんだ。私たちが保護すべきなのは、高所得者層や病院、高級レストラン、それに投票をしてくれる高齢者の皆さまであって、場末の飲み屋や貧乏人、若者なんかは対象外だ。


私たちの目は少し国民よりも悪くて、そういう人たちが何故だか見えないんだよ。不思議だよね、同じ人間なのに見える人には見えるのに、見えない人には全く見えないんだからさ。


でも、それは本音と建前を何より大事にする我が国だから、絶対に言うわけがないけどね。」


大きな笑い声を響かせながら語ってくれた。

では、なぜあなたたちは本気で救うつもりもない国民を自粛と称して行動制限しているんですかと質問すると、


「もちろん、高所得者層が感染するリスクを減らすためだよ。何処に出没するかも分からないウィルスを持った人間を、そういった人たちに近づける訳に行かないだろう。そして、底辺にいる生活の為に働くしかない人たちが一定数以上、死んでしまったら、我々のような上級国民が優雅に暮らすための税金を払ってくれる人が少なくなってしまうじゃないか。彼らから徴収できる税金なんてものは少ない金でしかないが、それでも一定数以上の人数がいれば、それなりの金になる。だから、働き手が減らないように対策しているだけだよ。


その証拠に、政府は自粛ばかり訴えるけれど、経済補填は諸外国に比べて全く手を打たないだろう。【やるやる詐欺】と私たちは呼んでいる。我が国民は文句は言うけれど、その不満を暴力という形に変えて起こすことはしない。なぜなら、『やる』と言ってくれる政府が最後は本当に何かしらの対策をしてくれる。国民を見捨てることはしない。という理想論を信じてくれるからだ。


結局、自分のことは必ず誰かが助けてくれるから大丈夫だという楽観主義なアホばかりが大半を占めるのが、我が国の国民ってことなんだよ。


だから、私たちは実行するつもりもないが、パフォーマンスのために『やる予定だ』とは伝える。でも、関係各所との調整がとか何とか言って、自粛解禁というタイミングで人々が浮かれて外に出られるまで時間を一生懸命稼ぐ。我が国民は素直で純粋で少しだけ頭が悪いせいで忘れやすい性質を持っているから、自粛解禁という喜びで全てを忘れてくれるという訳だ。」


私は、驚きを隠せなかったが、更に踏み込んだ事を問い詰めた。それは、【やるやる詐欺】をしている間にも、お金が尽きてどうしようもなくなる人が、一定数出てくるのではないのかと。

その問いに対しては、


「まぁ、一定数は出てくるだろうな。でも、それは致し方ない犠牲だよ。企業がリストラをするように、国もリストラをしなければならない事があるってことだ。その犠牲者数が、一定数を超えたら、さすがに私たちの贅沢な暮らしの質が下がってしまうから、国民に金を貸し付けるよ。給付は絶対にしない。給付という形で現金を配ったとしても、それはさっきも言ったが建前だ。本音は、いかなる手段も行使して必ず国民に配った金は回収する。しっかりと利息を取ってね。


バレないのかって?

バレるわけがないだろう。難しい事を考えることを放棄する人間心理をついて、わざと税制制度を複雑にしているし、彼らにとってメリットになるように源泉という形で最初から徴収している訳だから。だから、こっそりと適当な名目をつけて数年掛けて回収できるって訳だな。」


私は続けて質問した。そうなると、結局は今回のウィルスにより国民一人一人が損失を被った分は保証されない所か、それ以上の損失を生じさせられて街には貧乏人が溢れかえるのではないかと。

そしたら、


「我が国民は暴力を嫌い、耐え忍ぶことを好むから問題ない。そして、そもそも金を持っていることを妬み、蔑み、悪いことだと思うように小さい頃から教育している。だから、彼らは貧乏でも、生活を工夫しながら何とか生活してくれるよ。」


と回答し、最後に、


「今言ったことを記事にしたら、君のこれからの人生は悲惨なものになってしまうかもしれないね。私の未来予知は当たると評判だから、気をつけてくれ。」


と言い残し、高級車に乗り込み、高級レストランへと車は走っていった。



(注意)

この短編ストーリーはあくまで、筆者が妄想した最悪な未来や現状です。

そして、このストーリーに出てくる国や人物は現実のものとは一切、何の関係もございません。

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