「進撃」から「鬼滅」へ

去年から大ヒットしている「鬼滅の刃」(鬼滅)の話を、今更ながらしてみます。

結論から言うと、同作のヒットの理由の一つは、「進撃の巨人」(進撃)が描いた緊張感に日本人が疲れてきてることじゃないか……と個人的には思っています。

なお断っておくと、自分は「進撃」は(アニメは見てませんが)原作を読み続けている一方、「鬼滅」はアニメの2クール目の頭で切って、原作も読んでいません。それくらいの理解で語ることを、どうかご容赦願います。


2010年代(テン年代)に「進撃」がヒットした背景として、やはり東日本大震災の影響があるということに異論は少ないと思います。

つまり、

「わけのわからない不条理だらけの世界と戦わなきゃ生き残れない!」

という緊張感です。

実際「進撃」では、毎回バトル展開の状況設定が一筋縄でいかないものだったり、話が進むほど複数の勢力の思惑が入り乱れて状況が複雑になっていったりして、主人公たちは(そして敵対者たちも)何が正しいのか分からない状況で生き延びることを、ほぼ常に迫られています。


「進撃」は最近でも売れています。

しかし、震災の記憶も薄れてきて、「わけのわからない世界と戦ってやる!」という緊張感に、ここ数年の日本人は疲れてきたのかもしれません。


一方「鬼滅」は、自分が見た範囲で言えば、「進撃」に比べて単純で分かりやすい物語です。勇敢で心優しい少年が、人を食べる悪い鬼たちを(それも日本刀という、分かりやすくかっこいい武器で)ぶった斬ることの繰り返し……という。

そういう、少年漫画に不可欠な「芯」としての要素を、とてもストレートに描いている感じはあります。

「鬼滅」はそういう分かりやすい内容だから、「進撃」的な緊張感に日本人が疲れてきた2019年の時点で、アニメ版のクオリティの高さも手伝ってヒットしたのだと思います。


とはいえ「進撃」だって、序盤では「巨人が襲ってくる! 戦わなきゃ食われる!」というシンプルな恐怖がありました。

つまりヒットする物語を創りたければ、分かりやすい面白さを描くべし、ということです。

自分は「鬼滅」よりは小難しい物語ばかり考えますが、それでも分かりやすくすることは忘れたくないです。

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