第2話『魔術師の少女』
「何だ、あいつ……」
ウィリアムは気になって後ろから目の前の相手を観察していたが、どれだけ待っても動こうとしない。
けれども、良く見てみれば立ち止まってはいるものの、首は動かしている事にウィリアムは気が付いた。
右を向いてそれから左を向く。すると再度右を見てからまたもや左を向く。そしてそれを何度も繰り返すのだった。
その動作を見ていれば、何で立ち止まっているのかという理由が分かるというものだ。
「もしかして……道が分からないのか?」
相手の目的地がどこなのかは分からないけれども、道に迷っている事は分かる。
もし分かっているのであれば、あんな道の真ん中で立ち止まりはしないだろうから。
さて、この先の分岐についてだがウィリアムから見て右側に進めば彼が拠点とする辺境の街にへと辿り着ける。
しかしこの道を左にへと進んでいくと、その先にあるのはダンジョンや洞窟、それか魔物や獣達が生息する地域となっている。
これまでウィリアムが歩いてきた道と比べると、大いに危険な場所なのである。
「街を目指しているのなら、左に行ってしまうのはまずいな……」
目の前の相手が辺境の街を目指しているというのであれば、左に進んでしまうというのは危険が過ぎる。
第一、もしも左の道の方が目的地の方向だったとしても、それが危険だという事には変わりはない。
相手の力量がどれ程のものかをウィリアムは知らない。が、一人で乗り込もうとするのは些か見積もりが甘いと思われる。
小勢を相手にするのであれば何とかはなるかもしれないだろう。運さえよければ何とか切り抜けられる。
けれども、多勢を相手にすればあっという間に囲まれ、それで終わりだ。無事では済まないだろう。
「……」
ウィリアムはどうするべきかと思案しながら頬を掻いた。最善を考えるのなら、声を掛けて目の前の相手に親切に教えるのが良いだろう。
だが、それはどうにも躊躇われた。あまり気乗りがしてこない。
理由としてはもともとウィリアム自体があまり人と活発に交流をしない人間というのもある。
それにこういう生業をしている以上、不用意に他人と関わった事で何かしらのトラブルに巻き込まれる懸念もあった。
しかし、見知らぬ相手ではあるものの、そのまま見過ごして左にへと行かせてしまうのはウィリアムにとってばつが悪かった。
「……まぁ、ここで巡り合ったのも何かの縁というやつか」
結局、迷った末にウィリアムは目の前の相手に声を掛ける事した。そして近寄ろうとして―――
「うーん、どっちに行けばいいのかなぁ……」
ウィリアムが声を掛けるよりも前に、目の前の相手の方が先に口を開きそう言った。そしてその声はまだ幼さの残る少女特有のもの。それを聞いた事で目の前の相手が魔術師の少女だという事が判明する。
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