もう散々だ

「もう夢は叶いっこないね」(終始ニヤニヤ顔)

「誰だ」

「あれ? 忘れたの? 君が散々いじめて不登校にしたやつの顔」

「!」

「あれからの人生ホント最悪最低だったよ……。何度死のうと思ったか……。何がここまで俺を生き永らえさせたと思う?」(車いすに乗った男を押し始める)

「……」

「君の存在だよ。俺は君が憎くて憎くて堪らなかった。いつしか君への復讐を誓ったのさ」

「……まさか」

「うん、そのまさかだね。ここ一連の君に降りかかった不幸はみんな俺が仕組んだんだ」(明るい声で言って、凄く良い笑顔で嗤う)

「……だって……、子どものしたことじゃないか……。確かにあの頃の私はどうしようもない人間だった……。しかし……、悪いことだなどと誰も私に気付かせてなんてくれなかったんだ……」

「知らなかったからって許されるような生ぬるい世界じゃないんだよ、きっと。それに俺は君に人生をめちゃくちゃにされてるんだよ?

わかってる? それなのに、償いにも来ない……。気付いたならすぐにでも謝りに来ればよかったのに……、持ち越し過ぎたね」

「違う……、違うんだ。時間がなかったんだ……」

「時間がない? 何を言ってるの? 奥さんや子供たちと旅行に行く暇があるんだったら、俺に謝りにこれたでしょ。それも一回や二回じゃない。ひと月に一回はいってるんじゃない? それに、ずいぶん贅沢な旅行プランだ……。やっぱり罪の意識なんてみじんも感じてないんだろう、あんた。何で人の人生ぶち壊しにしたやつが、幸せになってんの? おかしくない?」

「……」

「おかしいに決まってんだろう!!」(車いすをける、立ち止まる)

「…………っ」

「はっ……、これで復讐は終わりじゃない。あんたの旧友と騙って世話役を名乗り出たんだ。この数日間のあいだにあんたを殺そうと思ってる。もちろん、簡単には殺しゃあしない。じわじわとなぶり殺しにしてくれるわ。けど、まあ、許してあげてもいい。俺が一番聞きたい言葉を言ってくれたらね。ちゃんと心の底からの言葉で」(笑ってるのか泣いてるのか睨んでるのか分かんない顔)

「助けてくれ! 助けてくれ! 助けっ……」バッ

「バカじゃないの。あんたの信用なんてとっくに失われてる。味方なんて誰もいないんだよ」

「みんな誤解なんだ……。私がしたことじゃない……」

「どうかな。若い女にちょっと色仕掛けされたぐらいで簡単にヤっちまう奴の言うことなんてだれも信じないだろうけど。あの時だって、ちょっと金ちらつかせただけで簡単に……。ふふふ……」

「借金をつかましたのも君なんだろうな……」

「全部俺だよ、全部…………。クックック……あっははははははははは!!」

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SS集 しま @simaenaga

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