現世で心を殺しながら働く社畜だった主人公は、無茶な飲み方で泥酔した結果、異世界に住む貴族の次男坊『リドル』に転生してしまう。魔法を覚えて稀少な『聖剣』の能力も顕現させるが、その形状は剣と呼ぶにはあまりにも『アレ』で……。しかし持てる能力やスキルを駆使し、誰にも抜けない魔剣を台座ごと移動させ、イジメっ子気質な兄や周囲の面々を見返すほどの活躍を見せる――。
実に王道な異世界転生モノであり、それでいて転生するキッカケや主人公の武器や属性などは、オリジナリティが光っていると思いました。世界観や魔法の設定などにおいても、細部まで作り込まれている印象を受けました。
それらを表現する文章は丁寧で、好みの差はあれど個人的には読みにくさを全く感じませんでしたね。ついでに食事シーンすらも、作者さんのこだわりが感じられるほど美味しそうに描かれています。
『一見すると使えない能力やスキルに見えても、使い方次第では多くの人の助けになったり、強力な効果を発揮する』。そういうお話が大好物なので、本作も楽しく読み進めることができました。良質な異世界転生モノ作品です。
ただ序盤から魔法の細かい設定を説明しつつ勉強したり、スパルタな修行シーンが多めなのは、読者を選ぶと思いました。
Web小説においては展開の早さや序盤からのインパクトが重要視されるので、目立った活躍シーンの来るまでが遅く、学園編に入ってからも(まだ導入なので仕方ないですが)、大きな動きや盛り上がりに欠けているのが気になりました。
とはいえ学園で出会う個性的なキャラ達や、まだ見ぬ聖剣や魔剣のアイデアなどで、どこまでもお話を広げられるとも思いました。それほどシッカリした下地の魅力に溢れている作品です。今後の展開にも期待が持てます。