野球中継見に行ったことある?

プロ野球観戦したことある?



 何回かしたことがあります。地元に南海ホークスのキャンプ地があって、オープン戦を、春先になると開催していた。当時は南海ホークスの監督が野村克也。プレーイングマネジャーで、マスクをかぶっていた。野村は三冠王になったこともあって、花形選手だったが、後年は名監督として有名になった。いわゆるID野球の創始者で、「再生工場」とか言われて、他チームでスクラップ?になった凡プレーヤーを、良い点を引き出して戦力として再活用するのが得手だった。弱小球団で、低迷していた阪神タイガースの監督になると、機動力を生かした軽快な戦法で、スター選手も生み出し、星野仙一に交代してからの阪神の優勝の礎を築いた。野球中継の解説も、含蓄が深くて面白く、著書にも独特の視点と豊富な経験に基づく説得力に定評があった。そうして「生涯一捕手」の名台詞を残した。いわばプロ野球しに残る不滅の大捕手…その野村がオープン戦に出るというので、父と僕はワクワクしながら見物に行ったのだが、肝心の野村は最後までベンチから出てこなかった。「ポスターに野村の写真載っとったやないか」と、どっかのおっさんはぼやいていたが、オープン戦は若手の力を試すのがまあ本分というのが常識で、背番号19番の不世出の大捕手とは結局巡り合えなかった。そうして幾星霜ののち、かの人は83歳で鬼籍に入られることになったのだった。

  オープン戦で思い出に残っているのは、試合前に「野球狂の詩」という映画のロケハンがあって、主演の「水原勇気」役の木之内みどりという当時のトップアイドルが始球式をしたことだった。サウスポーの下手投げで、全力投球をしたが、ボールは盛大にバックネットまでワイルドピッチして、木之内みどりは笑顔でマウンドから駆け下りながらペロッと舌を出した。スタイルが抜群に良くて、かわいらしくて、今でもその情景が目に浮かぶほどに印象的だった。僕は、最近「サウスポー」という野球小説を書いたが、このイメージはその時の木之内みどりの妖精のような愛らしい印象が下敷きになっている。監督が野村克「哉」。美貌のサウスポーが主人公なのは同じだが、推理小説っぽく筋書きに仕掛けを施している。過去記事にあるので参照して一読いただければ嬉しく思います。https://kakuyomu.jp/works/1177354054935508530/episodes/1177354054935509212


(2020.12.26)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る