番外編:塾講師は琵琶を片手に踊らない 下
(※本作は『塾講師は探偵じゃない』の世界がもしコロナウイルス禍だったら、というテーマの番外短編です。本編の展開には一切影響しないエピソードとなっております。また執筆時期は2020年6月であるため、現実との誤差が多少生じている箇所があります。ご了承ください)
結果的に、俺はビンゴをビデオ通話に引っぱり出すことに成功した。
画面の中の彼は不健康そうには見えない。自分のスマートフォンに向けて、ただただ不思議そうな顔を浮かべていた。
『どうして分かったんですか?』
「ちょっと長くなるかもしれないけど、時間は大丈夫か?」
はい、とビンゴは頷く。
俺も時間には余裕がある。今日のカウンセリングはこれが最後であり、夕食の炊事は買い出しから返ってきた芽吹が買って出てくれるらしい。
それでもなるべく手短に終わらせることを念頭に置きながら、俺は先ほどの質問をするに至った経緯を思い返した。
「君は今日までずっとビデオ通話を頑なに拒んでいた。その理由を探ってくれと室長から頼まれたとき、俺は家の中や自分の姿を見られたくないからなんじゃないかと考えた。でもそれは見当違いだった。聞けば、画面に映るものはビデオ通話アプリの機能でどうにでもなるらしい」
心寧やシティとのカウンセリングを思い出す。
背景にモザイクをかけたり、全く別の写真を差し替えたりすることは容易に出来るらしい。俺はその詳しい方法を知らないけど、ビンゴと同学年の彼らに出来るのだからきっとビンゴにとっても造作もないことだろう。
だから『部屋が整頓されていない』『ニキビが出来たのを見せたくない』などの理由で拒んでいたわけではない、と俺は考えた。背景をぼかしたり、ニキビが出来る前の写真を加工して背景画像に設定すれば、それらの問題は解決する。
……後者の方法がすぐに怪しまれそうなのは一旦置いておくとしても。
「原因が視覚情報ではないとするなら、残るは聴覚情報だ」
ビデオ通話では香りや味、触り心地を共有することはできない。だから消去法で、聞こえてくるものに手掛かりがあると俺は踏んでいた。視覚に頼れないなら、他の感覚に頼ればいい。かつて琵琶法師がそうしたように。
「スマートフォンと固定電話機では、音の拾い方に少し違いがある。最近のスマホは耳に当てなくても通話ができる機能があるから、より広域の音を拾うように作られている。それに対し、固定電話機は機種にもよるけど受話器の近くの音さえ拾えれば通話が可能だから、スマホほど広く音を拾わないんだ」
スマホと固定電話の違いはもう一つある。
「それに、スマホは聞こえてくる音量を調整する機能があるけど、固定電話にはそれがない場合が多々ある。そこから考えるに――君がビデオ通話をしたがらないのは、君の声以外に聞かれたくない音があったからなんじゃないかな」
『――正解です』
ビンゴは頷いた。
いつもは冷静沈着なリーダー格の彼だが、今はどこか覇気がない。非常時にもかかわらず元気全開で平常運転だった他の中三たちが異常なのだろうか。
違和感を引きずったまま、説明に戻る。
「じゃあ、それは一体どんな音なのか。通話中に聞こえてしまうということは、目覚まし時計やテレビの音のように簡単に抑えることが不可能な音だ。例を挙げるなら、工事の音、近隣住民が楽器を演奏する音、はたまた動物の鳴き声とかかな」
美咲のカウンセリングでは、以前に聞こえていたツバメのヒナの鳴き声が聞こえなくなった。そういった類の音なら、止めることはかなり難しくなる。
「そこから先は絞れなかったから、受話器の奥から聞こえてくる音に耳を澄ませることにしたんだ」
固定電話だと、ビデオ通話とは違って話者の口の動きが見えない。ゆえに聴者は話者の声だけにより一層集中して耳を傾けることになる。
だから加賀美室長には聞こえなかったのだろう。ビンゴの声の裏に潜む、かすかな物音と鳴き声が。
『なんだ、最後は推論じゃなかったんですね』
「ああ。以上が、今回の真相――君が猫を飼い始めたという結論に至った経緯だよ」
画面の奥から覗く瞳が四つに増える。
黒地に白いぶち模様の施された華奢な猫は、全身を舐めまわしながら「にゃあ」と鳴いた。飼い主の前だというのに落ち着かない様子だ。
『今しがたトイレから戻ってきました。コイツ最近、トイレに使ってる床面積が広くなったから砂を敷くのが大変なんです』
……その報告は必要なのだろうか。
とはいえ、これで芽吹が見たという『土のようなもの』の説明がつく。ビンゴと弟が育てていたのは、植物ではなく動物だった。
「名前はなんて言うんだ?」
『リーチです。
なるほど、洒落が利いている。
リーチはひとしきり体を清めたあと、部屋の中をぐるぐると回り始めた。おもわず目で追ってしまいそうになるのを堪えて、俺は仕事に戻る。
「話を戻そう。君の隠していた事柄は分かったけど、ここでひとつ疑問が生じる。なぜ猫を飼っていることを知られたくなかったのか」
ここが最大の謎だった。
俺はビンゴの秘密に触れた。だからといって別に何を思うわけでもない。『ふーん、そうだったのか』と納得するだけだ。これはおそらく室長や他の講師も同じで、誰かが猫嫌いだったという話は聞いたことがない。
なら、それを講師全員に秘匿した理由は一つに絞られる。
「俺たちから別の誰かに情報が伝わるのを恐れた――おそらくは、バスケ部のチームメイトであり親友である
久慈君ことエースと連絡をあまり取らなかったのも、もしかしたらこれが原因なのかもしれない。
「備後家がリーチを飼い始めたのはおそらく二月。名付け親が弟君だから、弟君が拾ってきたんじゃないかな?」
『はい。段ボールの中で寒そうにしていたから、思わず持って帰ったそうです。あの頃はまだ子猫だったんですけどね。責任もって世話すると豪語していました』
やはり推測通りだった。
脳裏に思い浮かぶのは心寧の弟の小太郎君だ。ビンゴの弟も同じ年ごろなら、似た行動を示してもおかしくはない。
「時を同じくして、君の親友・久慈君が目鼻の症状を訴え始める。その時、君は既に気づいていた。発症してしまったのは花粉症ではなく、猫の毛によるアレルギーだと。二月は花粉症には早すぎる時期だ」
ビンゴは迷った末に、小さく頷いた。
「君は真実を彼に話すかどうか躊躇した。久慈君がどんな反応を返すか分からないからね。迷っているうちに、ウイルスの騒動で全面休校と外出自粛期間が始まった」
『内心ホッとしました。これで彼をアレルゲンから遠ざけられるから、白状しなくて済んだ、と』
「でも別の問題が生じた。それがこのビデオ通話を用いたカウンセリングだ。家の様子が筒抜けになれば、猫がいることが俺たちには分かってしまう。だから極力それを悟られない方法として、固定電話を選んだ――こんなところかな?」
『その通りです。まさか、こんなあっさりバレるとは思いませんでしたけど』
ビンゴは肩をすくめる。
その脇にリーチがすり寄ってきた。後ろ足で体のあちこちを掻きむしりながら、ビンゴが少し身動ぐたびにそちらの方に目を向けていた。
飼い主なのに信頼されていないのだろうか。
信頼されていないといえば、妙に親近感を覚える。
「俺たちに相談しようとは思わなかったのか?」
『それも考えたんですけど、やめました。別に先生方を信用していないわけではなくて、ただ――』
「ただ?」
『ウイルスも情報も同じです。一度誰かに伝われば、次はどのように伝播するか分からない。それを懸念して、備後家の中だけで食い止めようと思ったんです』
なかなかの危機管理意識だった。
彼ならきっと災禍のご時世を強く生き延びられる。俺も見習っていきたい。
謎は解けた。でも、問題はまだ解決していない。
今回の件の火種はまだ耳の裏をしきりに掻いている。抜けてしまった数本の黒い毛が宙を漂い、落下するのが見えた。リーチはそれに目もくれず、今度は自分のしっぽを執拗に追いかけ回している。
「結局、久慈君には伝えるのか?」
『時が来たら覚悟を決めて話そうと思ってました。でも、その必要はなくなりそうです。次に会うときはもう――』
「諦めちゃダメだ」
つい大きな声が出た。
ビンゴもリーチもびくりと肩を震わせた。何より俺自身が一番驚いている。
先ほどからのリーチの行動を観察しながら、俺はその様子に違和感を覚えていた。単に落ち着きがないだけでは済まされない行動が多いのだ。
思い当たる症状が、ひとつだけあった。
「常同障害。その中でも、体中をとにかく舐めまわしたり、毛が抜けるまで体を掻きむしったりするのはかなり進んだ症例だ」
『そうです。最近は床に毛が散らばったり、血が付着してたりすることが多くなりました。こんなご時世だから獣医も開いてないし……先生よく知ってましたね』
「高校時代は生物部の部長だったから。それはさておき、君も家族もリーチはもう長くないと踏んでるんだろう?」
下を向き、無言で頷くビンゴ。
その様子を、リーチは怪訝そうな瞳で見つめていた。それもほんの一瞬のことで、またすぐに体を舐め始める。
ある仮説が思い浮かんだ。
もしかしたら、解決の糸口は案外簡単なところに転がっているのかもしれない。
「猫は周囲の変化に敏感で、常同障害の原因もそこにある。一番効果的な治療は、猫の不安材料を取り除くことだ。さて、リーチがおかしくなったのと君が元気をなくしたのは、どっちが先なのかな?」
ビンゴはハッと息を飲んだ。
エース・ビンゴ・シティから成るバスケ部三坊主は、塾の中でもひときわ賑やかな集団だった。青春の只中にある男子中学生の一角として華やいでいた彼も、今や部屋の中で萎れるに留まっている。
彼が明るさを取り戻せば、あるいは——
『そうか、リーチは僕のせいで……。僕の調子が戻らないのは、多分アイツらと長いことバスケができていない生活のせいです。今まで当たり前のように体を動かせていたのが、こんなに幸せだったなんて』
やはり彼も、多少の自覚はあったらしい。
ふむ、と考え込む。俺は塾講師であり、勉強のモチベーションに届く言葉なら一つ二つくらいは知っている。けれども、非常事態下で手の届かない日常を願う教え子にかける言葉をストックしているわけではない。
だから、手近なところで拙いアドバイスを練り上げるのだ。
「他の二人とは、決心がついたら話すといい。今のご時世、オンラインで飲み会する中学生もいるらしいからね。もちろん飲酒厳禁で。それに体を動かすのなら、家でも出来るとっておきの方法がある」
『とっておきの方法……?』
思い浮かべたのは、昼過ぎに従妹が実践していた運動法。軽い身のこなしで次々にポーズをきめていく芽吹は――どこか楽しそうだった。
「カタヤマ・ブートキャンプというのが流行っているらしい」
夕食を終え、加賀美室長と回線を繋ぐ。
芽吹は今頃『飲み会』を楽しんでいるだろうか。夕食の際も、待ちきれない様子でギョーザを頬張っていた。
室長も同様に、何かを待ち侘びるかのようにソワソワしている。
『それで、交渉の末に門出君限定でビデオ通話を許可してもらえたけど、今まで拒んでいた原因は依然不明。そういうことだな?』
「はい」
ビンゴとの取り決めで、室長にも真相は秘匿することにした。彼の覚悟が決まるまで、秘密が明るみになることはないだろう。
『うーん。君が私より信頼されているのは癪だが、よくやったと言っておこう。さすがは我が校自慢のトラブルシューター、いや、今回は安楽椅子塾講師だな。自宅に籠りながら前進にこぎつけるとは、大したもんだ』
なるほど。安楽椅子探偵もある種在宅ワーカーだ。
プシュッと音がする。芽吹が炭酸ジュースを開けたのかと思ったけれども、どうやら出所は画面の中だった。
がっつり『生絞り』の文字が目に入る。
……いいのか、勤務中だぞ?
『ひとまずこれにて業務は終了とする。ご苦労さん。これから私の主催で『非公式のミーティング』を行うことになっているんだが……残念ながら君だけ不参加だ』
下手に業務用語で飾るより、素直に『飲み会』名義を突き通す中学生の方が余程勇ましい。
それよりも、聞き捨てならない文言が聞こえた気がする。
「なんで俺だけ?」
『君が今日送ってきた春峰さんのカルテを見ても、同じことが言えるのかい?』
ぐうの音も出なかった。
問題のカルテがパソコン画面に映し出される。ビンゴとの電話の時間が差し迫っていたことと、大半がビンゴに関する聴取で終わってしまったことが重なり、慌てて仕上げたものだ。
『すべての空欄を『良好』の二文字で済ませるとはいい度胸だな。罰として、今から春峰さんとのカウンセリングのやり直しを命じる。減給しないだけありがたく思え』
「今からですか!?」
室長は、俺と芽吹が二人暮らしを営んでいることを知る唯一の職員だ。それを鑑みても、かなり急である。何しろ芽吹は飲み会の最中であり、女子中学生の園に土足で踏み入る真似はしたくない。
『残念だったね。土方殿が鬼殺しを堪能する瞬間が見れないなんて』
「それは別にいいですけど……土方先生死んじゃいません?」
鬼と称される厳しい先生と鬼殺しの戦い。これが見れないのは少し悔やまれる。
『分かったらさっさと始めたまえ。じゃあ切るぞ』
加賀美室長は回線を切った。画面が落ちる寸前、ビールを呷る姿が映る。乾杯まで我慢できなかったのだろうか。
はぁ、とため息が出る。
リーチと対面してから、目の痛みは既に引いている。
目に効くかは別として、動物というのはセラピー効果があるらしい。このご時世、動物の動画を趣味にしている人が多いと聞いた。
鶏が先か卵が先かという話だけど、もしリーチに健康が戻れば少しはビンゴや弟君の気も晴れるだろうか。相乗的にお互いが元気になることを、今は祈るばかりである。
俺はパソコンの前から腰を上げた。俺自身が元気で前向きにならなければ、彼らに示しがつかない。
「さて、気は進まないけど芽吹を呼ぶとするか」
「……私がどうかしたのかしら?」
いつの間にか、背後に芽吹が佇んでいる。立ち上がって間もないのに、腰を抜かしそうになった。
「あれ、飲み会はどうしたんだ?」
「もう散々よ。渡合さんは『ツバメさんがいなくなるとやっぱり寂しいです……』って泣きだすし、倉橋さんは弟と一緒に大の字で寝ちゃうし。収集つかなくなったからお開きにしたわ」
泣き上戸に、寝上戸。
女子中学生三人の飲み会が、ここまで地獄絵図になるのか。まさかとは思うけど、本当にアルコールを服用していないことを祈る。
「飲み物もおつまみも余っちゃったから、兄さんさえよければこの後もう少しだけ付き合ってくれると嬉しいわ」
「よし、乗った」
願ってもない機会だった。ついでにカウンセリングを済ませてしまおう。
従妹とゆっくり語らいながら、長かった一日を締めくくるのもたまには悪くない。
芽吹は鼻歌交じりにダイニングへ歩いていく。そのメロディは、某男性歌手がSNSにアップした、外出自粛をテーマにした楽曲だった。
「明日は何しようかしら……まず動物の動画をチェックするのは欠かせないわ」
ふふっ、と芽吹は夢見る乙女のように小さく笑った。普段のそっけなさの面影はない。笑顔を浮かべていつになくご機嫌な様子である。
先ほどの二人に続くなら、笑い上戸だ。学校も出勤もない非日常の中で、この街の人々はそれぞれの新たな一面を開花させつつあるのかもしれない。
X月下旬。
ようやくウイルスのピークは落ち着きを見せ、世界は新たな日常を迎え入れようとしていた。
すっかり葉が茂る桜並木を、芽吹と並んで歩く。ここが満開だった頃は既に外出自粛期間であり、その様子を遠巻きしか見たことはない。
水筒の水をちびちびと飲みながら芽吹が口を開いた。
「そういえば、カタヤマ隊長がウイルスに感染して亡くなったのは知ってるかしら」
「ああ、昨晩のニュースで見たよ」
四月にテレビの画面で見た隊長の姿を思い浮かべる。屈強な体でエクササイズに興じる彼がもう帰らぬ人だというのは、いささか信じがたい。
「死亡が確認される一時間前、隊長のSNSが更新されてるの。ほら」
芽吹がスマホを寄越した。
カタヤマ隊長のアカウントには満面の笑みの彼のアイコンが貼り付けられている。最終更新の欄には『今日も健康と安全第一で頑張ろうぜい!』とあり、上腕二頭筋の写真が添付されていた。
「自分が病の床にいるのに、最期まで笑顔と健康をまわりの患者に呼びかけていたらしいわ。凄まじい人ね」
俺はその間、もう一匹の故人(?)を思い浮かべていた。
ビンゴの家の猫・リーチも、時を同じくして息を引き取った。
常同障害の症状は次第に回復し、以前よりもビンゴに懐くようになったらしい。けれど、一度傷ついた体や精神は徐々にリーチの体を蝕んでいき、回復はついぞ追いつかなかった。
『コイツのお陰で、僕は前向きに立ち直ることができました。最後にじゃれ合った日々を大切に、リーチの分まで懸命に生きていきます』
のちのカウンセリングで、ビンゴはそう語っていた。
リーチもカタヤマ隊長と同様に、最期の瞬間まで元気を与え続けていたのだ。平穏が徐々に訪れていく中で、彼らのような勇気ある命が失われたことを俺は絶対に忘れないようにしたい。
「ついたわ兄さん。何ぼうっとしてるの」
気づけば、俺の職場である
今日は中学三年生の補講日。外出自粛期間で授業が受けられなかった箇所を急ピッチで補填していく。そのために、生徒たちと講師である俺は集められた。
軒先は、久々の再会を喜ぶ生徒で溢れかえっている。
「塾にもツバメの巣があったんですね」
美咲は軒下を眺めて小躍りしている。まさか食べる気ではあるまい。
「この後保育園に小太郎のお迎えに行くから、居残りは勘弁してねー」
心寧のお姉ちゃんっぷりは、まだ遺憾なく発揮されているようだ。
「……」
シティは無言で突っ立っている。眠っているのかもしれない。
「花粉症治ったみたいだね、エース」
ビンゴの様子は、外出自粛期間の前と変わらず飄々としている。
「おう! それにしても筋肉増したな、ビンゴ。何か特別なトレーニングでもやってたのか?」
「まあね。詳しくは後で教えるよ」
エースの勢いは、季節をまたいでも健在だった。
ウイルスの爪痕が完全に消えたわけではない。けれども、こうして少しずつ取り戻して行く日常には確かな希望がある。
これから先、困難は幾度となく押し寄せるだろう。
けれど俺たちはそれらに屈することなく、今回の件で学び得たものを語り継いでいく。あわよくば、千年先の未来まで残り続けるように。
かつて盲目の僧侶たちが、それを目指したように。
「門出君。これから忙しくなるぞ! 早速だが――」
加賀美室長の弾む声に、俺は現実へと引き戻される。
千年先は後回しだ。まずは、彼らに待っている一年先の合格をサポートしてあげなければならない。
俺は気を引き締め、数か月ぶりの校舎の引き戸に手を掛けた。
塾講師は探偵じゃない 暦 壱悟 @jimbey-x
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