大便辛苦

ハリエット・ヴァンゲル

処女作

日曜日 夜

妻子が外出のため俺は今1番ハマっている台湾ラーメンを食べに来ていた。香り高く味わい深い、毎回食べる度にこの時間が永遠に流れないかと考えてしまう、きゃりー風に言うなら最&高。行った経験もないのに台湾での観光・恋愛が目に浮かび涙ぐむ、そんな味だ。ただし辛さは相当なもので額・頭髪は汗でビッショリ。うまうま余は満足じゃ。


月曜日 昼

午前中の仕事は終わり。基本お腹弱弱なハリちゃん、朝からコーヒーを摂取し続けており、いつもよりややお腹が張りちゃん。しかしそこは逆に追い込んでいくスタイルの俺は吉牛に向かい、並つゆだく卵をかき込む。フン!誰が張りちゃんだ、このくらいで不調をきたすわけがない!屁でもこいてやる!

メミョ!!!

んん???いや待て、この手応えならぬ屁応え、不穏な空気と愛らしい香りが車中を覆う。しかし両アウトサイドアナルに異物を抱えた感覚はない。それにこんなことは人生で100回は経験しておるが1度たりとも下着を汚したことなど無い。だがこのまま知らぬ存ぜぬの姿勢で一日を過ごし、その果てにパンツの内側で茶色を見てしまったら、、、すぐに確認せざるを得ない。微弱な便意が続いていることもあり俺はドラッグストアのトイレに駆け込んだ。


洋式便器に跨り、合格発表を確認する生徒の心境でパンツの内側を覗き込んだ、立体的なものはない、それはあくまで平面的に縦長の染みとなりパンツを汚していた。

漏らした!!!

紙一重、汁一筋ほどの僅差ではあるが勝負の上では明白な負けだった。Ah~、絶望に打ちひしがれ、ショックで便意が失せた、家族・同僚の嘲笑する顔が去来した、しかし俺は立ち上がらなくてはならない、文字通り敗戦処理を行わなくてはならない。気持ちを切り替えトイレットペーパーに手を伸ばし、引くと2周したところで力なく芯から離れてしまった。この2020年春、まさに日本は紙不足の折、店側も泥棒に備え少なめ少なめで回していたのだろう、などと納得している場合ではなくこの難局を乗り越えなくては午後からの仕事は続行できなくなる。ウン&コーで休暇を取るなど考えたくもない!実戦経験の豊富な俺はこの紙の量は3ターンいけると値踏みし、慎重かつ大胆にサラッと一手目を投じた。二手目の準備として紙を折り畳もうとしたところ、そこにはニラがありがたいお札のようにへばりついていた。お札にはこう書かれていた。

「腹弱日本人偉台湾拉麺食否、阿呆」

(腹の弱い日本人が偉そうに台湾ラーメン食ってんじゃねーよ、アホ)俺はそう解釈し頭を垂れた。

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