食べるとパワーアップするカレーの力で冒険者を助ける女の子のお話、です。
第3章まで読んでのレビューです。
主人公のソフィアは、そもそもが不幸な生い立ちではありますが、新しい世界で知り合った人たちのおかげで、自分の存在意義を得ていきます。それだけでも(カレーのように)あったかいお話です。
舞台がファンタジー的異世界ということもあり、恐ろしいモンスターのような存在や、魔族(かわいい)との戦闘などもたびたびあります。
しかし、本作の見どころは、その細かすぎるほどのカレー描写とカレー知識です。カレーを主役にした小説を書こう、と考えるくらいの作者のカレー好きっぷりが見ているこちらにも響いてきます。とりあえずクミンホール買ってきます。
途中、シリアスなシーンや、緊張感のある戦闘シーンも続きますが、そんなときも読者としての気持ちは一つです。「次はどんなカレーが登場するんだ?」とてもおなかのすくお話ですので、できればカレー味のおつまみと一緒に味わうといいでしょう。
この物語を一言で表すなら『カレーから始まる異世界生活!?』というフレーズが頭の中に浮かぶ作品です。
カレーの下準備から調理の手順、そして入るスパイスの種類に至るまで、カレーに対する並々ならぬ情熱を感じさせる描写が度々登場します。
シナモン、ターメリック、コリアンダなどの名前が出る度に、個人的には『みな〇け』のカレーの歌を思い出して食欲をそそられる羽目になりました。(汗)
そして登場する人物の中で『ルーリ』という魔族の少女があるのですが、この子の言動が大変可愛く書かれており、それを読んでいる側としても自然とほのぼのした気分にさせてくる場面が多々出てきます。
だからもう自分の中では『ルーリを愛でる物語』という側面がより大きく感じるようになりました。
だからといって、この作品が料理とスローライフの日常系ってだけではなく、しっかりした戦闘シーンが出てきて、それがまた緻密かつ豪快な文体で書かれており、読んでいて手に汗握る展開もちょくちょく登場しますので、何一つ不足なく楽しみながら読み進めることができる物語だと思います。