「どこから部屋の中に入ってきたの?」と少女を見て、驚いて僕は言った。

 部屋の入り口のドアの鍵は確かに閉めたはずだった。

「あそこからだよ」

 と言って、ポニーテールの少女は開けっ放しになっている、大きな窓を指差した。

 確かに窓は空いていた。

 そこから吹き込む静かな風に、赤いカーテンが小さくゆらゆらと揺れていた。


 大きな窓の先には小さな白い半円形のベランダがあった。

 その近くには、大きな緑色の葉を茂らせた木が立っていた。どうやらポニーテールの少女は木を登って、その白い半円形のベランダから、部屋の中に入ってきたようだった。

「なかなか器用なんだね。それに体力もある」とポニーテールの少女を見て僕は言った。

「まあ、若いらかね」とにっこりと笑って、ポニーテールの少女は言った。


「それで、君はこの部屋になにをしに来たの?」と僕は言った。

「なにをしに来たって、この格好を見てわからないの? 旅人さんには、私が旅人さんの部屋になにしに来たのかさ?」

 と両手を大きく広げて、自分の服を僕によく見せつけるようにして、ポニーテールの少女は言った。


「わからない」と正直に僕は言った。

 すると、ポニーテールの少女は、心底、呆れた、と言ったような顔をした。その顔は、どこか僕の探している彼女の顔によく似ていた。

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街の音色 雨世界 @amesekai

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