無明草子
現実みぃや
無明草子 作者未詳 鎌倉時代初期
え?誰が、天才やて?
ああ、清少納言はんな。昔「枕草子」書かはったなぁ。
ほんまええ読みもんやったわ、よう知らんけど。
ああ、清少納言はんのお父はん、歌詠みやったな。むっちゃ上手かったなぁ。
せやなぁ、血統かもしれへんな。
え?清少納言はんの歌?
せやなぁ、『後拾遺』見てみよか?
そこん棚んとこ、あるやん。あー、それや。
あー、あんまし載ってはらしまへんなぁ。
あんまし目立ったらあかん思わはって、歌を載せんの遠慮しはった?
へぇえ?なるほどなぁ?
そら、奥ゆかしい人やなぁ。
いっや、あんたの言うとおりやったら、ほんま心得た人やなぁ、ゆーてるだけやん?
そういえば、清少納言はんゆーたら、中宮定子はんとこが、世界の中心やった時に、女房されてはったなぁ。
「枕草子」、そん頃の帝と中宮はんのこと、事細かに書かはったんやろ?
そんだけでも興味深いのに、それ書いてはんのが清少納言はんやもん。
そら、話題になるわ。
ほんま、清少納言はん、ええ時に出仕してはったなぁ。うん。
運も実力のうちや。
え?なに?
何、ふくれてんの?
せやけど、あんた、世間いうんは、移り変わるもんや。
あんたが言わはるように心遣いでけて、いくら才能あっても、清少納言はん、乳母子を頼って都落ちしはんねん。
あんたもいつまでも直衣見てときたかったら、高望みしぃひんと、おへちゃでアホでも、ソコソコの太客捕まえるか、さっさとあてみたいに尼になる算段つけとくこっちゃ。
白ろなる山際見とる暇あったら、自分の先行き、よぉ見ときぃや!
無明草子 作者未詳 鎌倉時代初期
すべて、あまりになりぬる人の、そのままにて侍る例、ありがたきわざにこそあめれ。
檜垣の子、清少納言は、一条院の位の御時、中関白、世をしらせ給ひける初め、皇太后宮の時めかせ給ふ盛りに候ひ給ひて、人より優なる者とおぼしめされたりけるほどのことどもは、『枕草子』といふものに、自ら書き表して侍れば、細やかに申すに及ばず。
歌詠みの方こそ、元輔が女にて、さばかりなりけるほどよりは、優れざりけるとかやとおぼゆる。
『後拾遺』などにも、むげに少なう入りて侍るめり。
自らも思ひ知りて、申し請ひて、さようのことには交じり侍らざりけるにや。
さらでは、いといみじかりけるものにこそあめれ。
その『枕草子』こそ、心のほど見えて、いとをかしう侍れ。
さばかりをかしくも、あはれにも、いみじくも、めだたくもあることども、残らず書き記したる中に、宮のめでたく盛りに、時めかせ給ひしことばかりを、身の毛も立つばかり書き出でて、関白殿失せさせ給ひ、内大臣流され給ひなどせしほどの衰へをば、かけても言ひ出でぬほどのいみじき心ばせなりけむ人の、はかばかしきよすがなどもなかりけるにや。
乳母の子なりける者に具して、遥かなる田舎にまかりて住みけるに、襖などいふもの干しに外に出づとて、『昔の直衣姿こそ忘られね。』と独りごちけるを見侍りければ、あやしの衣着て、つづりといふもの帽子にして侍りけるこそ、いとあはれなれ。
まことに、いかに昔恋しかりけむ。
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