落窪物語
わたしの幸せな結婚(ラノベ)
『落窪物語』 作者不詳 平安時代
昔々のことや。
あるとこに、継母にいけずされてはる別嬪さんの姫さん、おらはりました。
え?
もうここでわかった?
せや。
その通りや。
あんたの想像通りや。
イケメンの金持ちの若さんと結婚して、元の家族に「ギャフン」言わさはんねん。
♪いぃつぅか、かならぁず、おーおじさぁまが、アタシを見つけてぇ
お城へ連れてゆくぅ♫
やで。
もう定石すぎて怖いやろ?
全世界の昔話から、日本の現代ラノベまでおんなし展開すぎて、あんた、なぁ?
せやけど「落窪物語」、流石日本が誇る文学の全盛期のひとつ、平安時代の話やで。
姫さんがママハハオババに押し込められて、中年のスケベなおっちゃんに手籠にされかけはんにゃけど、どやって逃れはったか、ゆーたらな。
おっちゃんとか、押し籠みはんのゆーたら、夜やん?
夜ゆーたら、冷えるやん?
ほしたら、この時代な、床、板やん?
おっちゃんな、やいの、やいのゆーてるうちに腹冷えて下しはんねん!
なんやリアルやわぁ……
姫さんの侍女とそのカレPが大活躍したり、継母自慢の妹姫ちゃんが、おへちゃで貧乏なお公卿はんとデケたり、なかなか見どころいっぱいや。
せやけどこの姫さん、「落窪」ちゅーけど、「屋敷の落窪んだとこに住んではる人」って意味やゆーて、書いてはるやんか。
シンデレラかて、「灰まみれ」やろ?
王子様まで、その名前で呼ぶとか、ちょっとどない?
ほんま、イケメンお公家はんとか、王子さまゆーて、育ち良すぎて、そゆとこスルーなんやろか?
新し名前、つけたりーや。
ほんま、なぁ?
『落窪物語』 作者不詳 平安時代
今は昔、中納言なる人の、むすめあまた持たまへるおはしき。
大君、中の君には婿取りして、西の対、東の対に、はなばなとして住ませたてまつりたまふに、三、四の君に裳着せたてまつりたまはむとて、かしづきそしたまふ。
また、時々通ひたまひけるわかうどほり腹の君とて、母もなき御むすめおはす。
北の方、心やいかがおはしけむ、仕うまつる御達の数にだに思さず、寝殿の放出の、また一間なる落窪なる所の、ニ間なるになむ住ませたまひける。
君達とも言はず、御方とは、まして言はせたまはむべくもあらず。
名をつけむとすれば、さすがに、おとどの思す心あるべしと、つつみたまひて、「落窪の君と言へ」と宣へば、人々も、さ言ふ。
おとども、ちごよりらうたくや思しつかずなりにけむ、まして北の方の御ままにて、はかなきこと多かりけり。
はかばかしき人もなく、乳母もなかりけり。
ただ、親のおはしける時より使ひつけたる童のされたる女ぞ、後見とつけて使ひたまひける。
あはれに思ひかはして、片時離れず。
さるは、この君のかたちは、かくかしづきたまふ御むすめなどにも劣るまじけれど、出で交らふことなくて、あるものとも知る人なし。
やうやう物思ひ知るままに、世の中あはれに心憂きことをのみ思されければ、かくのぞみうち嘆く。
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