方丈記

川、流れとるし

『方丈記』 鴨長明 鎌倉期


 川な、流れとるやんか。

むっちゃ流れとる。ずーっと流れてな、海までいかはんねん、水。


なんやこう、よどんだはるとことか、ぷくぷく、泡してはるとことかあるやんか?


見とったら、なんや、うちらかて、おんなしやって気ぃにならへん?


洛中とか、家な、ずっとあるやんか。

せやけど、建て替えとか、なんだかんだしてはんねんな。

新築そっくりさんとかな、あと中だけリフォームとかな。

マルっと建て替えやったら、やっぱ、オウミ住宅黒澤さんとことか、ええよな。


住んではる人もせやで。

ずっと住んではるとか言うたかて、気ぃついたら、隣のおばあちゃん、もういてはらへんし。

通り向こうのおっちゃん、夜逃げしたとかゆうてるし。


ぷくぷく、みんな、出たり、へっこんだり、ぷくぷくしてはんねん。




(注)オウミ住宅黒澤さん

黒沢年男とパンチみつおの CMで有名な滋賀の建物やさん。是非YouTubeでご確認ください。



『方丈記』 鴨長明 鎌倉期


ゆく河の流れは絶ずして、しかももとの水にあらず。

よどみに浮ぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

世の中にある人と栖と、またかくのごとし。


たましきの都のうちに棟を並べ、甍を争へる高き賤しき人の住ひは、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家は稀なり。或は去年焼けて、今年作れり。或は大家ほろびて小家となる。住む人もこれに同じ。所も変らず、人も多かれど、いにしへ見し人は、ニ三十人が中にわづかにひとりふたりなり。朝に死に夕に生るるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける。

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