平家物語

鐘の音、聞こえへん?

『平家物語』 作者不詳 鎌倉前期


 なぁ、鐘の音、聞こえた?


アレ聞いたら、なんや知らんけど、こうむっちゃ寂しい気持ちにならへん?

なんやこう、全部、過ぎていくんやなぁみたいな?


沙羅双樹な、あの白い花、見とったら、なんやこうヤバめの気持ちになるわ。

ええ感じでやっとったかてな、所詮は一瞬やねん。


えーっ?!むっちゃ暗ない?

こうな、うちらなんか、風に吹き飛ばされるゴミって感じするやん!



ゴミ、いうたらな、忠盛って知ってはる?

平清盛のパパやねんけど。


あの人な、鳥羽上皇って人のな、おがむとこにな、なんや知らんけど御堂みたいなのん?

うん、建ててあげはってんて!

ついでにむっちゃ仏像つくってあげたらしいで!

何体やと思う?

一千一体やって!すごない?

あり過ぎやろ。みっち、みっちや!

せやけど、その上皇がな、むっちゃ感激しはってん。で、清涼殿の南ひさしにある部屋な、うん、選ばれしものしか上がられへんとこやねんけどな、そこんとこ上がってもええでって言わはってんて。


ほんなら、先輩たちがムッチャクチャ妬みはってん。で、あの舞姫が踊らはる日ぃの夜にな、忠盛をしばき倒したろ、話になったらしいで。

なんやいきなしや。そんなん怖ない?


でな?それがな、アホやねん。

忠盛になんや知らんけど、伝わったらしいねん。もうゆるゆるやんか?


で、忠盛な

「あては文官やあらしまへんで、武人の生まれや。そんなんお公家さんにしばかれるとか、むっちゃ情けないわ。ほんましゃーないけど、『身を全うして君主に仕えよ』とか昔から言うしな」

言わはって、やり返しはる用意しはってんて!



『平家物語』 作者不詳 鎌倉前期


祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵におなじ。


然るに忠盛、未だ備前守たりし時、鳥羽の院の御願、得長壽院を造進して、三十三間の御堂を建て、一千一體の御佛を据え奉らる。


供養は天承元年三月十三日なり。顯彰には折節但馬國のあきたりけるを下されける。上皇はなほ御感の餘りに、昇殿をゆるさる。忠盛三十六にて、初めて昇殿す。雲の上人これをそねみ憤り、御節豐の明の節會の夜、忠盛を闇討ちせんとぞ、擬せられける。


忠盛、此の由を傳え聞いて、「われ右筆の身にあらず、武勇の家に生まれて、今不慮の恥にあわん事、家の爲身の爲心憂かるべし。詮ずるところ、身を全うして君に仕ふという本文あり」 とて、かねて用意をいたす。  


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